No.7 西十和田の宝石を求めて [日昆 採集記 【2018年】]
5月4日 平川市 |
目を覚ました自分は枕元の目覚まし時計を見てカタマったところから一日が始まった。
・・・遅刻だ・・・(焦)
この日は、No.7と共に彼の地元・平川市での採集である。
彼がまだ地元産のルリを採っていなかったという事で、4月に行く予定を一度立てていたのだがまさかの両名体調不良でダウン、今回はその仕切り直しという事になる。
朝9時過ぎに出発したのだが、
No.7も朝はバタバタしていたそうで、集合時間は繰り上がっていった。助かった・・・
時間に余裕も出来たので道中買い出しと朝食も済ませることができ、焦ることなく現地へ向かった。
道中津軽平野は青空が見え、今日こそ爽やかな採集が出来そうだと期待も膨らむ。
11時過ぎには集合場所へ到着。やや空が白っぽいがまぁ大丈夫だろう。
先に来ているかと思っていたNo.7の姿も無いのでトイレ休憩などして待っていると、数分後には広いガラ空きの駐車場へ1台の車が、自分の車の横へピッタリ停まった。No.7と合流である。
車内で積もる話を消化したところで、いよいよ目的のポイントへ出発する。
時刻にしてもう12時半である。
現地ポイントへは八甲田の裾野に広がる高原に車を停めて徒歩で向かうのだが、思ったよりも雪が多く残っていて、以前来た時は車道の終点まで行けていたのが今回はその手前で足止め。300mほど残雪に邪魔され地味に歩く距離が伸びてしまった。
車を降り、装備を整える。サウナスーツの自分と比べて、No.7はきちんとレインウェアを装備しているのが流石である・・・と言うか自分があまりに準備していないだけでこれが普通なのだが。
時刻ももう13時になろうと云う頃。昨日の田子と違って今日ならまともな採集が出来るだろうと慢心混じりの期待を持って雪上を進み始める。
自分も、八甲田山地では北連峰や十和田ではルリを採っているが西十和田のラベルは採っていないので楽しみである。
青森県中央部を南北に走る八甲田~十和田湖にかけての山地帯の中でも、南八甲田連邦から十和田湖の山林の東側が十和田(十和田市)であるのに対し、津軽側の地域は西十和田と呼ばれている。
この西十和田と云う括りは、概ね黒石市東部~平川市東部~秋田県小坂町付近までが含まれている。
航空地図のキャプチャ画像と地図と組み合わせ、植林地帯を抜けるルートととしてどの方向へ向かうか相談した結果、以前進んだ方向と別の方へ向かうとどのような樹相になっているか調べてみようと云う事で、進んだ事が無いルートを選択して進むことに。
広葉樹各種とマツが混ざる林内を、スノーブリッジに注意して進む。
入り組んだ沢を手すり代わりに、道に迷わないように緩やかな上り斜面を歩き続ける。
八甲田山系という事で他地域よりは難易度が低いツヤハダも狙いたいところではあったのだが、残念ながらまだ土崖と根開け以外に地表が現れている箇所は無く、赤枯れの倒木も見つけるのは難しそうだ。
針葉樹の混ざる一帯を抜けて、我々はいよいよ期待の高まる純広葉樹林帯に進入した。
なだらかでのっぺりした雪原に等間隔で生え揃っているブナ。2次林帯である。
No.7 「原生林までどのくらいでしょうね?」
自分 「さぁどうでしょうね、自分が前来たルートだともう少し先であるんですが・・・」
春ともあって雪上には色々な物が落ちていて斑模様になっている。木の枝、葉、実、皮、木屑、土、動物の糞・・・
雪自体はもう固まっているので歩きやすいが、色々な物が落ちているので自分の歩いた跡があまりはっきり残って見えない。
2次林と云う事で皆木は細いが、立ち枯れも増えてきたので自然と枯れ木から枯れ木へ点を結ぶようになっていく。
しかしやはり2次林ではなかなか産卵痕の付いた材が見つからない。
木から木へジグザグ渡り歩いては見てみるのだがどれもキレイな材ばかり(他の虫なら居ると云う点で言えばキレイとは言い難いのだが・・・)
彼の話によると、関東の飼育屋の間では天然のブナの枯れ木が産卵材として至高だと専ら評判のようだ。個人的にはエノキあたりが一番じゃないかと思うし、今日のホダ木事情も厳しいもので粗悪材も多い事を考えると分からなくはないのだがちょっと言い過ぎじゃないか~? と2人で笑い合っていたのだが、我が身を振り返ってみればそういえば自分も最近ブナ材しか使ってないと云う矛盾にハッとした。
暫く歩いているが依然原生林に辿り着く気配が感じられない。
そもそもどっち方向に歩いているのか判断が付かなくなってきていた。とにかく360℃見渡しても同じような細いブナしか生えておらず、地形的な危険は無いのだが逆にその起伏が少ない無特徴な地形の為に目印のような物がほとんど無い。
自分のガラケーの地図アプリでは拡大しても周辺真っ白で沢も何も目印が表示されないし地図を開いてるとカメラが起動できないし(あぁガラケーの悲しい性だな)、No.7はスマホだが現在地は衛星で補足できたが今は電波が圏外で地図を読み込めず結局使えないとの事。
基本的に日昆のパーティは分散して探索することは少なく、本拠地(車)や目印になる物から見渡せる場所に居る時だけ分かれて探すのだが、思った以上に産卵痕が少なく、さらに偶に小さな幼虫が出てきたのを埋め戻すばかりで時間は過ぎ去っていく。
次第に、自分が立ち枯れを確認している間にNo.7が先の材へ進み、確認を終えた自分がNo.7の確認している材を通り過ごしその先の材へ向かう・・・と云った具合に抜きつ抜かれつつ、探索ペースが速くなっていった。
産卵痕もちょっと多めの立ち枯れを発見、ようやくらしくなってきたと期待しながらの確認作業。No.7は次の材を探しに先へ向かっている。
〉〉 時刻は15時、そろそろUターンして諦める覚悟が必要になってきた頃だった。