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青森県の希少な野生昆虫 第1幕 [青森の昆虫事情]

(2015年8月15日画像・説明追加)

遂に今日雪が青森市内に降り出しました。

さて、話は昆虫に移して
小学生の時は結構昆虫を全般的にカバーしていたのですが、
中学・高校と進むにつれてだんだんとカブクワに偏ってきた感がある…と考えてしまう昨今。

そんな中、青森県における希少野生昆虫について
ちょいちょい勉強しておこうかと云う事で、
備忘録も兼ねて書いてみたいと思いまして
今年の晩冬頃から記事の作成を計画していました。

県も改正版を新しく2010年に出したと云う事ですし丁度いいですね(否遅かったか)
と云うことで本日からレッドデータシリーズ、開始です。




県の基準では、
絶滅野生生物 (EXランク)
最重要希少野生生物 (Aランク)
重要希少野生生物 (Bランク)
希少野生生物 (Cランク)
要調査野生生物 (Dランク)
地域限定希少野生生物 (LPランク)
でランク付けされています。

で助かるのが、既知産地名がある程度ぼかしてあるもののきちんと発表されている点です。
取り敢えず身体的特徴とかは飛ばします(オイ!)





絶滅野生生物 (EXランク)


トンボ目 エゾトンボ科
トラフトンボ

《分布》
本州~九州、東北には少ない。
平地・丘陵地の池・沼に生息。
成虫は5~6月に出現。

《青森県では》
1937年に青森市で2♂が採集されているが、以降観察記録無し。



トンボ目 トンボ科
ムツアカネ

《分布》
国内では岐阜県以北(本州では高冷地数ヶ所)~北海道。
日当りの良い湿原に生息。
成虫は7月下旬~10月上旬に出現。

《青森県では》
1942年を最後に県内では記録無し?のようだが、
八甲田山系の湿原に生息していたと思われる。



チョウ目 シジミチョウ科
オオルリシジミ

《分布》
本州(東北・中部)・九州に限られる。
東北地方では絶滅。
発生は年1回。

《青森県では》
生息は津軽地域のみで、
確認されていたのは青森市三内・豆坂高原、弘前市、五所川原市、鶴田町
またがる岩木山麗など合計16ヶ所。
岩木山麗で1978年に1♀の確認を最後に絶滅。





最重要希少野生生物 (Aランク)


トンボ目 イトトンボ科
カラカネイトトンボ

《分布》
国内では北海道~東北と新潟・福島・群馬・栃木の高地。
成虫は6月初旬~9月初旬に発生。

《青森県では》
現在は下北郡に数ヶ所、野辺地町、六ヶ所村、三沢市、つがる市、深浦町に生息。
三沢市の仏沼以外ほぼ絶滅状態に近い。



トンボ目 イトトンボ科
オオセスジイトトンボ

《分布》
利根川・多摩川・信濃川水系、青森・秋田・宮城県で確認されていた。
成虫は6~8月に出現。

《青森県では》
つがる市屏風山地域
2004年以降急激に減少。
大滝沼では2006~2007年に成虫2頭、
冷水沼では2008年に従来の1/6しか確認できず、
他の沼ではほとんど観察できない。



トンボ目 アオイトトンボ科
コバネアオイトトンボ

《分布》
国内では本州~四国~九州。
平地・丘陵地の池・沼・湿地に生息。
成虫は7月下旬~10月下旬に見られる。

《青森県では》
1960年代までは県内各地に生息していたがその後激減。
現在は深浦町、六ヶ所村のみ、いずれも減少傾向にある。



トンボ目 カワトンボ科
アオハダトンボ

《分布》
国内では本州~九州。
平地・丘陵地の水性植物の豊富な河川に生息。
成虫は6~9月に出現。

《青森県では》
現在は県南の新井田川水系のみに生息。



トンボ目 サナエトンボ科
ホンサナエ

《分布》
北海道~九州。佐渡にも記録がある。
平地・丘陵地・低山地の堰等に生息。

《青森県では》
下北地方数ヶ所である程度観察できるが、
深浦町に1ヶ所ある生息地では絶滅状態。



トンボ目 サナエトンボ科
ヒメサナエ

《分布》
本州~四国~九州。東北では産地自体希少。
山間の渓流、河川中~上流域に生息。
成虫は7~9月に出現。

《青森県では》
外ヶ浜町と深浦町で確認されている。
両地域とも個体数が減少している。



トンボ目 サナエトンボ科
メガネサナエ

《分布》
本州(東北~近畿地方)だが局地的。
平地の湖、河川下流域に生息。
成虫は7~9月に発生。

《青森県では》
1960年代前半までは各地で見られたが、
青森市浪岡で1962年に発見されて以来生息が確認されていない。



トンボ目 ヤンマ科
カトリヤンマ

《分布》
国内では北海道南端~九州~南西諸島。
丘陵地・低山地の樹陰の多い池・沼・湿地に生息。
成虫は8~10月に見られる。

《青森県では》
1960年代までは各地で観察されていたがその後減少の一途をたどる。
1973年に三戸町で1♂観察されて以来公式な記録無し。



トンボ目 ヤンマ科
ヤブヤンマ

《分布》
国内では本州~南西諸島。
丘陵地・低山地の木陰のある池・沼・水溜まりに生息。
成虫は7~9月に発生。

《青森県では》
1986年に鰺ヶ沢町、1992年に板柳町、2000年に弘前市、2007年に深浦町
各1頭ずつのみ記録がある。



トンボ目 エゾトンボ科
ハネビロエゾトンボ

《分布》
北海道~九州、佐渡。
丘陵地・低山地の湿地、湿原などの小流、湧き水の水草の豊富な暖流に生息。
成虫は7~9月に発生。

《青森県では》
1960年代までは各地で観察されていたが、
最近は1989年に東通村、2001年に深浦町、2006年につがる市
各1頭ずつ記録されたのみ。



トンボ目 エゾトンボ科
キバネモリトンボ

《分布》
北海道~本州(青森・岩手・新潟)。
寒冷な平地、丘陵地の薄暗い池・沼・湿地に生息。
成虫は6月下旬~9月下旬に発生。

《青森県では》
三八地方、六ヶ所村のみ。
三八地方では最近の確認はされていない。



トンボ目 トンボ科
ハッチョウトンボ
GRP_0006.JPG
(2011年8月・鰺ヶ沢町)
《分布・生態》
国内では本州~四国~九州。
平地~高地のモウセンゴケ等の浅く草が茂った湿地に生息。
幼虫越冬し成虫は5月末~8月末に発生。体長17~21mm。
稀に♂の黒化型が見られる。

《青森県では》
各地の湿地・放棄水田に局地的に生息。



カメムシ目 コオイムシ科
タガメ

《分布》
国内では本州以南。局所的。
水量が豊富な水草の多い止水・静水域に生息。

《青森県では》
1940年にむつ市田名部、1947年に黒石市牡丹平、1953年に八戸市
1957年に岩木川等で記録があり、
1978年に平川市石郷、新郷村西越での記録を最後に公式な記録は無い。



ハチ目 コマユバチ科
ウマノオバチ
GRL_0001.JPG
(2015年5月・青森市)
《分布・生態》
国内では本州~四国~九州。
県内では5~6月頃に成虫が発生。
シロスジカミキリの幼虫に産卵する。

《青森県では》
1941年以降記録無いが、近年青森市から報告がある。

《コメント》
やはりシロスジカミキリが頼みの綱ですね。
ウチらの学区ではシロスジは生息してるけどやっぱりウマノオバチ自体は見たこと無いな…
あの長い産卵管を一度本県産ので生で見たいもんですなぁ。



ハチ目 コシブトハナバチ科
ルリモンハナバチ

《分布》
本州~四国~九州。
平地~低地に生息。
成虫は8~10月に出現。

《青森県では》
50年以上前に八戸市沢里、34年前に平賀町唐竹の2例しか記録が無い。



チョウ目 セセリチョウ科
チャマダラセセリ

《分布》
北海道(東部)・本州(中部以北)・四国。
山地草原・山間の草地に生息。

《青森県では》
津軽・下北両半島を除く各地。
1990年代まで生息が確認できていたが非常に少なく現在は絶滅状態。



チョウ目 セセリチョウ科
ホシチャバネセセリ

《分布》
本州・対馬。局所的。

《青森県では》
太平洋側各地に生息地が多く、県東南部が最も生息地が多い。
また、例外的に大鰐町と深浦町十二湖でも1個体ずつ記録がある。
北限はむつ市品ノ木付近。



チョウ目 シロチョウ科
ヤマキチョウ

《分布》
青森県・岩手県、長野県・山梨県等。

《青森県では》
東南部特産。
八戸市、十和田市、五戸町、階上町、田子町などだが、
記録は全部で10数頭のみ。
1960年代までは観察できたが以降発見されていない。



チョウ目 シジミチョウ科
クロシジミ

《分布》
本州~四国~九州。局地的。
成虫は7月下旬~8月上旬に発生。

《青森県では》
1963年~1966年までの短期に発見、記録されている。
田子町、八戸市、三戸町、新郷村で報告がある。
現在は記録が無く絶滅、又は激減している。



チョウ目 タテハチョウ科
オオウラギンヒョウモン

《分布》
本州~四国~九州。
平地~低山地までの日当りの良い草原に生息。
成虫は7月下旬から発生。

《青森県では》
津軽半島以外の各地で散在的に記録があったが、
1985年の田子町竜ヶ森の1♀を最後に確認されなくなった。

《コメント》
チョウ類激減の原因の一端として、
農業の近代化によって家畜用牛馬の飼料採草地が無くなり、
生育環境がススキ等によって害され無くなってしまう
と云うのが青森県では多いみたいですね…
「良くも悪くも人の生活が虫の繁栄に深く関わっている」と云う一つの例ですね。



チョウ目 ジャノメチョウ科
ツマジロウラジャノメ

《分布》
北海道~本州(東北~中部)~四国。
成虫は6月中~下旬と8月中~下旬の年2回発生する

《青森県では》
各地に局所的に分布。
青森市周辺では1960年代後半以降生息報告なし。
三戸・八戸方面では1970年代以降生息報告なし。
岩木山・白神山地でも近年の観察は稀。



チョウ目 ヤガ科
ミツモンケンモン

《分布》
青森県・岩手県・栃木県・群馬県・長野県。
里山に生息していると思われるが詳しい生態は解明されていない。

《青森県では》
1991年五戸町倉石から記録がある。



チョウ目 ヤガ科
ノシメコヤガ

《分布》
国内では青森県・岩手県のみ。
詳しい生態は不明。

《青森県では》
板柳町、黒石市
1930年に板柳町、1952年黒石市砂森から記録がある。
1975年黒石市境松での記録以降ほとんど記録が報告されていない。

《コメント》
↑↑この『ほとんど報告されていない』っていう事は少しは記録があるって事なのかね??
・・・っていうか・・・
雑蛾だと思って無碍にできねぇゾこりゃぁ・・・・・・





どうだったでしょうか?
人それぞれ感じるところは違うだろうし何も感じないって人も居るでしょうけど、
『19XX年以降報告が無い』とかって聞くと
なんか全身がゾクゾクっとする感覚がしませんか! ! ! !??
この感覚が共感出来る人にはどういう意味か非常に分かると思います。

以上、EXランク+Aランクでした。
次回はBランク、多種多様な種類が選定されてます[あせあせ(飛び散る汗)]

データは青森県レッドリスト2010年改訂版から抜粋・加筆


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コメント 4

コメントの受付は締め切りました
ピロピッピ

会長さんこんばんは。
ゾクゾクしますね~

自分、実は保全生態学の研究者志望でありますので、こういったことに関心は非常にあるのですね。
やっぱり、自分の身近な地域で身近な昆虫たちがこんな目にあうということは考えることも多いものです。
タガメの青森での記録がないというのには驚きです。
以前、話題になったクニマスのようにどこかで生きていてほしい気はあります。

ただ、1種1種が絶滅しそうになってから保護を始めるような現在のやり方ではなく、もっと前からその環境全体を保全していくべきですよね。どこかでその種が生きていれば、他の場所の個体群は消えても問題にならないのはどうかと思います。ただ、生き物を守ることの多くは経済活動に逆行してしまう世の中ですので、なんとか自然との調和のとれた開発がなされてほしいものです。

って、まじめに長文失礼しました(汗)
こちらはあられもまだですね。
去年は豪雪でやばかったですが、今年はどうなるやら・・・

Bランクの更新も大変そうですけど、頑張ってください。待ってます。
by ピロピッピ (2011-11-16 00:43) 

会長

ピロピッピさんお晩です。

研究職志望とは…俺の中では一番やりがいのある職種なだけに羨ましいです(笑)
しかし、少しでも関心のある方が居て良かったァ~~

ちなみに書き損じていましたが、
記事内の記録産地はあくまで「公式」なものですから、
アマチュアの俺みたいな人間が実は新産地を見つけている場合が多々あるでしょうね。

環境から守るべきなのは非常に同感です、
それを棚に上げて「乱獲のせいだ」と学術的貢献性が高い採集者を十把一絡げにして邪魔者呼ばわりすることで昆虫愛好家の肩身を狭くする例もあるので安易な指摘はしてほしくないものですよね。
しかし環境の保全とくると少なからず行政とも根が絡みそうですね(汗)
「自然環境してます」ってのは真っ先に切り捨てられますからね…

全国幸せ度ランキングではド田舎のくせに第40位と云う
ほとんど終わってる県ですから環境問題は後回し率高いでしょうな…

このシリーズ、あまりにも記事書くのが大変なので
時限投稿で毎日1記事ずつ自動でUPさせる事にしましたヨ(こういうの初めて)

明日は(いや今日か)某所に行くついでに調査してきます。
by 会長 (2011-11-16 01:32) 

Cyen

この中には北海道で登録されてるムシも居ますね

Cyenはキバネモリトンボしか見たこと無いですね

しかしEXが3種も居るなんて結構多いですね
Cyen的にはオオルリシジミは新産地出て来そうに思います。
Cyenもこういった事は書いてみたいですが
北海道は広いのでこんな記事を書くと次の日学校行けるか分からないので書きません
前見ただけでもかなり居たはずですから(汗)


by Cyen (2011-11-16 07:23) 

会長

Cyenさんこんばんは~

北海道から北東北にしか居ない虫も居て分布も面白いですね。
EXはおそらく人知れずもっといるでしょうね、
しかし虫だけに全てを把握するのはあまりにも無謀ですからねぇ~

ちなみにこの記事は今年の2月に書いたもので
漸くシリーズ全て書き上がったのでUP出来ました。
ほんとにダルイですよ(苦)
by 会長 (2011-11-16 19:47)