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観賞飼育まとめ 《Cyclommatus zuberi》 [〆ズベールホソアカ]

このまま無積雪で春になってほしかった青森でも、少し雪が積もってしまいました。
中作業が一段落したらちょっと早めに今年の採集を始めようかと思っていただけに、少し残念でもあります。青森市内自体は雪が無いのですが・・・
積雪関係の話もちょっとデータをまとめて記事に出来たらいいなと思っていますが、この更新頻度の中で実際取り掛かれるのかは別問題です・・・

記事の更新頻度の問題は置いといて、
しばらく前から表示されていなかったメールフォームを先日作り直しました。
いつの間にかブラウザ表示されておらず、特に困る事も無かったので放置していましたが、ブログ内のコンテンツの一部が死んでいるのは管理者としては恥ずかしい気もするのでね。
ただ、これでもブラウザの種類によっては送れない(表示されない)場合もあるかも知れません。




さて、今回はズベールホソアカについてです。
本種については、2018年8月末のWILD紹介以降は記事が書かれていません。
2セット組みました・・・と云うところで終わっており、いつものパターンだと「あぁ、そのまま飼育は終了したんだね・・・(合掌)」と暗黙の内に察してもらうところですが、
無事にWF1が採れておりました。

※今回は写真も多めで、いつもの長駄文になるので三部構成にしてまとめました。


WF1羽化 
2018年の夏、久し振りにシブヤン島から所謂「普通種」であるズベールホソアカとオキピタリスノコギリが入荷しました。
ズベールとオキピはどちらも自分の特に好きなクワガタですが、輸入量が多いのはルソン島やミンダナオ島(他にはカタンドゥアネス等やオキピならパラワン島も)。シブヤン島と言えば、少数ながらも安定的にオオヒラタが入荷する産地ではあります。しかしBE-KUWA62号の内容によれば、沢山採れるオキピやズベールに手を出そうとすれば、まとめてごっそり4桁ほども買い取らなければならずおいそれと手が出せないのだそう。そりゃ無理ですよね、標本も併せたってズベールオキピじゃそこまで数捌けるほどの需要は無いですからね・・・インターメディアツヤばかりが来るネグロスやオオヒラタの来るマリンドッケ(=ボアク)も、似たような状況だから入荷が稀なんでしょうね。

で、
2セット組んだ内、WF1が採れたのは残念ながら1セットだけ。

8月23日に組んで割り出したのは12月29日・・・


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ぉ・・・おまえら・・・
こんなに育ちやがって・・・・・・

もう3令ばっかだよ・・・2令もちょっとしか居ないよ・・・!!

♀っぽいのは全て200ccカップに入れ、♂と思われる大きめの幼虫は800ccのボトルに入れて幼虫飼育を開始しました。
♀に関しては幼虫のステージも終盤だったので、1月末から2月にかけてほとんどのカップで蛹室が作られていました。対する♂は、蛹室を作り始めたのは3月後半から4月くらい、勿論1本がえしが殆どですが一部には大きく育った(ように見えた)個体もいたので1400ccに移して観察したのですが・・・

春になり、皆羽化してしまった♀に引き続き♂も羽化し始めたのですが、コフキ系ホソアカの地味な見た目のイメージとのギャップに感動・・・!!


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キレイじゃん!!!!!
チュウじゃん!!!!!


(その虫を高く評価する時に他の虫で例えるのって、一番ダメだよね↑↑)


まず♀は、同属の他種と全然変わり映えしないので「特にズベールだから」と云う魅力は無いのですが、新成虫はやはりキラキラしてて美しいものです。そう見えてしまうのは飼育者補正が掛かっているせいかもしれませんけどね。
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そしてこれは主役が花なのか虫なのかよく判らなくなっていますね。


♂の方は、身体も固まってくると羽化間際のキラキラした色味は隠れてしまいますが、その代わりキレイに整った毛並みにウットリさせられます。
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これは飼育品でないとあまり見られないでしょう、まぁまぁスレてますからねWILDは。

なお、今回飼育しているシブヤン島と言えば、一部には知られている本種の最大産地。
野外最大73mmと云うオバケがこの島から生まれているのですが、羽化した中での最大はコレ↓↓

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ジャスト60mm

・・・数字出さない方が良かったかな(恥)


そりゃあもう既に割り出しが遅かったのが問題ですが、さっき書いた1400ccの幼虫はこの♂なんですね。
3月の交換時には8.3gとそこそこ大きく見えていたので、シブヤン産ともなれば60台半ばもイケるんではないかとすっかりのぼせていました。
ズベールってブリードは難しくないけどデカくし辛いタイプの奴なんでしょうか・・・
ちなみに、現在の飼育最大が64.3mmで交換時体重が7gなんだそうで、しかもシブヤンのではなくルソンなのだとか・・・まじかよ。(大体、本当にシブヤンかどうかも疑わしいところがあるんだよね、これに限らずフィリピン物ッて)
今回までの飼育の手応えとネットでの羽化情報を散見するに、普通種の割りにサイズアップが簡単ではなく、60mmを優に超す大型♂が得難い反面、チュウやアラガールみたいに油断すると手鋸みたいな短歯になる事もなく、テキトー飼育でも中歯以上には羽化してくれる、
絶妙に飼育者魂を揺さぶらないクワガタだと云う事が解かりました。
好きじゃなければ「1回累代回したからもう終わるわー」と言われる虫ですね。

勿論、自分はコイツ好きですから今回のWF1もまた1セット組んだんですけどね。
(コバシャミニだけど・・・)

なので、この先もまだまだズベールの記事をUPし続けますよ~!
(また2年後くらいに・・・)



観賞飼育 
・・・と言ったところで今回はまだ終わりません。
本記事は第2部へと移ります。


もう何年も前、このブログで
『羽化した虫を持て余し、ただカップやボトルで飼い殺しにするなんてつまらない』
的な話を書いたことがありました。

長年飼育していると、つい虫そのものの見た目ばかりに目が行きがちで、ブリードに必死になるがあまり成虫の普段の生活史を蔑ろにしている部分があります。
確かに自分に関しては、余裕を持ってブリード出来ていないのは事実なんですが、小学生の頃のように大きなケースの中に色々な木を仕込んだりしては、

「木に登った!」
「エサに気付いた!」
「飛んだ!」
「喧嘩してる!」
「あっ 殺される!」

だのと眺めながら観賞飼育を楽しみたいと常日頃思っているワケなんです。


じゃあやれよ! って話なんですが、
ここ数年は特に、シカだノコギリだ・・・とやたら新成虫の管理がメンドくさい虫ばかりを飼育している所為で、なかなか観賞飼育に踏み切る決断が出来ないんですよね。

と言うのも、自分が思う理想の観賞飼育と言うのは種類にもよりますが、
単に目に付く所に飼育中のケースを置く事ではなく、

1.ケースは出来るだけ広い物
2.転倒防止材だけではなく複数の構造物を配置し立体的にスペースを使う
3.単独飼育ではなく多頭飼育、かつ♂♀同居
4.できればそこで産卵してほしい。が、あからさまに産卵セットっぽくしてはいけない。

主にこれらの要素を含めているのです。

そんな、観賞向けの飼育と云うと具体的にどんなデザインが想像できるか・・・
オツな方々であれば、かつて昆虫フィールドなどでもお馴染みだった「クワガタテラリウム」のイメージが思い浮かぶかと思いますが、
すみません、
ウチそういうブログじゃありません。

自分の言う「観賞飼育」のモデルはこっちです。
↓↓





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ある意味とても一般的な飼育図です。
テラリウムの概念(ナチュラリズム)はズバッと取り除いて、ほとばしる工作感。

小学生の時、一夏飼い終えたらそのまま冬まで風除室でカラカラになるまで放置していた思い出が蘇りませんか?
自分の場合、飼育自体は小学生の時と言うか当時から休まず続けている事なので「思い出が蘇る」・・・ではなく「当時から変わらない」と言う方が正しいな・・・

飼育に慣れて数を抱え始め、ブリードに重きを置いて飼育していると、成虫飼育は狭いケースに薄くマットを敷いてゼリーと木片をポンと置いただけ。
そんな最低限?の管理ばかりになってしまい、原点に立ち返り「普通の飼育をしたい」と思うようになってきました。
20年以上も飼育を続けていると、懐古意識も強くなっているのでその所為でしょうか。
(結局思い出じゃねぇか)

そこに、丁度観賞向きの見栄えの良いクワガタが多数羽化してきたワケです。
それこそが何を隠そう、今回の主役・ズベールホソアカなのです。


 準備する用品
工作アイデアを凝らして色々自作したりもするんですが、今回は久しぶりと云う事もあって、一般的に市販されている用品と手持ちのストックをそのまま使うだけにしました。

飼育容器
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ワイドビュー(特大)
ケース内レイアウトの自由度を高める為、特大級のサイズ規格の物を選ぶのが基本。
自身の年代的な問題で、網フタ式のケースにするのがミソです。高機能ケース(コバエシャッターやデジケース)はここでは邪道扱いで除外します。他には、ニッソーのプラケース富永樹脂の飼育容器アイリスオーヤマの飼育ランド(←思い出の通常飼育ケース、今も売ってるけどね)

エサ皿・転倒防止材
CA3I0113.JPGエサ皿(16g×2穴)
ブリード成虫保管中や産卵セット時にはいつもゼリーを直置きにしていますが、エサ皿にゼリーを入れるだけで見栄えも変わり、マット汚れも防げます。
エサ皿も色々デザインがあり、ただ輪切りにした生木にゼリー穴を開けただけの物や、成虫が隠れるスペースを設けたり、縦切りにして幹に穴を開けたり、半分にカットしたゼリーが入る物など、色々な形があります。一応ドリルも持っているので自作も出来るのですが、作るのめんどくさくて買ってしまった・・・
久しくこういうのを買ってなかった自分としては、このエサ皿に付いてくる賞味期限切れてそうなゼリーのデザインがポイント高いです。

CA3I0115.JPG昆虫の館(16g×2穴)
ご存知茨城の老舗・MITANIのヒット(?)商品。
エサ皿に小さい木片を組み付けただけなのにどうしてこんなにワクワクするのでしょう。今でこそきちんとゼリーが殻ごとはまる穴が開いていますが、昔は約20mm径の小さい穴しか開いてなくて液エサ入れるかゼリーの中身を砕いて入れる不便なものでした・・・。ノコギリの♂は舌とどかなくてほとんどエサ食えてなかったですからね。
自分の求めている、ケース内の非自然物の要素を備えている今回の重要なアイテムです。

のぼり木
市販されている長さ15cmほどの細い生木。1ヶ所、エサ用の穴が開けられていますが小さくて使い物にならないので無視。
これを設置する時に大事なのは、ケース壁面に斜めに立て掛けるように設置する事(倒して置かない)。すごく重要。

転倒防止材
細い生木なのはのぼり木と同じですが、こちらは市販品ではなく昔拾ったストック品。
音叉のように二股に分かれていて面白い形状ですが、こちらは立て掛けずに寝せておく事にしました。・・・ちょっと思いの外地上のスペースが空いてて、ひっくり返った時の足掛かりが少なかった為です。

マット
マットも何かしらのこだわり(笑)があるのかと言えば、
あると言えばあるのですが今回は普通にブリード用の無添加発酵マットを使います。
強いて言えば、発酵の進んだ黒っぽいマットは粘度が高く、虫が動く内にケース壁面に飛び散って見栄えが悪いので候補に入れなかったと云うくらいです。

産卵材
CA3I0112.JPGくち木
産卵材も、実際はマットに埋め込んでしまうので何を使うかはこだわる事は無いんですが、たまたまホームセンターにあったパック済ホダ木に良い物があったので買ってきました。
画像はマルカンの朽ち木。
直径は5~8cm程度で、ホソアカには丁度良い軟らかさの物が多いサイズですね。

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その中でも、面白い材を発見しました。
左の材は木口に分厚く菌糸の膜が覆っています。廃材になってからも内部に適度な水分が残り菌がまだまだ生きていたんでしょうね、手に乗せれば判りますがこういうのは確実に軟らかい。右の材もかなり軽くてよく朽ちています。専門店が無い田舎だと通販でホダ木を買うのは毎回博打ですが、ホームセンターの材も一見すると質が粗悪に見えても、よく探せば良質材が意外と隠れてるもんですね。

エサ
メインはいつも使っているKBファームのプロゼリーですが、通販のおまけやエサ皿に付いてきたよく分からんゼリーもこの際積極的に使っていきます。
昔を懐かしむだけなら、着色料バリバリの真っ赤なゼリーとかでも置きたいところですが・・・

防虫・防臭シート
CA3I0114.JPG虫よけシート1番
コバエシャッター等を使わず、観賞用として人目に触れる場所に置く事を考えると、
コバエ等の侵入
乾燥
臭い
と云った問題点を解決しなくてはなりません。
単にブリードする事を考えれば見た目を気にせず新聞紙でも挟んだり洗濯ネットで包む事も出来ますが、新聞紙では見栄えが悪いですし洗濯ネットなんて論外ですので、見た目もキレイな専用シートを使う事にしました。まるで捻りも工夫もありませんね。なんなら厚手の不織布とかでもよかったんですが・・・


 セッティング
上記の各種用品をセットします。ケースのセッティング日時は6月23日
特に詳しく説明する事も無い普通のセット法ですが、写真も撮ってあるので順を追って解説します。

1.マット・産卵木の仕込み
CA3I0121.JPG産卵木はまず菌糸の皮膜を剥がし、3cm程度の深さでバケツに水を張り、そこへ産卵木を立てて吸水させます。
完全に水没させてしまうと材表面が全て塞がってしまい、材内の空気の抜けが悪くなり時間が掛かってしまうのと、立てて吸わせると水に触れていない上の木口の色付き具合で過不足なく丁度いい水分量を判断することが出来ます(そこの部分を画像撮っておけば分かりやすかったですね、失礼しました)
「これでいい」と判断したら放置せずすぐ取り出し、樹皮を形成層ごと全部削ぎ落とします。削いだ後の辺材がまだちょっと堅ければ、辺材1枚目の層を割り除くことも考えますが、充分軟らかいのでこのままにしておきます。

ちなみに、今回は仕込む材は画像の1本だけとしました。
理由は特にないんですが、前述の通り既にもうコバシャミニで1セット組んでるので、こっちのケースはそんなに産卵数にがっつく必要はないかな・・・と思ったくらいです。

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マットは加水して使います。楽して済ませる為にケースの中でマットと水を混ぜる事もよくやるんですが、後からケース底を見ると混ぜムラが結構あったりするので、温室外の常温環境にケースを置く事を考えたら、やはりきちんとタライなどでよく混ぜこんで撹拌する方が良いですね。

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産卵木を真横にしてマット内へ完全に埋め込みます。

普段の産卵セットなら、材が埋まっている事を♀にアピールする為に材をちょっと斜めにして頭の方をちょっとだけ地上に出す事もあるんですが、
今回は多頭飼育で♂も入れるので、産卵の邪魔をされないように【地上】と【地中】の両環境を出来るだけ分断したいと云うのが全埋めの理由です。

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最終的なマットの深さはこのくらい。
単純な産卵ケースを組むのであればもっとマットを深くしたいのですが、メインは地上での観察でこの後また色々上に乗っけていくので最低限?の深さに抑えました。仕込んだ材が細材なのも、この浅さに一役買ってます。

2.地上部の配置
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マットに乗せていく各種材も、それぞれ単品なので無難にバラして配置します。
凝った物を自作したなら、宙に材を渡したりしてもっと空間を活用できたんですが、まぁ今回はいいでしょう。

そしてこの中で大事なのはのぼり木。
「転倒防止材」としてなら寝かせて置いた方が有用ですが、ここは絶対に立てて置く。さっきも書きましたが大事な事なので2回言います。

この後他の材も入れて、まだちょっと地上にスペースが余っていたので転倒防止用に少しだけ枯れ葉も散らしました(たった3枚くらいでしたが)

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防虫シートは、ただフタとケース本体の間に挟んで終わりではありません。
ただ挟んだだけでは外にはみ出た部分が邪魔でケース内がよく見えないので、要らない部分を切り取り、フタの開け閉めでずれる事が無いようにグルーガンでシートを接着します

ゼリーを計4ヶ所セットしたらケースのセッティングは完了です。

3.成虫達を移す
羽化した成虫のストックを確認し後食しているかどうか見て、移す個体をかき集めてみると・・・

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♀は2月中には全部羽化していてとっくに後食も始めており、♂もカップ飼育品などの中型個体は4月までには羽化済みで後食も最近始めたくらいのタイミングでした。流石に♂♀の羽化時期が一緒と云うワケにはいかなかったですが、WF1の1系統だけなのでしょうがありません。

こうやって画像を見ると、こうして観賞飼育用のケースを作ってなければ、コイツら皆こうして小さなカップやボトルで短い寿命を終えるんだな・・・と複雑な気分にさせられます。

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♂♀ちょうど6頭ずつ。計12頭です。
♂を見ると、どれも中歯なのが分かります。200ccカップの省スペースでもきちんと中歯になってくれるのはズベールだからなのか・・・はたまた大型産地のシブヤンだからなのか・・・
この中では、一応左上の♂が一番大きいと云う事になります。他の個体と大差無さそうに見えますが・・・

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投入した瞬間から喧嘩が起きないよう、適度に距離を開けて1頭ずつ順番に移していきます。
12頭全部を移したら、後はフタを閉めて完成です。

4.ケースを配置する
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肝心なケースの置き場所ですが、一番観賞向きの場所で尚且つ常温でのストレスが少ないと思われる居間にする事としました。

やはり、昆虫飼育(特にブリードが絡んでくる場合)となると一般的に、自分の部屋でやる、と云う場合が多くて家族にさえクローズな趣味になりがちなので、自分だけでなく家族の目にもよく触れる場所に置く事が一番有意義ですよね。
(ただしその前提として、その家族が全員昆虫趣味に対して寛容でなければいけないワケで、そこで躓いたらアウトなんですけどねぇ・・・)

どのように観賞飼育を楽しむかはクワガタの種類によって変わり、
オオクワなどの大型ドルクスであれば明るい昼間は隠れてしまいますがキクロマトスはわりと動き回る種類なので、12頭と数が多い事もあってほぼ一日中観察していられます。
足腰の悪い祖母は一日中家に居るので、活発なクワガタの様子を見るのはちょうどいい暇潰しになる事でしょう。

 飼育中の様子
環境に慣れるまで
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観賞飼育を始めて数日の間は、♂も♀もどの個体もよく動き回り、壁際をグルグル歩き回ったり木に登ったり飛んだりしています。
そしてエサに辿り着くと動かなくなり、♂♀で会えば交尾⇒メイトガード、♂同士が出合えば喧嘩が始まり負けた♂は追い出されてまた徘徊へ・・・その繰り返しです。

♂の力関係を考えると、最大個体が当然一番強くて餌場に居つけるワケですが、そう簡単な話でもないようです。
最大♂を見ていると、喧嘩している最中にゼリーの上から触覚や口が離れてしまった時、その後自分が今どこに居るか分からなくなり(=ゼリーの場所が分からなくなり)、勘違いしてエサ皿から降りて歩き始めてしまう事がたまにあります。
ヒラタやオオクワの仲間であれば、自分の居る位置・足元の地形を把握して動いている様子が分かりますが、ホソアカってこの点アホですね・・・

喧嘩の様子は、
まず♂同士が出合い「相手は敵だ」と認識すると、お互い頭を上げて大腮を全開にして相手のそれに重ね合わせます。
ここで小さい個体の方が相手との体格差を理解するとすぐに戦意喪失して引き下がるのですが、お互いに体格にほとんど差が無い場合かもしくは相手がデカくても気にしないバカの場合ははさみ合いの格闘へ突入する、と云う流れが多く見られます。

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立て掛けたのぼり木を伝って、または飛翔によって防虫シート裏を歩き回る♂。
瞬間的に♂が4頭付いている時もあり、なんでこんなに上に行きたがるんでしょうね。

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♂全頭仲良くゼリーを食べている貴重な瞬間。
昼の間は地上に出ているのは基本的に♂のみで、♀は暗くなってから少数出てくるようになりました。全部出てこないところを見ると、産卵し始めた個体も居るのでしょうかね。


このような感じで、様々な行動が見て楽しめる美麗種の観賞飼育は、
飼い主の自分や家の外にあまり出られない祖母だけではなく、家に来た客人の目も楽しませてくれていたようです。
「昼間〇〇さん来てたけどその虫じ~っと観てたよ」なんて話を聞くと、あァ温室に死ぬまで押し込めとくよりずっと良かったな、と思うワケですね。

♀が出てこなくなる
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夜。7月に入り虫達も環境に慣れてくると、それまではこの時間帯だけは姿は見せてくれていた♀もいよいよ姿が見られなくなりました。
1つのケースの中、男女12匹夏物語、テラスハウス状態なので、十中八九♀全頭が産卵行動に移ったと考えていいでしょう。

そうなると♂はもうただゼリーを貪るだけの怠惰な生き物に成り下がってしまうワケですね。
♀に一向に出会えないからなのか、
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新たな扉を開いている輩も出現。コイツらの前世はコクヌストモドキなのかも知れない。

排泄汚れ
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最初は綺麗だったケース壁面も、時間が経ってくると糞による汚れが目立ってくるようになりました。
白く濁ったスジがいくつも走る様子は、中が見え辛くなる上、第一見た目も悪いです。やはり個体数が多いからなのでしょう、ゼリーの減りも意外と早く、意外と上の方にも糞を飛ばしているので2~3週間おきにティッシュやアルコールタオルで壁面を拭き取ります。

F2幼虫の発見
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8月19日、♀が姿を見せなくなって早や1ヶ月半が経過しているこの日、ケース下部の様子に違和感を覚え注視すると・・・


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そこにキラリと小さく輝くものを発見。
これで一安心です。ケースを持ち上げてみると、正面の1頭以外にも底面に1~2頭居るのが見えました。
意外にも、産卵木を埋め込んだ所からちょっと離れた場所に居たので、もしかしたらマットにも産んでいたのかも知れません。


秋、♀の再出現
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8月の後半を過ぎると、潜りっぱなしだった♀がまた姿を見せるようになってきました。
とは言え一斉に出てくる事は無く、見えるのは一度に1~2頭だけ。何日かに一回の頻度で各♀個体が入れ替わり現れているのか、僅かな個体だけが繰り返し出現しているのかは判りません。なんせ♀はどれも色形が同じですからね・・・
産卵後でしょうし、羽化から半年以上経っているのでマットの中で力尽きている♀も居ると思われます。

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尚、♂の方はこの時点で亡くなったのはこの個体のみ。


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期間も長引いてくると、シートを挟んでいるとはいえマットの乾燥が激しくなってきました。
・・・と云うか、夏の間♂達が散々シートに登ってきてあちこち齧って歩いた所為で既に穴だらけなんですよね。そりゃ湿気も抜けていくわな・・・
定期的に霧吹きで、わりと強めに加水するようになりました。
(それと、やはり枯れ葉3枚では足りなかったようで転倒も結構多く、少ないながら足掛かり用の樹皮もわずかに足しました)

切れてしまったゼリーの交換を怠ってしまった時などは、昆虫の館の屋根部分やのぼり木などの高い場所に静止し、身体を反らせ触覚を広げて、新しいエサの匂いを拾おうとしているような行動も見ることが出来ました。

ちなみに、夏の終わりから秋の初めにかけてのごく短い期間ですが、
厄介なことにコバエが発生してしまいました。
発生タイミング的に、おそらく元々マット等に混入していたのではなく外部からの侵入だと思われます(シートに穴空いてるしね)が、よく知っているクロバネキノコバエのアイツらではなく、もっと小さな別の種類でした。行動も違っていて、見る限りはケースの外に出ていく事は無く、暫らく経ったら消えてしまったので、幸いにして家族からクレームを付けられることはありませんでした(う~ん、総合的に見てアウトな案件だよねぇ)

子供は美味しい
冬も押し迫った11月初旬
ケースをセットしてから4ヶ月半が経ってもなお♂達は元気で、いつものように時々パキパキやり合いながらもグータラ過ごしています。♀は相変わらず地上に出てくる頻度は低く、寿命が来たヤツも少なくないだろうから見られないのは仕方ないと諦めて、
どのタイミングでケースを解体して幼虫を暴こうかと考え始めていた頃でした。

マット壁面の見える所に♀が居る事に気付き、「あっ生きてる奴いるじゃん」と近寄って見てみると、それがショッキングなシーンである事に一拍おいて気が付いたのです・・・


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こっ こいつ・・・!!!!
子供を食ってやがる・・・!!!!
出会い頭の交通事故かとも思いましたが、画像では判り辛いですがしっかり♀はアゴをガジガジ動かして咀嚼していました(できればこういうのって動画で載せた方がよかったんでしょうけど)
オオクワやノコギリが自分の産んだ幼虫を食べたりすることは見聞きしますが、産んだらすぐ死ぬミヤマに比較的近いと言われているホソアカが、幼虫を襲ってしかも自分の産んだ同種の幼虫を襲って食べると云うのは初めて知りました(試そうとも思わないし、と云うか貴重な幼虫が・・・モッタイナイ・・・)
この時期になってもまだ生きている♀の秘密がこれなのかもしれません。

ゆく年くる年
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12月になり雪も降り出してくると、流石に辛くなってきたのか♂の中にも力尽きていく個体が続けて出てきました。
昼夜の温度差も大きくなってきていて、日中は大体ストーブを点けていて22~30℃の間を行ったり来たりしていましたが、夜になると10℃を下回る日もありましたからね。ちなみにこの冬の時期の常温管理も凄いけど、逆に夏の暑い時期をよく常温で乗り切ったとも思いますよ。青森だからかなァ・・・
画像の23日の時点では、♂で存命が確認できたのは2頭だけとなってしまい、他の♂がひっくり返っているのも見えています。
この頃の♂達の行動としては、あまりケース内をグルグルと徘徊するようなことも、のぼり木や昆虫の館の屋根部分に登るような事も無く、ゼリーを後食しているか、ゼリーの傍でじっとしているか、転倒防止の樹皮や木の下に潜りこんでいるかのいずれかの行動に決まっていました。

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そしてそのまま全滅することなく、2019年が過ぎ去り2020年が明けてしまいました。


(いや もうケースバラして温室戻してやれよ!!)





今回、自分としてはとても懐かしく感じる飼育を半年以上の期間に渡り行いましたが、懸念していた家の者からの拒否感も無く、すんなり?生活圏内の視界の中に溶け込んでくれた事が新鮮でした。(まぁ昔は観賞飼育と言わずも居間で虫飼ってたから驚く事も無いか)
一息ついた時に眺められるケースがあると云うのは、家の中と云う狭い空間ながらも視点をちょっと変えて虫を楽しむことが出来たような感覚も得られました。虫部屋に籠って飼育作業に追われるのとは違う感覚とでもいいましょうか・・・

それに、今回はそれなりに楽しめたものの、今度は違う種類でやってみたくなります。
メタリフェル・・・オオヒラタ・・・オオクワガタ・・・パプキン・・・
考えてみるほどにいろんなパターンが次々出てきます。ギラファやシカなんかは多頭飼育する勇気はないけど、去年飼育再開したメリーメンガタなんて派手だし面白そうなんだよなぁ・・・



F2幼虫割り出し 
年が明けてさらに1ヶ月が経った2月2日、いよいよ腹を括って観賞飼育を終了してケースを暴くことにしました。
観測史上稀にみる暖冬の影響で寒さによるストレスも少ないのか、まだまだ成虫達は元気にゼリーに食いついていたのですが、
もうこれ以上幼虫達を待たせてはいけないでしょう・・・(焦)

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上から見た様子も、年季の入った光景に様変わりしています。
悪い喩えだけど、質の悪いペットショップで盆過ぎにこういうの見るよね。

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そして驚きなのが、この防虫シートの有り様。芸術的ですよね。
これクワガタの糞汚れですからね、下に居てよくこの高さまで糞を飛ばしているものだと感心すらしてしまいますね。

それと、よく見ればシートに登ってきて散々暴れた痕跡がシートの四隅に痛々しく残っています。右下の穴から外に出た事もありましたからね。ホソアカのアゴって、毎回思うけど華奢に見えて結構強いですよね。


さて、ずっと気になっていた生き残り達は実際何頭いるのか?

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♂2頭、♀1頭の計3頭でした。

まさか幼虫食ってたのってこの♀かな・・・
なんて目で見てないとは言わないけど、約1年前に羽化していた♀でもここまで存えるんですね。逆に、カップの中に入れて温室入れていた方がかえって短命に終わったんじゃないかとさえ思います。

また、死亡個体を取りだしてみて分かったのですが、
産卵後マットの中で死んでいるのではと思っていた♀達のほとんどが地上に出てきた後で死亡していて、6頭中5頭が地上死でした。結構生きているもんですね。

そして驚いた事に、この中の右側・小さい方の♂に関しては、頭部に開いた小さな喧嘩穴以外は全くの健康体でした。触覚も脚も全部付いており麻痺も無し。左の♂はケース内の最大個体で、喧嘩傷もほぼゼロでフ節も麻痺はあれど全部残っていたのは♂個体群内の強弱関係で頂点の個体だったからだと納得できるんですが、右の♂はサイズも上から3番目ほどでそれほど優位に活動出来ていた個体には見えなかったんですよね。喧嘩穴も開いてるって事はそれなりにバキバキやりあっていたハズですし・・・

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ケースも解体しちゃったので当たり前ですが、カップでの余生を送ってもらいます。
狭苦しい空間だけど、喧騒から離れ好きなだけゼリーにかぶりつくがよい。




これでいよいよマットだけになったので、ケースをひっくり返して幼虫との対面です。

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乾燥してマットがサラサラや・・・
マット、産卵木の両方からチョビチョビ幼虫が出てきます。
期待した産卵木は、表面の上側半分は乾燥の影響があったのかほぼノータッチで、かわりに下半分は食べ尽くされてボロボロでした。

そして蘇る2018年の光景。

KIMG0073kai.JPG
ぉ・・・おまえら・・・
こんなに育ちやがって・・・・・・

こりゃもう今世代は60mm台無理だろ・・・(苦笑)

2令後期~3令中期が14頭と云う結果でひとまず累代分は採れた事になります。

ただ、♀1頭あたりの産卵数として数えてみれば

 14÷6≒2.3頭   少なッ

多分、10月くらいに割り出していれば20頭くらいは採れたんじゃないかと思うんですよね。親に捕食されたのと乾燥で死亡した個体は2頭や3頭ではきかない様な気がします。


・・・などと考えてしまう部分はあるものの、
このケースから2桁も採れたのであればもう満足です。



何せ、
先に組んでいたメインのセット(記事の最初の方で書いたコバシャミニのアレ)



KIMG0078.JPG
どうやら失敗したみたいなので・・・





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