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陽射しの下で [むかしの話・・・]

高校2年生の時の話だ。

季節は夏真っ盛り。世間では夏休みに浮かれ自分も例外ではなく宿題そっちのけで採集ライフを満喫していた。
ある朝、俺はNo.4とNo.6と3人で親の車に載り市内のショッピングストアに向かっていた。
後ろのトランクにラックとクーラーボックスと、そして多数の虫を載せて。

ショッピングストアに着くと、既に建物の周りにはゴミゴミと…ではなく大勢の人で賑わっていた。
「随分早いな」
この日この場所では隔週でフリーマーケットが行われており、建物の入り口近くに数十組が集って売り物を広げるのだがこの日我々はこのフリーマーケットには初参加であり勝手が掴めていなかった。
果たして我々が午前10時くらいから始めれば問題ないだろうと高を括ってやって来たところ、既に会場は盛況に包まれていたというワケである。
完全に出遅れてしまった。

急いで車内から荷物を引きずり降ろし、事前に指定された番号に従い与えられた区画に荷物を置いて「場」を作る。
陽射しを背にして陳列用の本棚とラックを置き、
あ、どうも~などとお隣さんに軽く挨拶を交わしながら商品を陳列を始める。
到着時から賑わっていたせいもありこちらが棚に虫を並べている時点から続々と客が我々の前に集まってくる。
その時点からもうすでに「これ下さい」「それは何?」とやり取りが始まり忙しなかった。
この日持ってきたものだが、
・カブトムシ(地元産)成虫
・コクワガタ成虫
・アカアシクワガタ成虫
・ニジイロクワガタ成虫
・カネギエーテルノコギリクワガタ成虫&幼虫
・ヘスペルスアトラスオオカブト幼虫
・ネプチューンオオカブト幼虫
・シェンクリンオオクワガタ幼虫
・インペラトールホソアカクワガタ幼虫
という顔ぶれ。
こうしてリストにしてみると田舎の未成年飼育者の余品としては十分に見えてしまうが、
実際は中途半端なものだった。

やはりこうして並べてみて一番人気があったのは地元産カブトだった。
自分たちとしては当時青森でもまず見る事は出来ない外国産が人目を引くのではと期待していたのだが予想はあっさりと覆った。
続々とカブトが売れていく中、強い日光から虫を守るために持参していたクーラーボックスに入れている氷を虫の居るケースに放り込んでいく。
日除けのパラソルを持っていない事をこの時ばかりは恨んだ。

誤算だったのが、陳列の準備が完成する前に客入りのピークを迎えてしまったことだ。
しかも、ケースにまとめていたカブトムシが予想以上に売れ、まさかそんなに売れると思っていなかったのか準備の詰めが甘かったのか小分けにして渡す際のカップが切れてしまったのだ。
「カップが切れてしまって今買ってきますのでまた後でもう一度来ていただけますか?」
恥ずかしいものである。
急遽、近くのホームセンターまで買いに行くことになり、母が車を運転し誰か一人がカップを買いに行くことに。
結果買い出しへはNo.6が行くことになった。

しばらくは自分とNo.4の二人で接客する展開になった。
あたふたするなぁ…などと思ったが、その予想を和らげるかのように客足のピークが過ぎ余裕が出てきてしまった。
この時すでに用意していたカブトムシの♀が尽きていた、♀のケースにはもうストックが残っていなかった。
「後で来てください」と言った客の分の1頭を除いて。

隣で服を並べている中年の女性が話しかけてきた。曰く、「フリマは朝早くが勝負だから昼になったら客は減る」との事。
暗に「あんた達は来るのが遅すぎるよ」と言いたいらしい。

ピークを過ぎると今度は陳列した虫を見に来たり買いに来たりする客は極端に減り、自分のカブクワ関係の思い出話を披露する人が増えてきた。
どれも他愛の無い話ばかりだったが、一人だけ「長靴を履いて中に何か居て吃驚した」と云う流れからオチがマムシだった、と云う全く虫に関係ない体験談を披露していただいた中年男性も居た。
「虫」とマ「ムシ」をかけたのだろうか?

また、しばらく経ってから偶然中学の時の先生が通りかかり軽い世間話などもした。
あなたの教え子は今、虫を売ってます。

虫がこんがり焼けないようにひたすら氷を投入する作業に追われる中、買い出し組が戻ってきた。
何か嫌な予感がしていたが、手渡されたカップを見て軽く気分が落ちた。
確かに虫は入れれるのだが、無駄に大きい上に必要以上に沢山ある。
入れるカブトムシもほとんど売れ、ちょっとカバー出来ればよかったのだが、おかげで貴重な売り上げ分がほとんどカップ代にすり替わってしまった。
これでさっきのカブトムシ購入を保留した客が来なかったら笑えないどころの話ではなかったのだがそこは有り難い事にまた来てもらいちゃんと買っていってくれた。

午後になり陽が傾き始めると、溶けた氷のせいで成虫の容器の中はベチョベチョになってる。

夕方近くなり、もう今日は終了だと言うかのように次々と片付けが行われるようになった。
我々も♂だけ余ったカブトムシの値下げを繰り返せど買っていく客は居なくなっていたので「これも経験だな」と片付けを始めることにした。
隣の持ち場で後片付けをしていた服売りの中年女性が場を離れ帰ろうとする時にもう一度一言、
「朝早くから来ないと売れないんだよ。」
女性が帰った後、No.4が苦笑いしながら言った
「そう言ってるあの人自身、ほとんど客来てなかったんだけどな」




この日屋外フリーマーケットで昆虫を売ると云う試みに挑み、
「生き虫を売るには場違い過ぎた」のに一同納得した事は、口から言うには少々辛い事実だった。


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