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ファブリースノコギリ比較見討 ~原名亜種とタカクワ亜種~ [〆ファブリースノコギリ (原名亜種)]

前々からやってみたかった記事でしたが、
いざ文章を考えてみると意外に言葉が出てこず懊悩だったので
今まで呑んでいた内容です。

と云うワケで、今回は

「ファブリース2亜種の外見上の特徴」に焦点をあててみようと思います。


ネットで色々と情報収集していると、
どのジャンルの虫もそうですが同定間違いがあります。
またこのクワガタについて言えば
原名亜種とタカクワ亜種で人気度や流通価格の違いから
販売元がデータを詐称する事があります。
最近は販売元が産地(亜種)を偽って販売する事はほとんどありませんが、
過去に詐称個体を入手して知らず知らずの内に第3者に譲渡・販売する事が
起きるようになっているのではと思います。
自分も本種をブリードしているので
ネットショップやオークションで本種を眺めたりするのですが、
たまに「本当にこれタカクワか!?」と眉をひそめる事がありました。

ファブリースの原名亜種とタカクワ亜種なら、
他にもあるこうした亜種・近似種詐称の中でも見分けがつきやすい種類の虫では…
と、安易に考え記事を書こうと思ったのですが…


早速比較してみましょう。
因みに、このクワガタは同じ亜種でも島毎に傾向が偏るようなので
それぞれ最も流通が多い産地、
原名亜種はペレン島
タカクワ亜種はタリアブ島
のものを中心に考察していこうと思います。

まずはから。

CA3I0739-20137kai.jpg今年の春に羽化した原名亜種♂で一番大きいものを、比較検討個体としてこのビンから取り出しました。


羽化直前までは「7cmいけるんじゃないかな~」などと淡い期待を抱いていたんですが
結果的に計測サイズは67mmでした。

又、タカクワ亜種のサンプル81mm33mmは借りものです。

【 背面 】
ファブリース原名1タカクワ1
実は♂って、見ただけなら原名かタカクワか大体の見当がつくと思ったまではいいが
いざ言葉で指し示し表現するとなると言葉が出てこないんです。

比較個体も数が少ないので、
色ノコでありがちな同種同産地間での「個体差」を見過ごして「ココが違います!」なんて書くと
後で痛い目を見ることになるので、
亜種間の違いを見るための特徴は限られてきます。

ファブリース(の♂個体)で云うところの『個体差』と云うのは、
飽くまでも自身の考えている部分ですがオレンジ色の模様部分です。

このオレンジ色の部分と云っても模様・斑紋が個体差として現れるのは
・上翅
・後胸腹板
・腹部(勿論腹板)
・腿節
・(脛節)
についてで、
前胸背左右側部のものに関しては省いても支障ないと思います。

【 腹面 】
原名亜種2タカクワ2
両亜種をブログでの比較材料とするにあたって、
全く別の撮影環境で撮ってしまったために光の種類・強弱・角度が異なってしまったのが
個人的には非常に歯痒いです(汗)

♂の腹面を観察してみると、
この個体については

【原名亜種】
・中・後脚の腿節に斑紋
・脛節が赤みを帯びる
・後胸腹板に大きな斑紋
・腹部の左右に各節毎に斑紋

【タカクワ亜種】
・中・後脚の腿節に斑紋
・脛節が赤みを帯びる
・後胸腹板に大きな斑紋
・腹部の左右に各節毎に斑紋

このあたりが比較箇所と考えられます。

どちらの方にも同じ言葉を使っていますが
それぞれ画像で確認しながら触れてみますと、
「中・後脚の腿節に斑紋」と云うのは、
原名亜種においてはこの部分の斑紋が出たり出なかったりします。
つまり、この画像の個体は斑紋がありますが
中には黒一色のもいると云うこと。
また、中・後脚に限らず前脚にも現れる事があります。
一方タカクワ亜種ではほとんどこの斑紋が消失するのはいないと考えます。
(あちこちの個体を見てないので断定できないですが)
「脛節が赤みを帯びる」と云うのは、
これも原名亜種では個体差によるばらつきがあり
画像のように赤みを帯びるものもいれば黒一色になるものも結構います。
タカクワ亜種ではこのばらつきはそこまで多くは見られないのでは?と思います。
「後胸腹板に大きな斑紋」は、
左右に1対あり目立ちますが、
これもどちらかと云うと原名亜種では斑紋が大きくなったり小さくなったりと
個体差がよく見られます。
累代が進めばもしかしたら消失した個体が出てくるかもしれません。
「腹部の左右に各節毎に斑紋」と云うのは、
これも原名亜種とタカクワ亜種を比較すると後者の方が一つ一つの斑紋が大きく
安定的な特徴に感じます。
一方、原名亜種では発現する個体自体多くなく、
原名亜種黄紋
今回ブリードした個体では腹部に斑紋が出たのは
最初の画像の♂67mmと、No.6が飼育した↑↑の画像の♂の計2個体のみでした。
No.6のこの個体に関してはさらに前脚腿節にも斑紋があります。


続いてむし社発行の新クワガタムシ大図鑑に記されている特徴ですが、
・上翅の黒色紋(俗に云う「筆書き模様」ですね)
 タカクワ亜種の方が幅が狭くなっている
・前胸背板中央の黒褐色部は、
 原名亜種は外側にいくにつれて黒くなり、
 タカクワ亜種は黒くならない
・大腮は、基部と先端部の湾曲が
 タカクワ亜種の方が強い
この3点が挙げられています。

「上翅の黒色紋」は、
原名亜種4タカクワ4.JPG
大図鑑で指摘されている点以外にも
「見た感じ」で漠然と両亜種間で違いを感じるのですが言葉に詰まります(…)
個体差があるので何とも表現しがたいのですが、
原名亜種がきりっとした印象なのに対し
タカクワ亜種はとろ~んとした印象に感じるのです…ゥ~ンなんか言いたいことと違う。

因みに、ブログで紹介するには見苦しい画像なのですが
羽化不全個体にこんなものも居りました。
CA3I0748-97ddf改.jpg
上翅が閉じていないことが原因なのでしょうか?
少々変わった模様になっていました。(死亡個体です)


「前胸背板中央の黒褐色部」と云うのは、
言葉にすると脳内が混乱するのですが、
ファブリースノコギリ前胸背比較
敷衍して図解すると、こう云う事になります。↑↑

確かに見てみると、原名亜種は中心から外側に向かって
黒褐色→黒→黄褐色(オレンジ?)と変わりますが、
タカクワ亜種には黒くなる箇所(層)は見当たりません。

個体差がどの程度現れるのか分かりませんが、
亜種を背面で見分ける一番安定した特徴かもしれません。

「大腮の特徴」ですが、
原名亜種3.JPGタカクワ3
確かに両亜種を並べて見てみるとタカクワ亜種の方が
大腮基部の張り出し方、先端の湾曲度合い、そして太さが違います。

しかし、この部分だけで1個体のみを「さぁどっち!!!?」と選ばされたら迷うかもしれません。
何しろクワガタムシの体の内では一番形状が変動する部位ですからね(汗)



さて、大図鑑で亜種間の特徴について触れられているのはここまででした。

そう、飼育者の我々が心配に感じる
の特徴については一切触れられていないのです!!!

果たして♀個体で特徴の違い自体があるのかが気になるところですが、
まずは写真ですね。

【 背面 】
原名亜種♀タカクワ♀
原名亜種は35mm、タカクワ亜種は33mmですが、
形状で違いを見出すとすれば
タカクワ亜種の方がやや胴が横に広い印象を受けます。
また、この画像の限りでいけば
原名亜種が前胸の縁がやや直線的で
タカクワ亜種がやや膨らみ湾曲しているんですね。
しかしあちこち見てみるとペレン島産でもそんなにタカクワ亜種と区別がつくほどの
ラインにはなっていないように感じます。

また、♂の方では見分けがついた「前胸背の色の違い」を
♀個体でも使えるのか確認してみましたが、♀にはこの同定法は使えないようです。

【 腹面 】
原名亜種6タカクワ6
腹面については個体差なのか島の差なのか分かりませんが、
タカクワ亜種の方が全体的に赤みを帯びていて、
黒味が厚くなりやすい原名亜種よりも斑紋があと一歩で発現しそうなところまで
赤みを帯び、腹部や腿節にそのような傾向が強く見られます。

原名亜種♀2タカクワ♀2
何か違いがみられるのでは、と頭部のアップも写してみましたが
残念ながら見出せませんでした(汗)

↑↑と嘆いていましたが、ちょっと気になる点が。

原名亜種よりタカクワ亜種の方が大腮がやや強く湾曲していませんか?
確認のためにネットで彼方此方画像を見て回っていったのですが
どれを見てもどうもそんな印象を受けるんですね。

そして、両亜種を見比べた中で形状が決定的に違う点が1ヶ所確認できました。

それが、ここ↓↓
原名亜種8.JPGタカクワ8
前脚脛節、原名亜種に比べてタカクワ亜種の方が幅広く、
先端の棘は原名亜種が鋭く尖るのに対して
タカクワ亜種は尖らず丸みがかっています。

色彩の特徴と違ってこの点なら同産地間で個体差は生まれないと思われ、
両亜種を区別するのに有効な特徴と考えられます。






今回は前々から溜め込んでいた思いの丈を長々とパチパチ打ち込む事が出来ました。
素人意見ですが、久し振りに少しは中身がある記事がUPできたかもと思います。

個人的にはあと、
交雑したら特徴がどう混ざるのかなども含めて書けたら
この記事は本当の完成を迎えるんですが、
それはまた機会があればと云う事で…
(とかそういうことを言って結局やらないんだよね…)




あなたのファブリース、
本当にそのラベル通りですか?





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コメントの受付は締め切りました
キドちゃん

会長さん、お久し振りです!
タカクワイ、そんな感じだと思います。
そしてウチのは…やられちゃってたと思います!(--;)
by キドちゃん (2012-06-26 09:03) 

ベーグ

いっそ種類が全く違っていれば判別は付きやすそうですが、亜種だと近すぎて難しいところがありますね。
一番確実なのはDNA鑑定ですが、高級種関連の詐欺事件でも起きない限りやる人はいないかな。それに成虫だと鑑定できなさそうだし・・・。
やはり会長のような多くの個体を目にしてきた熟練が一番頼れそうです。
by ベーグ (2012-06-27 00:01) 

会長

キドさんお久しぶりです~

そう云えばキドさんもファブリース飼育されてましたねぇ、懐かしいです。
自分もコレが全部合ってるのか確信は出来てませんが
ひとまず形に残そうかと思いまして(苦笑)

今となっては真実はどうだったのか分かりませんよね、
そうした時代がありましたね…
by 会長 (2012-06-27 22:22) 

会長

ベーグさんこんばんは~

人間が決めた枠組みはどうしてもデジタルなので、
大きな変異から小さな差まで種類の違いってアナログですからね~
成虫は鑑定可能でしょうがお金が掛かるので自己満足の世界で中々出来るものではないでしょうね…

これからさらに頼りにされる内容が書けたら満足の域に辿り着くのかなと思います。
by 会長 (2012-06-27 22:48) 

Re:myon

♀だと亜種との区別本当つきにくいですね...
もう、私なんか♀だけですと、種類ですら見分ける自信ないです(笑)

特に、オオヒラタらへんですと♂ですら不安になります(涙)
なんか、皆一緒に見えてくるんですね...

ファブリース、私もブリしてましたが
ペアリングさせようと1日♀と同居させた所♂にパッツンされてました。
見た目よりもかなり気性荒いんですね...(汗)
by Re:myon (2012-06-29 06:46) 

会長

Re:myonさんおはようございます~

種類の一つ一つを見ていっても、
別種・別亜種でも外見上の特徴が違わないものは非常に多いですから
♀できちんと違いが発見できた本種については扱いやすい方なのでしょうね(汗)

オオヒラタと云えば、次のビークワがティタヌス専門特集ですよね。
早速注文かけときました。

ブリでやってしまいましたか…
確かにアレ気性が荒いらしいですね。
結構色ノコって皆♀殺しするんですよねェ…(汗→涙)
by 会長 (2012-06-30 09:25)