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青森県産コクワガタ市町村巡り 最難関!?「おいらせ町」 [日昆 採集記 【2020年】]

「青森県内の全市町村のコクワガタを集める。」

青森県内でクワガタがどれほどあちこちに生息しているか自分の目で確かめ・採って・残しておきたい、と云う考えがそもそもの始まりでした。
県内全域で何かクワガタを採るにしても、その成果を視覚的にも判りやすくする為に

・集める地域の境界を明確にする→市町村ごとに集めてチェックする

また、集めるクワガタも県内全種採れれば言う事ないのですが、手を広げすぎると持て余してしまい終わりが見えなくなるので

・あるところまでで終われるようにしておく→1種に絞る

その1種を何にするか考えた時、まず青森県内で全域的かつ全市町村で採れる可能性が高い種を挙げるとコクワガタ・スジクワガタ・アカアシクワガタ・ノコギリクワガタ。
どの種を選ぶかを考えた時に、実際そんな悩みもしなかったのですが

・モチベーションを一番長く維持できるのを選ぶ→一番好きな種=コクワガタ

好きな虫でやるのが一番ですね、こうしてきちんと標本に残すように始めたのは2011年頃

まず、地元青森市やメインフィールドだった十和田市や白神山地などで採集したり、FH鈴木さんから半島部の採集品を貰うなどして市町村別コクワガタのコレクションを開始しました。
達成条件としては、
1.♂成虫を手に入れる事。
2.飼育品はダメだが、野外で採集したものであれば幼虫でも許容範囲に収める。
3.採れた分のラベルは現市町村の括りでクリアとするが、飛び地は別とする。
相手はコクワだし、野外幼虫も可とするならすぐに集めきれるだろうと当初は高を括っていました。

しかし、他の種も併せての通常採集に浮気してしまい、同じポイントへ通いつめたりと市町村別採集がダラダラとスローペースになってしまい、年間1~2市町村しか攻略できなかった年もあったり、♀しか採れず一向にクリア扱いできない市町村が長々残っていたりと、今になって思えば思ったよりも覚悟が必要な作業でした。
40市町村(+飛び地3ヶ所=計43ヶ所は全国平均で見ればわりと多い方(少ない方から数えると30位過ぎくらい?)で自分がもし北海道民か長野県民だったらこの課題には絶対触れなかったですが、富山県(15市町村)・福井県・香川県あたりみたいに少なすぎてもつまらないと思っただろうし、ちょうどイイ数なのかなと(笑)
結局、地元についてどれほど好奇心と執着心を持てるか次第なんでしょうね。


一応、ここまでで個人的に最もヒヤヒヤしたのは南津軽郡田舎館村
過去の記事に書いていますが、コクワの市町村攻略の中で最も難しいと思ったのがここでした。諸条件によりクリアには時間と回数が必要だろうなと思いましたが、日昆メンバー3人で乗り込んだところ初挑戦でいきなりクリアできてしまいました。スローペースの状況にもかかわらずだいぶプレッシャーが減った気がして安堵した事を昨日のように思い出しますね。



・・・では、
「クリアできた最難関」に次ぐ難所は条件から言ってどこか?

それが、今回の採集の舞台となる上北郡おいらせ町です。



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上北郡おいらせ町.png
(グーグルマップより引用・編集)

おいらせ町は面積71.88平方km(県内で7番目に小さい)、2006年3月に旧下田町と旧百石町が合併し新設された。西は六戸町・北は三沢市・南は五戸町と八戸市に接し、東は太平洋に面する。
人口は約25,000人、三沢・八戸の2市に挟まれていて交通が容易なことからベッドタウンとして年々人口が微増傾向にあり、これは県内他市町村において慢性的に過疎化が進むのとは対照的で稀有な例である。人口密度も約350人/平方kmと、南部地方の郡部では抜きん出て高く、面積も近い隣の六戸町の3倍にもなる。
地形は、平地と低い丘陵地から成り、標高は高い場所でも60m程度。南には奥入瀬川が流れている。
(東奥日報社「新平成の大合併あおもりマップ」、おいらせ町役場ホームページより一部引用)

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今年こそはピッチを上げて市町村攻略をしていこうと考え、
夏場の日程緩和や採集事情を考慮して冬場の材割採集からスタートすることにし、南部地方で一番ハードルが高いだろうと位置付けていたこのおいらせ町もその方法でやっていく事としました。



採集回目 おいらせ町 初採集

  3月14日

個人的に「難関」だと位置付けていた三沢市を攻略(この時点ではまだ雌雄不明の幼虫を採っただけだが)した翌週、その勢いで続けて攻略してやろうとこの日おいらせ町入りしました。

「難関」・・・と言っても、
正直言って自分にとっては南部地方は下北も含めどこも厳しいように感じます。
一番の要因は土地勘の無さに他ならないワケで、多分どの市町村も地元の虫屋や自然好きならば「コクワガタくらい毎年見てるよ」と言ってのけるのでしょう。
そして、基本は平地や住宅地の周辺での採集になる事も採集効率の低下を招くと懸念していました。開発され生息環境が少なくなれば、採集できるチャンスは減るし(目星は付けやすくなるが・・・)、平地で住宅が近いとライト機材で採集が出来ない。苦手な樹液採集などの手段をメインにするしかない。おいらせ町は田舎館村の約3倍強の面積があるので探せる場所は多そうですが、広いと土地勘が無い分場所を探す労力が増してしまいそうで先が思いやられます。

現時点で、三八上北地域は山沿いの市町村くらいしかクリア出来ておらず、
大多数を占める平野部の市町村はまだ手付かずのような状態でした。
ノルマの43ヶ所まではまだ半数にすら達していない状況で、この春の内に少しでもクリアマップを塗りつぶしてやろうと、予め目星をつけていたポイントへ直行しました。


KIMG0185.JPG
町内はほとんどがこうした風景。
住宅街や田畑が広がり、その隙間に痩せた林が点々と在るだけです。その林すら、スギの植林がほとんどです。南部の平野はどこもこんな感じで、こうした厳しい環境の最たる地域がこのおいらせ町、つまり南部地方の市町村で最もコクワ採集の難しい場所だと個人的に位置付けたワケなのです。

あと新聞でも載っていたけど、道路を走っていて民家脇の林の中で目を引くのが、不法投棄されたゴミの数々。どこの自治体でも抱えている問題ですが、環境や景観に害を及ぼすと危惧される反面、土地の所有者が有価物として保管していると主張し処分に動かない場合もあり、だけど実は中に産業廃棄物も大量に混じっていたりと、行政と個人とで水面下の睨み合いが続くと云う面倒くさいものなんですよね。

KIMG0169.JPG
最初に来たのはとある湿地帯を要する比較的広い林ポイントA
意外な事にミズバショウも生えており、泥っぽい環境にヤナギ、ヤマハンノキ、湿地から上がった斜面より上にはコナラ、サクラ、マツなどが多かったが、午前中から正午過ぎまで丹念に見て回ってもコクワの産卵痕が付いた材は見つけられませんでした。

新緑の季節ではないにしても、薮が酷くて思うように歩き回れなかったのは残念ではありました。


KIMG0181.JPG
続いてはポイントB
ポイントAと違って平坦な場所で、水っ気があまり感じられない場所ではありますがそれなりに広さもあり、樹種も良さげです。

KIMG0176.JPGポイントAの時には、環境のわりに全く手応えが無く想像以上の厳しさで半ば絶望していたのですが、今回はちゃんと産卵痕を発見できました。
ただし残念ながらそこまでで、本体の姿は何処にも居ません。その後もたびたび産卵痕の付いた枯れ木の他、食痕が走っている材までは見つけられたのですが、ついにクワガタの姿を見ることは叶いませんでした。



ここまで、時間を掛けて2ヶ所のポイントを探してきましたがまるで成果無し。
まだ候補のポイントは残っているんですが、当初この2ヶ所を本命として賭けていたので、14時を過ぎたこの時間帯で陽と共に気持ちもだんだん沈んできました・・・

KIMG0188.JPG
続く3ヶ所目のポイントCは、ここで採れた事があると云う情報を事前に仕入れていた場所で、去年までの時点で環境の下見だけはしている場所でした。

しばらく散策しましたが、結構広いフィールドにも関わらず産卵痕が付いた材はヤナギの倒木2本だけ。
歩き回って時間をかなり消費してしまったため、この日の探索はあと1ヶ所分を残すところとなりましたが・・・

4ヶ所目、大穴狙いで海岸近くの小さな林・ポイントDに入ってみましたが、薮は濃い、海岸近い為ほとんどがマツ、そして乾燥している点など、クワガタが見つかる要素など一片も無く、徒労に終わってしまいました。




採集回目 2人で再戦

  3月20日

初回の惨敗から1週間後、気持ちが冷める前に2戦目を敢行しました。
今回は、「採集の勘を取り戻す」と云う目的でNo.7も一緒に来てくれました。

前回で見事な空振りに終わってしまった事を反省しもう一度地図をよく見直していくと、まだ可能性がありそうな林を1ヶ所見つけたので、今回はそこをメインに探索することに決めていました。



上北道を降りて、現地のポイントEに到着したのは11時過ぎの事。

ちょっと風は強いけど雨空でもなく採集には申し分なし。

KIMG0200.JPG
幸先よく、いきなり産卵痕を発見!
「あっ、今回はイケるでしょ!」と2人で何故か勝った気分になったものの、やはりお約束の空振り。ゴミダマの幼虫がやたら目立ちます。


KIMG0201.JPG
林の内部に進んでいくと、その環境がだんだん判ってきました。

初日に訪れたポイントAと同じで、ミズバショウが芽を出すようなぬかるんだ湿地林(泥炭地?)と、斜面を経て小高いやや乾燥気味の林で構成された場所です。

笹薮を漕いで湿地林に向かいつつ散策します。
遭難する土地ではないので、早々にお互い離れて別行動になっていきました。

三沢の時もでしたが、上北地方の平地で薮を漕ぐと、非常に厄介なものに行く手を遮られ非常に進みにくいです。
群生するノイバラ。堅くて折れやすい棘が何所に居ても食い付いてきて痛くて参ってしまいます。他にも、少数ながらヤナギ大の灌木にも棘が付いているものがあって、ノイバラだけに気を取られているとこちらでザクッと突き刺してしまいます。ハリギリか何かでしょうかね?

湿地林で寝返りした倒木などを中心に、朽木をチェックしていきますがコクワの痕跡は見つけられません。
派手な食痕を見つけたと思ったらクワガタではなくカミキリ、かなり大きい幼虫がポロポロ出てきたのですが最普通種のウスバカミキリでしょうね。青森だと他の普通種であるはずのゴマダラカミキリとかシロスジカミキリとかは比較的少ないですね。

スマホのアプリで地図を逐一確認しながら進んでいきますが、やや乾燥気味の方が好みのコクワの環境として望みがあるのではないかと思い、湿地を脱して斜面を登り、その上の林に移ることにしました。

スギの植林と混ざってはいるもののほどほどにまとまったコナラ林のようです。見た感じ、細い木ばかりで夏場に樹液を出してくれそうな雰囲気は感じられないのですが・・・
同時に、そろそろ次のポイントへ移る事も考えて、No.7に電話を掛けて合流を提案。向こうは一発大物・マークオサムシ狙いで湿地林をうろうろしていたらしく、厳しくなってきたのでこちらに向かうとの事(数十年前まではマークは県内全域で見られていただけに、ここで今マークが記録されるという話も無きにしも非ずなのです)


No.7がこちらへ上がってくるのを待ちながら、朽ちてボロボロになった材を探していくとやはりここにも産卵痕の付いた倒木が見つかりました。
叩いてみると食痕も発見、やや湿っていて今までで一番望みがありそうです。少しずつ食痕を追っていくとやがてその近くからポコッと空洞が現れ・・・


・・・中からは越冬中のアリがぞろぞろ湧いてきました。

うぇぇ~・・・またスカかなぁ。
まだちょっと食痕は続いていたので叩き続けていくと・・・


No.7 「採れましたかーーー!!?」


No.7が斜面を上がってこちらに近づいてきました。

彼の、その一言に自分が反応しかけたその瞬間でした。






KIMG0205.JPG
出たァァァァァァ!!!!!?
思わぬタイミングで明らかにコクワと思われる3令幼虫が出てきて驚き叫ぶ自分、そしていきなり奇声を上げられて驚くNo.7。なんだこれ。

♀幼虫ではあったものの、ついに悲願の1頭目が採れたのです。すぐ傍にはアリのコロニーもあります。こんな所からでも出てくるんだなァ。
これはもはや、タイミングと云いきっとNo.7が今日居たから採れたのではないかと思わずにはいられません。やはり日頃の行いとか関係しているんだろうか・・・と思うとちょっと悲しくなってきますが。

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続いて近くから2令と思われる幼虫も発見できました。材が真っ黒だな・・・

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その後も、産卵痕のある材がチラホラと見つかり、もちろん全て当たりではありませんでしたが少しばかりの幼虫を追加していきました。


さらに、幼虫が見慣れてきたところで
今度は地面に埋まりかけた直径10cmの細材から、
KIMG0215.JPG
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嬉しい♀新成虫が顔を出しました!
赤くてとても綺麗な♀・・・


KIMG0220.JPG
この日は最終的に、
幼虫×6頭
成虫×♀1頭
と云う大変満足のいく結果で変えることが出来たのです・・・

(それにしても、コクワが6・7頭採れただけで鬼の首を取ったように書いてるブログって我ながらちょっとヤバいと思えてきた・・・)





  6月上旬

あれから2ヶ月以上が経ち、カップやボトルに移した幼虫達がすくすくと育っていくのを楽しみにして時々観察していたのですが・・・









既に全ての幼虫が蛹室を形成。
しかもかなりミニサイズ。

たしかに、120ccカップとかに入れてはいたけど、大きくなったら430ccとか500ccボトルとかに移そうと思ってはいたし、♀3令幼虫はいいにしてもまさか全部こんなハイスピードで変態するとは思わなかったよ・・・

蛹室はどれも全長20~30mmと、コクワの♂が中に居るとは思い難い小ささ。
そしてよく蛹室の中を見ると絶望的な結果が見えてしまいました。


 幼虫1 → コクワ(羽化)
 幼虫2 → スジ(♂♀不明だが羽化)
 幼虫3 → スジ(羽化)
 幼虫4 → スジ(6月中旬に羽化)
 幼虫5 → コクワ(蛹)
 幼虫6 → コクワ(♂♀不明だが他と同サイズの蛹)


♂、居ねぇっ(泣)




採集回目 夏の桜

  6月13日

季節は初夏に移り、世間一般的なクワガタ採集シーズンの到来。
それまでの新型コロナウィルスによる外出自粛やら何やらで動きにくかった時期を乗り切り、コクワの樹液採集や外灯採集が出来る時期となりました。


この日は南部地方をローラーしていこうと、
県内中で自身が最も縁遠かった(距離も遠い)階上町産の♂を1ヶ所目の外灯で拾いクリアした後、のべつ幕なし、八戸市→六戸町と移動したものの外灯ポイント選びを間違えた所為か空振りが続き、
ちょっと外灯では難しい日かもしれないと冷静に考え直して、次は樹液採集で三度おいらせ町へ挑戦する事を決意しました。


時刻は既に23時を過ぎていました。
到着したのは春にも訪れたポイントC

前回はヤナギなどが生えているエリアを中心に歩きましたが、今回は主にサクラが植えられている近辺を探索します。
この時期は方々のサクラでコクワが採れる時期であり、一昨日もつがる市産をサクラの樹上で採ったばかり。盛夏になると採れないので今の短い時期がそのチャンスなのです。

場所柄、車でカップルなどが時折入ってきては去っていきます。
それを尻目に、ハンディライトとケースを携えてサクラの並木へ近付いていくと・・・



KIMG0687.JPG
(居たっ!!!!???)
最初に目に付いた1本目にて早々にコクワを発見。
残念ながら♀ではありますが、確実に今このポイントではコクワが発生している事が分かり、さっきまで沈んでいた気分は一気に上向きました。
興奮するまま、サッとその木を見回して他の個体がいないことを確認して隣の樹へ移ります。


KIMG0689.JPGサクラを見て回るにも、当然ながらどこの場所でもクワガタが見られるわけではありません。発生木として、腐朽部がきちんと残っているようなある程度の樹齢のものが多く在る場所が望ましいです。
・・・が、実際のところサクラが多く植えられている場所(ま、言わずとも想像付きますよね)となると落下の危険がある枝や枯死木は伐られてしまう事がほとんどで、コクワが繁殖しているのはそうした剪定や伐採が出来ないような部分枯れ(内部枯れ)した幹の部分(枝先の方はまだ生きているので、腐朽しているとは言え幹から伐られてしまう事はまず無い)である事がほとんどです。



KIMG0693.JPG
このエリアのサクラは今どの樹もこの写真のように樹液がダラダラです。
(「ダラダラ」って言っても、この樹液はすぐ硬くなってしまうので成虫がこれを後食することはほとんどありません)



それなりに見て回るべき樹も多く、40~50本のサクラがあると思われます。
20~30本ほど丹念に見ていきますが、最初に採れた1♀から一向に追加が得られないので、もう一度最初に採れた樹に戻ってみます。

KIMG0691.JPG
居るなァ・・・!!!
2頭目の♀。さっきは興奮してきちんと樹をチェックしていなかったのですがよく見ると、この照らしてある幹の左側の面を覗き込むと長く部分枯れが起きている事に気付き、まず間違いなくここから発生しているものと思われます。
腐朽部は表面がボロボロと入り組んでいて、隙間は多いですが他に成虫は見られません。

時刻はもうすぐで24時になるという頃、
まだこの樹には追加の可能性もあると感じ、また後で戻ってこようと次の樹へ向かいました。





その、2頭目を発見してすぐの事でした。

KIMG0695.JPG
ん・・・? ゴキブリ・・・?
否!!! コクワ!!!♂だ!!!!!
しかもデカい!!!!!!

直径30cmほどの太さもそれほどではない樹の地上3mの位置に、明らかに大歯と確認できる大型のコクワ♂が歩いています。

手の届かない位置で、一瞬逃げられるかと焦りましたが、運よく(?)傍にある浅い樹皮の割れ目に潜んで動かなくなったのを見届け、急いで車まで網を採りに戻りました。
3度目の正直、これは運命だ!
と、とにかく興奮と動揺でパニック状態。





そこから先は、詳しい描写は控えますが流れとしては以下の通り↓↓


その樹まで戻ってくる

↓↓

コクワを見事にキャッチ!

↓↓

したかと思ったがうっかり落としてしまう

↓↓

下草の中に消える

↓↓

見つからない。


しくじったーーーーーーーーーーーーーーーー
周囲の下草を、文字通り草の根を分けて探しに探して探しまくったのですが、見つかりません。
この時、もう頭の中は真っ白。


  6月14日


サクラの周囲半径2mの範囲を20分近くかけて探したのですが出てきません。
最初で最後の♂を採るチャンスだったかもしれないのに・・・
これもまた、運命か。



暫らくしたらまたどこか見える場所に出て来てくれることを願って、その場を離れることにしました。
周囲ではグォォォォォォォ グォォォォォ・・・とウシガエルの声が響いています。また、遠くではサイレンと共に「左に寄って停車してくださーい」と声が聞こえます、パトカーの巡回で誰かが捕まったようです。

そんな深夜の音を聞き流しながら、サクラ並木を照らしていくと今度はまた別のサクラ(高さ3mくらい)にクワガタを発見。
KIMG0696.JPG
一応まだ他にも付いている樹は在るんだなと気を持ち直し、この樹をグルッと一周してみると、また別の発見である事が分かりました。

KIMG0701.JPG
コクワではなく、アカアシばかりが付いています
南部の虫屋でないのでよく分かりませんが、こんなド平地の隔絶された環境でもアカアシが生息している事に面食らいました。
部分枯れ、そしてその真下の部分に生えた下草に大量のフラスが積もっている事から、どうやらこの樹がアカアシの発生源で間違いないようです。

しかし、コクワを逃がしたさっきの失態を繰り返すように、唯一見つけられたアカアシの♂も掻き出す際にポロッと手から滑り落ち、また紛失。
山梨や大阪で樹液採集してる人がこれを読んでいたら、説教かましたくなる鈍臭さでしょうね(恥)


コクワも落とし、アカアシも落とし、ケースの中には小さな♀2頭。
その後もコクワの姿は確認できず、エリア内のサクラは一通り全部見終わってしまいました。

脳裏から離れないのはさっき落した推定45mmの大歯の♂。
目立つ所に出てきていないかと、再度その樹へ戻ってみます。



・・・・・・(焦)

・・・・・・・・・(焦)

・・・・・・・・・・・・ダメだ、やっぱ居ねェ(泣)

ライトの電池も切れてきたので、一旦車に戻って交換後、やはり諦めきれずに大歯♂を落とした周辺を捜索。
勿論見つかるワケも無く、間を開けてまた探しに戻ろうと、最初の♀の御神木へ暇潰しに行ってみることにしました。

時刻はもうとっくに真夜中の2時を過ぎていました。

KIMG0706.JPG
♂!!!!!!
さっきは「もう2度とおいらせ町で出会えない」なんて思っていましたが、
小さいながらもまた♂を発見しました。
カメムシやアリに混じって細枝にしがみ付いています。手の届く高さで今度こそ落とさないようにしっかりと把握し、ケースに無事収容完了。
おいらせ町、これにてようやく目標達成。

とは言え、さっきの大型♂の光景があまりにインパクトが大きかった上、山と違い平地では大型の♂が採りづらい事を考えるとあの♂を諦めきれません。
まだ日曜日なので、時間と気力の許す限りまだ探索を続けることにしました。


すると、今度は枯死部も何もないような若い樹に、
KIMG0712.JPG
3頭目の♂を発見。幹っぺたに付いていたので、エサを探して飛んで樹を移っている最中の個体かもしれません。

KIMG0713.JPG
ちょっと離れて戻ってくる度に、例の1本目の御神木には新しいコクワが見つかります。

さらに、よく見ると
KIMG0714.JPG
KIMG0715.JPG
これ、確実に樹液を吸ってますよね。
幹の表面から流れる硬いワックス状の樹液ではなく、こうした若萌に流れている師管液なら好んで吸うのか?

KIMG0721-3.JPG
行ったり来たりしているうちに、気付けばそこそこの数が集まっていました。
♂も♀も皆小さいですが、何度も望みを失いかけたおいらせ町産が採れた事は今年の個人的採集関連トピックスでベスト3以内に入るでしょう。
(階上町で採れたコクワも今や霞んできています・・・)

それなりに採れたとは言え、
発生木が限定的で個体数はギリギリだと思われるので、コレクションとして十分な1♂1♀だけ持ち帰ることにしました。

ストックしていた電池を全て使い切り、これ以上の採集は不可能になってしまいました。時刻はもう3時

KIMG0722.JPG
帰る頃にはこの明るさ(笑)
津軽と違って太平洋側はやはり明るくなるのが早いです。


KIMG0725-2.JPG
家に帰って、〆る前に写真を1枚。

この1ペアを眺めつつも、まだあの♂の事は忘れることができませんでした。数日の内に、必ずあの♂を再び手中に収めてやろうと固く決意していました。
はい、まだこの記事は終わってはいません(汗)





採集回目 満開のコクワ

  6月17日

粘りに粘ったあの夜から約3日。
予想では、多分あの落ちた♂がまた(同じ、もしくは隣の)樹に上っていて見つかるはず。
今度はしくじらないように、脚立を車に積んで4度目のおいらせ町採集に向かいました。

夜になり、ポイントCに到着後、♂を落とした樹を見る前に御神木へ挨拶に寄ってみます。

KIMG0734.JPG
多いな!!!!
前回にも増して多くの個体が出て来ています。
(勿論この中には前回逃がした分が交ざっているでしょうが)

KIMG0747.JPG
ほとんどの個体に上翅の土汚れは見られず、発生後樹上のみで生活しているものと思われます。発生場所も後食も昼間休む所も同じ樹の上で、一切樹を離れる必要も降りる必要も無いんですからとても安全で効率的ですね。

KIMG0741-1.JPG他の樹を見て回っても、これらの御神木や何故かクワガタが付いていた樹には、付いていない樹とは目立つ違いがありました。



それが、カメムシの付いている数。

コクワを採っている時、やたらとカメムシの臭いが漂っていました。
実際、そうした「採れる樹」ではやたらとカメムシが付いていて、まだ細い枝や緑色の若萌に集まって樹液を吸っているのが観察できます。

臭いは集合フェロモンでもあるので、段々と人気の物件が出来上がっていきます。その物件は、見るとやはり他の樹よりも細枝や若萌の生えている数が明らかに多いです。



そこに集まっているコクワガタも観察していると、若萌ですら自分で齧っている様子は無く、考えられることは
カメムシが吸った痕から僅かに滲み出てくる樹液を舐めている。
としか考えられませんね。健気だなァ。

また、御神木をぐるぐる回ってコクワを回収しつつ、発生場所の腐朽部に耳を澄ませてみると、内部からメキッ、モキッ、モココッと鈍い音が聞こえてきます。産卵のために穿孔しているのか、外に出ようともがいているところか、前回にも増してライブ感の強さに感動を覚えます。

このポイントでのコクワの生態が解明できたところで、例の「落とした樹」の様子を見てみます。


予想的中、
同じ場所にデカい個体が1頭付いています。

今度は二の轍を踏むまいと、脚立に乗って直接素手で確保。
・・・あれッ!?


デカいとは思ったのに、近くで見てみると♂ではなく
32mmと良いサイズではあるものの、前回の♂ではなかったのでガッカリ・・・


しかし、運命の再開はその後に突然起こりました。

KIMG0738.JPG
落とした樹から4本隣にある細い樹に、大歯の♂が付いていました。
写真の樹液に付いていて(舐めていたかは分からない)、手の届くギリギリの位置に居た為写真よりまず捕獲を優先しました。わりと色が薄めでまだガチガチに固まる手前のこんな樹液に来ていたのは、何か不本意な事情から、この樹液にありつくのがやっとだったからではないか(=数日前に地面に落としてしまったから)と推察、つまりこの♂があの時の♂で間違いない!・・・と結論するに至りました(笑)


KIMG0748.JPG
この日の目的を達成し、気が楽になったついでにもうちょっと散策してみると、
前回は見られなかった樹に5頭以上のコクワが付いているのを確認。
その様子をよく見ると、木の洞の中が腐朽していてそこが発生源であることが分かりました。
これで、このポイントには
コクワガタの発生木 2本
アカアシクワガタの発生木 1本
が存在し、貧弱ながらもまとまった個体数が生息している事が判ったのです。
アカアシは残念ながらこの日1頭も見ることが出来ませんでしたが、コクワに関しては優に15頭以上が観察出来ました。
僅かな個体をしまい、残りはリリース。大満足で帰路につくことが出来ました。


KIMG0822-1.JPG
この♂が、2晩に渡り自分を振り回してくれた最大の♂。
あれだけ大きく見えたのに、測ってみるとなんてこたァない41mmほど。




そして、それ以上の大落ちが後日判明。

2戦目の材割の時に採れた最後の6頭目の蛹
気になって露天掘りしてみたら、♀じゃなくてちゃんとしたでした。


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ぶなちろ

発想がすごいですね。青森のコクワガタを完全把握する発想はなかなか考え付くものではありませんね。さらにそれを実行するなんてすごいです。ちなみに自分は小さいころ近くの公園でよくコクワガタをとりました。その公園にたくさんの桜の樹木が植樹されており
、「ヤナギやコナラでなく、桜の樹液で採っていたんだよなぁ」と今思うと懐かしく感じます。コクワは脚の付け根の裏がオレンジ色ですが、実はあそこがとても大好きなんですよ。(^^)/
by ぶなちろ (2020-06-30 21:43) 

ぶなちろ

最近は大きなコクワが珍しく感じます。コクワガタはクワガタ好きの原点ですね。僕も小学生のころは水銀灯と、近くの城址に植樹されたソメイヨシノの樹木の樹液で3~5頭ほど採集していました。でも、「青森全域のコクワガタを確認する」とはすごいことを考え実行したものですね。その若いエネルギーに敬服しました。(^^♪
by ぶなちろ (2020-07-11 21:48) 

会長

ぶなちろさんこんばんは、

2週間コメントを放置し失礼しました、問い合わせで気が付きましたがコメント自体は来ておりました(汗)なぜかコメントが来た通知が6月以降届いていなかったようです。
青森も他の都道府県の例に漏れず、昔はそこらでよく採れていたけど今探すと意外と見つからない虫になりつつあります。それでも、どこにでもいる可能性があるので見つかるときはポッと付いているんですが、土地勘のない所でだともう「たかがコクワ」とか「普通種」とかって虫とは思えないくらいシビアなんですよね。その感覚を嫌というほど味わい、そこを経ての達成感を得られたのが今回のおいらせ町採集でした。
昔って本当に変な所を見たりしてクワガタを採っていましたよね~、しかもそんな所で採ったのが大物だったりして(笑)
自分は他の人ほど沢山の採集をこなしていないかもしれませんが、今のところコクワ採集では標本箱を見ると皆その時の思い出や状況が蘇ってきます。全て採集が完了したときに、総括して記事が書ける事を今から楽しみにしていますよ。
by 会長 (2020-07-12 22:53)