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挑む!ハルマヘラ島 -ネブト初攻略への道のり(前編)- [〆プラティオドンネブト (原名亜種)]

これは、ネブトクワガタ飼育初心者による
入手から産卵までの奮闘を詳細に綴った
約7ヶ月間の記録である。




こんにちは、会長です。
やることなす事中途半端なこの夏の期間、せめてブログは月イチ更新で踏ん張ろうと、雨天の合間を縫って今回の記事を書いておりました。
前回は飼育ネタで増種に関わる記事でしたが、今回も同じく飼育ネタで増種記事です。

本当は採集記事でも書ければよかったんですけどね。
そう言ってまたコクワ採集を書いてもワンパターンが過ぎるので、オオクワ採集でも書きたいなと思ってたんですが今年はほとんど採れてないんですよね(汗)
しかも、県内メッカの某市においてはまだ採集数0頭!
それ以外で数えても、たったの4頭です。
(4頭が多いのか少ないのかは、人ぞれぞれの価値観によりますけどね)

こりゃもう家の中からネタを捻り出すしかねェな…と、これに手を付けたワケです。
(もっと色々あるだろうに…と自分でツッコミを入れたいくらい、ネタ探しが下手な自分が情けない)



第1章 小さな憧憬と軽やかな玉砕

回の主役はタイトルにもある通りネブトクワガタ、
それも外国産メジャー種のプラティオドンネブトです。

前回のオウゴンオニに引き続き、このブログではなかなか取り上げないグループのクワガタです。
自身、ネブト系の飼育は今まで2種経験があるんですが↓↓

プラティオドンネブト ニューギニア島西部亜種A. p. leopoldi
クーランネブトA. currani

いずれもセットを組んだところでハイそれま~で~ョ~と云う見事なまでの轟沈っぷり。ちなみにレオポルディはブリード品、クーランはワイルドでした。

多分、分かってくれる人も多いんじゃないかと思うんですが、そもそも国産種も分布していない東北~北海道の人ってネブトに対して苦手意識あると思うんですよ。どんなマット与えたらいいかって参考にしようにも、野外で生息環境見てないですし。

でも、そんなのは言い訳にならないですよね。飼ってるほとんどの虫は外国産だし、好きな虫なら出来るとこまで情報集めて実験と失敗を繰り返してでもブリードするのが当たり前ですから。


ネブト自体はビジュアル(造形)も好みだし、完全マット飼育のグループの中ではツヤやマルバネほどの膨大なスペースを要する事もないので、飼育願望は小学生時代から心の奥底にずっと持っていました。

そして上記2種の人気大型種に玉砕してからは、更なる苦手意識が強まったと同時に、
「いつか産卵を攻略してやろう、それもブリード品じゃなくワイルド物で!」
と云う具体的な目標が出来上がっていきました。
ネブトフリークではないのでAegus属なら何でもいいと云う訳ではなく、目的のものを特定の数種のみに絞りました(その数種についてはあえてここには書きません)

他の飼育種に目を奪われながら、それらが入荷するタイミングを気長に待っていたところ、今年になってある衝撃的な虫が入荷してきたのを発見したのです。




第2章 入札戦争



「ハルマヘラ島産プラティオドンネブト」


期は2月半ば
インドネシア便を扱っていていつもヤフオクに出品している輸入業者が、10年振りにハルマヘラの生体を入荷したとの事。
10年前当時の入荷(当時はビッダーズ)も記憶にあり、その時は
・メタリフェルホソアカ(アエノミカンス亜種)
・ウォレスノコギリ
・トラグルスノコギリ
・テルナテヒラタ
の4種は入荷していたのを覚えています。
しかし、プラティオドンネブトはたしか入荷は無かったはず・・・
(当時の入荷リストがHPに載ってたので確認しましたがその通りでした)

ネット検索でも、ハルマヘラ産の生体に関わるものはヒットしなかったので、
これは実質上の初入荷と云う事になるんじゃないか!?
にわかに色めき立ってしまいました。

同じプラティオドンでも、ニューギニア西部のレオポルディ亜種はブリード品は沢山出回っていますがワイルド入荷は近年では中々少ないです。それでも、2018年~2019年上半期に多少まとまった数が輸入されたのですが、自分の食指は動きませんでした。


それが今回、「ハルマヘラ」と云う馴染みの無いワードに触発されたのか、ヤフオクの出品画面を確認した後の行動は素早いものでした。

ウォッチリストに登録後、まだ入札者ゼロのハルマヘラ産プラティオドンに初手を打ち込みました。開始金額は18,000円

18,000円と云うと、ワイルドのネブト系だという事を考えればなかなかリスキーな金額。ドルクス系やノコギリ系の♀のように、「セットを組めばまぁ産んではくれる」と云う楽観が出来ません。ネブト系のワイルド品♀でよく聞く「ハズレ♀」を引いたら卵ゼロは当たり前だし、そもそもその確率が高いと云うのが厄介。
出品ページに実物画像が載っていても、「ハズレ」の見分けなんて付きません。
そんな博打があるもんですから、いかに「新しモノ好き」「ネブト好き」がこの世界に一定数居るとは言え、おいそれと手が出せず最初は様子見をするもの。

しかし、そこへ迷うことなく入札をかけることによって、
「もしかしたらこの虫意外と不人気で、俺でもワンチャン落札できんじゃね?」
と考えている競争相手の入札意欲を殺ぎ、そのような人達を少しでもこのレースから遠ざける効果を期待したワケです。

ちなみにこの時、出品は2つあって、
①ハルマヘラ産WD ♂30mm ♀19mmペア [2月17日 20時36分 開始]
②ハルマヘラ産WD ♂43mm ♀21mmペア [2月18日 6時4分 開始]
この内自分が入札したのは②の方。
①の方は、自分が出品を確認した時にはもう既に1件の入札が入っていました。

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――して2日後の夜、遂に決戦。終了時間が近づいてきました。

ここまで、自分含めて5人がこの②のペアに入札をかけましたが、終了時刻が近づく時点で最高入札者はオークションID=〈?*?*?***〉氏で21,000円。


自分は、最初こそいの一番に入札はかけたのですが、出品期間中トップで居座るつもりは無く、短時間で同じ相手と入札更新が続くようなら一旦沈黙します。
これはあくまで自分の考えですが、残り時間がまだある内に金額を上げてしまうのは都合が悪いんですね。なぜかと言うと、終了間際に上がる時と比べて、競争相手に「高額勝負に臨む覚悟を決める時間」を与えてしまう事になるからです(勿論、これが逆効果になる場合もあります)。

終了時間に向けて、ノートパソコンとスマホの2台でオークション画面を開いて待機します。特にそこまでする必要は無いのですが、念には念をという事で、
【スマホ】・・・出品物ページ固定で、入札待機
【ノートPC】・・・出品リストの閲覧やその他出品物のページのチェックなど
と役割を分担させておきます。・・・そうですよ必死ですよ。笑いたきゃ笑って。
(それにしても、つくづくスマホにしておいて良かったですね。スマホだとブラウザでもアプリでも、何人がその出品をウォッチリストに入れてるのか表示されるんですもん)

PCで他のハルマヘラ産の出品を見ると、やはりどれもなかなか凄まじい金額。
終了した出品はまだ僅かでしたが、アエノミカンスは20,000円越え、ウォレスも30,000円を優に超えています。ネブトを狙ってる自分も他人事ではないですが、遠路遥々ハルマヘラから船や飛行機乗り継いで輸送されてヘロヘロになってるかもしれないメタリに、よく2万も払えるなァ~とドン引きです。

やがて、終了時刻の22時8分が迫ってきました。
入札再開です。最低更新金額の500円を乗せて【入札する】→【確認する】→【ガイドラインに同意して入札する】と押していきます。

入札を受け付けました。あなたが最高額入札者です。

スマホ通知のピコン!と云う音が緊張感を煽ります。
――・・・さぁ、相手はどう出る・・・!!?





ピコン!
高値更新されました!


うっわァ~~応戦してきたァ~(汗)
更新してきたのは言わずもがな〈?*?*?***〉氏。500円をかえしてきて22,000円。

こりゃァやり合うしかねェか~とこちらも覚悟を固めます。
間髪入れずに22,500円を返します。相手が更新してきた直後に、すぐさま更新し返すことで「まだまだこっちは上いくぞ」「あたしゃお前にゃ絶対負けないヨ」と云った意志を向こうに伝え、あわよくば戦意喪失させてやろうと云う威嚇効果も期待したのです
・・・が・・・

ピコン!
高値更新されました!

あっという間の出来事。向こうの反応も随分早い(焦)もう23,000円。
相手も相当このネブトにはご執心な様子。
いやァ~ヤバいぞ・・・(汗)


何がヤバいって、まだまだ上いくぞとか書いておいて
実際このクラスの金額は俺だって非常に苦しいんですよ!!!
色々小細工したりするのも、ひとえに自分が虫貧乏でビビりだからですよ!
(じゃァそもそもこんな虫に手を出そうとすんな!って話ですけどね)

と云う事で、ビビりな自分はここからまた次の戦法に打って出ました。

終了時刻へ向かってカウントダウンするスマホ画面を注視、残り時間が僅か15秒・・・そして10秒を割ったところで入札ボタンをタップ!

入札を受け付けました。あなたが最高額入札者です。

終了時刻が5分延びました。

ヤフオクには、「自動延長」と云う機能が付けられており、
終了時刻の5分前に新規入札があった場合、さらに5分間、終了時刻が延長されるのです。

つまり次の戦法と云うのはこうです。終了間際(数秒前)に入札更新すると自動延長で+5分、さらに相手への通知や確認動作のタイムラグにより、相手がさらに更新しようとして入札ボタンを押す頃には既にトータルで5分を切っているのでさらに+5分される。その延長された10分弱がまた終わりかける直前に、また500円更新するのを繰り返す。
そうすることで、1,000円更新するのに約10分要することになり、相手を持久戦に持ち込み体力及び精神力を削るのが狙い。予算そのもので相手に敵わなくなる前に戦意を殺いでいくのです。
(勿論その前提として、相手も入札最低単位で応じていく事が条件ですが)

・・・・・・姑息ーー!!!!! と言うか悪質!!!

更新、更新、と繰り返され延びていく終了時刻を待つ合間のこと。
ふと気になってPCで他の出品生体の様子を覗いてみると、今後待ち受ける戦いが思っていたより厳しいものになると云う事が判ってきたのです。

なんとプラティオドンのみならず、彼は複数の出品生体に入札をかけていたのです。高額なアエノミカンスやウォレスにも入札中で、既にいくつか落札されているものもありました。全てを見たわけではありませんが、入札する生体の種類に一貫性が無く、上記2種に限らず高額になりがちなハルマヘラ産の他生体への入札もいくつかあります。これって単に個人が趣味で飼育する為の虫の選び方じゃないですよね。

・・・あぁ・・・ダメだ~~こんなの相手じゃ正攻法(金)で勝てるワケねェ!!!
やはり自分は邪道で攻めていくしかないと悟りました。


そうして延長で粘り続けること約30分、
こちらが返せば即座に反応してくると云う流れが止まりました。
向こうからの高値更新が来なくなったのです。

しかし、終了までまだ4分以上あります。いつどのタイミングでまた高値更新をかけてくるか分かりません。
残り4分、きっとまだ相手は余力を持っているはず。
残り3分、そろそろ入札かえしてくるか・・・?
残り2分、期待していいのか? やる気ならもう更新してきてもいい頃だが・・・
残り1分、まさかこちらに対抗してギリギリで延長させる気なのか・・・?
残り50秒・・・40秒・・・30秒・・・20秒・・・10秒、
9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。

スマホの画面が変わりません。0のままです。
スマホに手を付けないままの状態で、今度はPCの画面に目を移して恐る恐るF5で画面を更新してみると、切り替わった画面に一文が現れました・・・



おめでとうございます!! あなたが落札しました。



ふぅ~~・・・やっと終わった・・・!!!!!
大きく息を吐き、静かに喜びを噛みしめました。
終了時刻22時46分。落札金額27500円(税抜)

他の生体への入札金額を見る分にはもっと高額になる事を覚悟していたのですが、思いの外早かったです。他の入札ページの終了時刻も重なっていたので、それらに気を取られている内に更新し損ねたのでしょうか? (実はちょっとそれも狙いの内だったりして)
ちなみに、この〈?*?*?***〉氏がこの日落札した生体出品を合算すると、自分の確認できただけで88,000円を超えていました。勿論その中には、アエノミカンスやウォレスも含まれておりーーー

いやホントにこの人、一体何者なんだ・・・?






して、辛くもハルマヘラプラティオドンを落札したその翌日。
この夜も、スマホとPCでヤフオクを開きネシア便の出品ページを開いていました。


そうです。前夜の②のペアに引き続き、
①のペアも落としにかかろうというのです。
慣れないネブトの産卵(しかもワイルド)で1ペアだけだとやはり心許ないので、出来る事なら、否、是非とももう1ペア欲しい!

その為に避けて通れないのは、〈?*?*?***〉氏との再戦。
①へ最初に入札したのも彼であり、この時点での最高入札者でもありました。

貧乏人の自分には到底理解し難いこの凶悪な財力と、目を付けた物には見境無し、そして常に自分が最上位に居たいと云う性格。・・・控えめに言って「超苦手」。
仮にコイツが彼が落札しても絶対ここから幼虫買いたくない。


終了時刻は22時18分、前回とほとんど違いません。
金額も23,500円と、既にそこそこ「育って」いる状態でしたが気持ちは変わりません。この先1ヶ月、昼飯をカップ焼きそばにする覚悟は出来てるんだ!

今回は最初から持久戦を仕掛けます。
1,000円=10分でジリジリ終了時刻を延ばしていきます。


  ところが。


申し訳ありません。
自動入札であなたの入札価格を上回る入札が行われました。


遂に堪忍袋の緒が切れたのか、25,000円を超えてきたところでこちらの500円更新に「自動で」500円上乗せするようになりました。あ~~~やっぱりそうするよな~~~
ここまでは、お互い5分を切る度に500円入札して延長してきましたが、
500円ではなくまとまった金額を上乗せする事でこちらの更新を即座に返すことが出来るワケで、簡単に言うと「1,000円上がるまでに稼げる時間が10分から5分に縮む」んですね。

これを読まれているヤフオク経験者諸兄においては、最初の落札時の段階で
「こんな姑息ヤローのボール回しに付き合う相手もなかなかの小物だな」
と鼻で笑ってらっしゃったことでしょう。
どうやら、ここから本気らしいです。

→【ガイドラインに同意して入札する】

申し訳ありません。
自動入札であなたの入札価格を上回る入札が行われました。

5分経つごとに入札をタップしますが、その度に自動入札。覚悟していましたが早々に前回の落札価格を超えてしまいました。


入札を受け付けました。あなたが最高額入札者です。


約30分ぶりのこのメッセージは、30,500円でかえした時に現れました。
・・・なるほど、自動更新は5,000円分かーーー

さらにすぐ31,000円でかえしてきた事にも、もう驚きはありません。
どうせまた自動入札かけているはず。

申し訳ありません。
自動入札であなたの入札価格を上回る入札が行われました。


これを最後にもうハルマヘラのプラティオドンなんて入らないかもしれないのですから、向こうだってそりゃァ粘りますよね。コイツのWi-Fi止まんねぇかな。

やはり今度も5,000円分上がったところで最高入札が入れ替わりました。
ここまでで35,500・・・次は40,000までいくのか。
ちょっと覚悟が揺らいできました。


40,000円まで来たところで時刻はいよいよ0時を回り、タップする指も重く感じるようになってきました。
馬鹿正直に500円手動更新してくれてればまだ35,000円にも達してなかったのにっ。


依然、5,000円単位での自動入札を自分が追いかける展開が続きましたが、
上がり続ける価格は、遂に危険水域へ突入してしまいました。

50,000円台の世界へテイクオフ。
ヤフオクでは50,000円を超えると、入札単位は1,000円になるのです。自分も、今までこの金額帯に入ったことはありません。

こんな事をしているその一方で、ゼブラノコギリが1,200円で、ブケットフタマタが800円で落札されていきます。平和な世界です。
こちらは、平和とは対極の世界。相手は依然として自動入札で応戦してきます。5分ごとに野口英世が二人消えていく恐怖の世界。


「俺が落札した時は27,500円だったんだよな・・・」

昨日の落札金額を思い出してしまい、目の前の金額を冷静になって見直してみます。
いよいよここまでじゃないか? と考えてみることにしました。
金額も55,000円に到達。消費税含めたら60,000円超えてるじゃん・・・!!!

財布から1万円札6枚を取り出し・・・じぃっと見つめます。
「これが・・・一晩で消えるのか・・・」





  数分後。





商品ページを更新。

このオークションは終了しています



落札者は〈?*?*?***〉氏。
熾烈を極めた2つ目のプラティオドンの戦いは、55,000円(税別)の金額で負けてしまいました。
終了時刻は深夜1時7分。他の出品生体は、この日の分はとっくに全部終了しています。買っても負けても疲労感は免れません。

今頃向こうは何考えてるんでしょうね。「チッ、手こずらせやがって~」と舌打ちでもしてるんですかねぇ、はたまた、「うわわわわ・・・落としちゃったヨォ~~(怯)」と己の愚行にビビり散らしているのでしょうか。ーーいや、まさかね。


今回の2月便は、その後数日で生体出品がおおかた終了し、
注目のハルマヘラ便も、ウォレスノコギリはペア出品の全4件がいずれも35,000円オーバー、トラグルスノコギリは20,000円オーバー、オパクスサビは♀単品でも16,000円オーバーと、どれも景気のいい金額で落とされていました。
ただし、アエノミカンスメタリは供給過多の弊害で急落していました。最初こそ25,000円台でペアが落札されてはいたものの、追加で次々とペアや♀単品が出品されていき、入札競争は弱火に。3月に入ってもなお追加出品は続き、その頃には落札価格が4,000~7,000円台となっていました。
勿論、言うまでもなく今回の便の最高額はアレ。


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て、長く苦しいオークション入札の話も「一旦」終わりです。
プラティオドン1ペアを販売業者とやり取りして到着を待つ間、その業者のツイッターで産地詳細に関するツイートを発見したので、ここでその説明をしておきます。

ジャイロロ山.png
今回入手した産地であるハルマヘラ島は、北マルク諸島で最大の島。
複数の亜種がいるプラティオドンにおいて、この島のものは原名亜種と位置付けられています。「世界のクワガタムシ大図鑑(むし社)」ではこのオレンジ色で示した6島に原名亜種が分布していると説明されていますが、この内モロタイ島のものはかなり昔に入荷した個体からの子孫が出回っています。今では亜種レオポルディと共に、ブリード品が入手しやすいプラティオドンの一産地として知られています。

そして話をハルマヘラに戻して、
そのツイートではハルマヘラ最大の町・ジャイロロ(Jailolo)の風景と、「ここでクワガタを採っている」と云うコメント付きの山の写真が載っていました。
ちなみに、販売時は【ハルマヘラ島】未満の詳細産地は説明書きされていません。

さてその山の写真を、インターネット検索で照合してみるとドンピシャリ。
――特に捻りがある訳でもない、すぐ近くから町を見下ろしているジャイロロ山がその正体だったと云うワケです。
(ちなみに10年前の入荷時のも覚えていますが、そっちはイブ山でしたね)




第3章 産卵セット
ブトの飼育(産卵)はマットが命ーーー

これはどこの書籍やホームページでも書かれている事ですね。
(あと、色々なところで飼育情報読み漁ったせいで、無意識の内にどっかの言い回しやキーワードを勝手に拝借してしまってる可能性があります、ゴメンなさい)
数多のクワガタ産卵マニュアル本でも、オオクワその他の一般グループを一通り紹介してから最後にネブトだけ別枠で紹介されているのをよく見かけます。ネブトのページだけマットの作り方だとかやたら文章ばかり長くて、「そこは読んだことない」と云う方もきっと多い事でしょう。
ウチのブログを読まれている諸兄におかれましては、苦でもないと思いますが。

ネブトクワガタの産卵について、かなり初歩的な情報をまとめてみると、

1.温度・湿度はやや高めが良い。
管理適温はオオクワなどが22~25℃などと紹介されるのに対し、ネブトは25~28℃、23~28℃などと書かれている事が多いですね。
この温度帯を順守する必要は無いと思いますが、これらを噛み砕いて飲み込むと「30℃未満ならヨシッ!」と云う事でしょう。よく噛まなかったと思われるかもしれません。

ハルマヘラのジャイロロ山近辺だとそこまで標高は高くないので、赤道付近の厳しい暑さを想像してネット検索すると、気温は9月半ばで22~30℃ほど。おお!マニュアル正しいじゃん!
湿度は、さすがインドネシアと云う事で100%近くあり、これを見てもマットの水分量などはやや高めにしておいた方が無難そうですね。

2.マットは発酵がよく進んだものを使う。
ほぼほぼ黒くなるまで発酵が進んでいるものを使うと云うのがセオリーなようです。専用にネブトマットと称された製品もありますが一様に皆真っ黒です。
ただし、黒いとはいえカブト用マットを使って・・・と云う記述はあまり見られません。添加剤をどれくらい使用しているかがネックなのでしょうか?

チップの粒子に関して、以前はお決まりのように微粒子なのが前提で紹介されていましたが、現在では粒子がやや粗めのものを混ぜた方が良いと云う書き方もされてきています。成績はもとより、管理のしやすさで定評があるみたいですね。確かに、よく発酵が進んでて微粒子だと、ネブトに適した高温&高湿度の環境では劣化して変質しやすいですからね。

3.他のクワガタ飼育で生じた食べカスを混ぜ、赤枯れ材のマットも効く。
そしてこれがネブト産卵で最もよく聞く話ですが、「他のクワガタの幼虫に食わせたマットや菌床のカスを新品のマットに混ぜ込む」と産卵の成功率が上がるみたいですね。
ネブトのいくつかの種類では、単に菌によって腐朽が進んだ材ではなく、シロアリによって分解された材に居る事が野外で観察されています。一度クワガタの幼虫が食べて分解が進んだフンや食べカスがネブトに適していると云う話も頷けます。勿論フンや食べカスだけだと劣化が進みやすいので、新品のマットに何割か混ぜ込むように使うのがベターだとも紹介されています。

そして、食べカスと共にネブト産卵で登場するのが、赤枯れ材のマット
人工栽培で採れる材料ではないので売っているものを見つけてもどれも高価ですね。これはどうやらネブトの種の中でも効果が有るものと無いものがいるらしく、本種について言えば「必要ない」とされています。しかしこれは、「効果が無い」と云う事なのか「わざわざ使うまでもない(他の材料の要素が重要)」と云う事なのか分かりませんでした。

4.コバエが湧くと台無し。
分解や生成に色々と過程を経てきたマットは雑虫混入のリスクは当然高まります。特にコバエなんかは、分解が進んだマットを粉状に分解しつくしてしまうので、混入するとマットの泥化は避けられません。コバエが湧いたらそのケースは即時・全取っ替え。
せっかく手間をかけて仕込んだマットをゴミクズにされないよう、これには常に注意しないといけないですね。

5.容器は小さくてもいい。
同じく産卵マットに気を使うツヤやマルバネと違って、体が小さくスペースを取らないネブトは非常にありがたい!
何がありがたいかって、食べカスとか赤枯れとか、そうそう大量に用意できませんからね。プラケースのミニ~小サイズ規模の容量で十分だと言われています。

6.ゼリーで溺れないように注意。
――ネブトはゼリーで溺れる。
こんな話をよく見聞きします。マットに潜らずゼリーに潜って死んでた・・・なんて笑えないですからね。市販の16gゼリーを半分に切って与え、小さな種類ならば4分の1に切って与えると云うのも普通だそうで。

・・・でも、好きなものに埋もれて死ぬってのも、悪くないよなァ・・・

7.マットを円形(球状)に固めていると産卵成功のサイン。
容器壁面からぐるっと回り込むように坑道を掘っていると産んでいるサイン、こうした記述がよくありますが意外と写真で紹介されることが少なくないですかね?
マットに産卵後、その箇所を球状に丸めるらしくツヤなどでも見られる行動だそうです。


以上の内容を基に、産卵セットの準備を進めていきます。
用意するものがちょっと特殊なので、生体が到着したらなるべく早くセットを組めるよう先に下準備をしていきます。
こんな滅多に手に入らない虫(でしかもワイルド)を到着後何日も経ってからのろのろとセッティングするのでは飼育者としての質が疑われます。
スピード感を持って行動するのは何においても大事ですよね。

・・・と言っても、マットの用意がその全てなんですが、
まず基軸となる新品のマットとしてRTN製のNマットを発注。
次に食べカスマットとして、アングスティコルニスミヤマ飼育で取っておいた生オガ発酵マットの食べカス
そして、一応やれることはやっておこうと思い、赤枯れ材も用意。
KIMG0097.JPG
乾燥させて保管していたので、これをミキサーで微粒子にします。

KIMG0098.JPG
マットと言うか、塵ですね。赤枯れはホントに細かくなります。これを600ccほど?作りました。


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んなこんなでバタバタしている内に、
遂に待望の生体が到着しました。

KIMG0102.JPG
プラティオドンネブト(原名亜種) ハルマヘラ島 ジャイロロ山


おお、小さい。飼育経験はあるとはいえ、しばらく見ていなかったネブトは写真と比べて小さく見えます。特に、落札金額が心の隅にあるので余計に(笑)
そしてメチャクチャカッコいい!小さいと思ってじっと見ていると、ジワジワとその渋さに魅せられてしまうんですね。

ハルマヘラ島産プラティオドンネブト
青く光沢を帯びた上翅はネブトならではの持ち味。そして43mmは野外では準大型と呼ぶのが適当かと思われますが、否が応にも目線を集めてしまう大腮のこの造形のインパクトは特大ですね。

KIMG0105.JPG
これを見ていると、単なる大腮の開き具合でしょうかね? モロタイ島産で出回っている大型♂個体の写真と見比べてみると、こっちの方が内歯の肉付きがよく、その根元が太く感じるのですが・・・気のせいですか、そうですか。50mm超えれば内歯が伸びてちょっと細く見えるんでしょうね。

昨今の生き虫業界はすぐ、やれ「ウンタラ山のセスジコクワだけ形が違う」だの「アルフ××クのホソアカは内歯が違う!湾曲も!」だのと自分だけの産地をブランディングしようとあれこれ売り込みをかけたがるんですよ。瞬間的に盛り上がりを見せた後、「よく見りゃどうでもいい違いじゃね? あの時は俺もどうかしてたぜフンッ」といつの間にか常温に戻ってくる一連の流れは、クワガタであれナンであれ男なら全員経験がある事と思います。哀しい生き物ですね。


KIMG0108.JPG
KIMG0107kai.JPGなんやかんや言っても、今一番大事なのはこっちですね。
汚れは洗い除かれていて、表面上見る分にはスレも見られず新鮮なように見えます。・・・しかしだからと言って安心できるほどワイルドは甘くありません。たった21mmでは卵を持っているか重さで判断できるワケでもありません。

擬死行動がしっかりできるか
その時に頭部がグラつかないか

――と云ったチェックポイントを参考にするそうなので確認してみると・・・う~~~ん? 何度試しても、なんか頭がビシッと固まってない気がするぞ!?



観賞もそこそこに、早速セッティングしていきます。

3種類用意したマットをどう仕込んでいくかが非常に迷うところで、

case 1. それぞれのマットを別々の層に分けて詰める
case 2. 用意したマットを全て混ぜて詰める

この2通りの内どちらを選ぶか当日まで考えましたが、
人工飼料をうまく気に入ってくれるのか・・・ワイルドならではの気難しさが特に不安だったので、潜る場所によってマットの質が変わる前者の方策を選択しました。

KIMG0110.JPG
層にする・・・とは言っても、赤枯れマットに関しては容量が少ないのでNマットで嵩増しします。

そして、適度に加水したマットを順に下から詰めていきます。
KIMG0114.gif
4層のミルフィーユ。

KIMG0115.JPG
どこの国旗でしょうか。
負債まみれのニオイがプンプンする国ですね。

KIMG0116.JPG
層にするためにマットはキチッと固めたので、潜っていきやすいように4ヶ所くらいに誘導坑を開け、ゼリーと転倒防止材を配置し、最後に♀を入国させて完成です!

セット直後よりも、マットがこのケース内で馴染んできてからの方が♀の反応が良くなると云う説明も度々目にするので、じっくり様子を見ていく事にしました。

富国強兵は成るのか!?


入荷した在庫 1種類
ブログに載せた在庫 90種類
全ての在庫 14種類







 ― あとがき ―
ここまで長駄文にお付き合いくださり誠にありがとうございました。
今回の記事は全6章の構成で、それを全て1本の記事にまとめてしまうとこの倍の量になってしまいます。それでは9月中の更新が間に合わなくなってしまう為、今回はその半分――前編だけを先に更新しました。
何より、長文記事に拍車がかかってきている近年、我慢して長文を読まれている諸兄らの怒りを買いたくないと云うのが本音であります。「お前、記事長過ぎッ!!!!!」――と今ではウチのメンバーも読んでくれません。

次回、
・〈?*?*?***〉氏とは何者だったのか・・・?
・その後のハルマヘラ便は・・・?
・♀は無事に産んでくれたのか・・・?

-ネブト初攻略への道のり(後編)-  ご期待ください。



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コメントの受付は締め切りました
ぶなちろ

すごい大作ですね。完成おめでとうございます。自分は外国産クワガタは飼育経験が少なく購入したことも数えるほどですが、会長さんの強い思い入れを感じました。
ところで今季はヒメオオの採集にはいかなかったのでしょうか?麻酔齢会長さんたちのヒメオオ記事を一番楽しみにしていたものですから・・。自分は今季、本日でヒメ採集終了しました。
by ぶなちろ (2020-10-03 21:04) 

会長

ぶなちろさん、こんばんは

長文にお付き合い頂きありがとうございました(汗)
長ったらしい記事を書くわりに結果がほとんど残せていないのは恥ずかしい限りです。だから冗長が過ぎるのかもしれませんねぇ。

ヒメオオ採集ですが、一応今期3度ほど行ってまして、中には実質100頭超えを記録した日もありました。ただ、去年と同じポイントだったりして書く気になれなかったんです。今日も行くつもりでしたが一日中雨で断念しましたし、今期あまり天気に恵まれていません。
去年は灯火採集をダイジェストにしたので、今年はヒメオオをダイジェストで書いてみるのもいいかもと思ってますね。
こちらはまだヒメオオを続けるつもりではありますが、パッとしないままシーズン終了したらダイジェスト決定ですね・・・
by 会長 (2020-10-04 22:03)