産卵、そしてまた産卵へ… -ネブト初攻略への道のり- [〆プラティオドンネブト (原名亜種)]
― 前回のあらすじ ― 2020年、数少ないハルマヘラ島産プラティオドンネブトをオークションにて接戦の末2ペア入手。久しぶりのネブト系かつ野外品と云う事で、シロアリ材を調達。産卵セットし、産卵行動に移った事を確認しました。 初めて見たネブトの丸い産卵坑をケース壁面に発見し、気の早い勝利宣言をしたのですが――・・・ |
2020年、秋
9月8日に組んだ2頭目の♀の方は、前回の記事でも書いた通り沢山の坑道が掘られて多数の卵が確認できています。
嬉しい事に、3週間近く経った時点でも卵は・・・腐ってないィィ!!!
孵化してるぅゥゥ!!!!
金額がどうとか言うワケではないけども、
やはりそれなりのリスクがあった虫で無事にWF1が採れると爽快感と達成感が大きいです。
9月27日、無事幼虫も見えたと云う事で、
区切りの意味も含めて親♀を次の産卵セットに移動させました。
今度は、デジケースHR-1へ。
内容は前回と同じくNマットを基本に、地上部の潜りはじめの層にシロアリ材を混ぜ込みます。産卵スイッチが入っているならば、マット全部にシロアリ材を混ぜ込まなくても効くだろうと考えてのセットです。
その後は、不安要素も無く数日以内に産卵行動を確認。
だ・・・駄目だ まだ笑うな・・・
こらえるんだ・・・
卵がほとんどの状態ながら、必要十分相当の幼虫が温室内に並ぶ光景が目に浮かぶ・・・
今思えばこの時の自分は、ダークなニヤケ顔でケースを眺めていた気がします。
このケースも、僅か4日でケース内全面に産卵坑道の跡をつけ切ってしまい
慌てて次のセットを組む事に。カブト系でもこんな一気に産んだこと無いのに!
10月1日。
今度は試しに、羽化したアマミシカを掘り出して以来マットが入ったまま放置していた800ccガラスビンへ、パラパラとシロアリ材をまぶして♀を投入。
(アマミシカが遠い記憶の下に埋まってしまった事は切ない・・・)
1日も経たずに産んだ・・・!!!!
(↑↑10月2日午前1時ごろ)
一方、最初に競り落とした1頭目の♀の方ですが、
暫らく姿を見ていません。
同居させていた♂すら死亡しており、順調な2頭目♀のマットの状態と比べると明らかに見た目が違うので、10月5日に暴いてみました。
あ~~・・・ 表層をスプーンで掘ると出てきました。♀です(★)。
案の定、マット内のどこにも卵や幼虫は居りませんでした。
・・・と言うかそもそも、全く産卵坑がありません。産卵しようとすらしていなかったんですね。
痛い・・・ツライよ諭吉さん・・・
セットが悪かったのか♀自身の問題なのか気になったので、
その場で蔵卵確認をしてみました。するとやっぱり・・・
お腹の中空っぽでした。
ハズレって本当に何も無いんだな・・・
こうして、WF1後継の望みは1ラインのみに託されることになりました。
で、その残りの1♀。希望の1♀。託された1♀。
あれからまた1回のセット替えを行ない通算4個目のセットに入ったのですが、沢山の坑道を掘った後ついに力尽きてしまいました。
この頃にはもう最初のセットには幼虫の姿も多数見えています。
ありがとう、
ハルマヘラから遥々遠い場所まで連れてこられて、
よくここまで頑張ってくれた!
2021年初め
それから結局2ヶ月経ってしまいました。
年末近くなるとカレンダー作ったり年賀状作ったりしてる内に他の事が出来なくなってたのが要因。
当時は、卵だ!幼虫だ!と1mm2mmの世界に目を凝らしていたのに・・・
(この初令幼虫 大きいナ~~)
産卵セットを組んだ時に、多少のシロアリが混入していたのですが、
割り出しの際にもチョロっと出てきました。
幾分数が減ったような気もしましたが、2ヶ月経ったこの時点では原因の把握は困難です。
割り出しの結果
【1回目のセット】
容器:1500ccブロー
産卵材:Nマット、シロアリ材&フレーク少々
期間:2020年9月8日~9月27日 18日間
回収数:3令♂×4頭 3令♀×11頭 2令×2頭 計17頭
初セットと云う事もあり、どのタイミングで親♀を次のセットに移せばいいか分からずに3週間近く置いていました。見えていた卵が数日後に見えなくなっていた(坑道を掘り続けていた親♀に潰された)事もあったので、もうちょっと早めにセット替えしても良かったかもしれません。
親♀を出して2週間経った頃(10月12日)に孵化した卵もありましたので、産卵し続けていたのは確定的でした。その間、消して少なくない数の卵が潰されたのではないかと思うと、勿体ない事この上ない。
【2回目のセット】
容器:デジケースHR-1
産卵材:Nマット、シロアリ材&フレーク少々
期間:2020年9月27日~10月1日 4日間
回収数:3令♂×12頭 3令♀×4頭 計19頭
2セット目はたったの4日間だけでしたが多くの幼虫が得られました。1セット目でスイッチが入ったのでしょうかね?
ただ、1セット目と比較しようにもかなり期間に差があるので、
2セット目がハイペースだったのではなく、先に書いたように1セット目は30も40も産んでたんだけど減ってしまった・・・と云う可能性もあり、結局真実は分からないままですね。
【3回目のセット】
容器:800ccガラスビン
産卵材:生オガ発酵マット(アマミシカ幼虫で使用済み)、
シロアリ材&フレーク僅か
期間:2020年10月1日~10月13日 12日間
回収数:3令♂×3頭(割り出し中1頭死亡) 3令♀×3頭 計6(-1)頭
わずか800cc(俗に世間で言ってるだけで実際は600ccくらいだと思う)ながら、7頭の幼虫が採れました。
最初のあたりでも書いたように、投入した直後には既に産卵していました。ただ、その後壁面ビッシリに坑道を掘ったにも関わらず、見える卵が2個から先へ一向に増えないので、2週間近くこのままにして様子を見ていました。
結局その後も卵が増えたような様子も無く、「セットが悪いのかな」と思い4度目のセットに移したのですが、これによって「その意味」を理解する事ができました。
【4回目のセット】
容器:2000ccブロー
産卵材:カブトマット(アクタエオン幼虫で使用済み)、
シロアリ材&フレーク僅か
期間:2020年10月13日~
回収数:0頭
前回のセットで地上に出ていた親♀を取り出して、今度は使用済みカブトマットへ。
2000ccとは言えこれまでで最も大容量、♀もストレスが少ないだろうと期待を込めて投入、坑道も見る見る内に出来上がっていきました。もはや何重丸あるんだろ?と云うくらいには丸い坑道がありました。
ところが、坑道は沢山見えていても卵が全く見当たらなかったんですね。
♀もいつの間にか死んでいて、回収数ゼロと前回セットの様子を併せて考えるに、
「持っている卵を全て産み尽くした」と言っていいと思われます。
結果的に、合計で41頭の幼虫を得る事が出来ました。
ちまちまと産んでいたからそんなに多くは採れてないと思ってたんですが、いざ合算すると充分以上の数が得られていたんですね。記事を書いている今になってこの数字に驚いています。
得られた幼虫達は、マットの在庫量に悩まされつつも全頭個別飼育。
120ccカップ、430ccカップ、800ccビンorクリアボトル、1400ccクリアボトルと、一切の統一感を排除した上に、置く場所もランダムに配置。
これじゃぁ数を把握できてないのも仕方がないでしょ?
2021年春
割り出しが遅れたせいか、僅か3ヶ月程度しか経っていないのにぞくぞくと蛹室のシミが容器壁面に見えて来ています。
ネブトは本来なかなか蛹室内を見せてくれないハズなんですが、小さなカップで管理する♀においては結構蛹や新成虫が見えていました。
そんな中、♂幼虫と見ていたボトルでも中身がちょっと見える状態で1頭が羽化していました。
もうしばらくの間外から幼虫が見えなくなっていたボトルも多数あったので、その「見えていた1頭」を指標として魅惑の♂成虫初掘出しに手を出してしまいました。
やはり初飼育となると、新成虫が羽脱するまで我慢できないんですよ。
まず、中身が見えていた♂のボトルを暴いてみました。
外からは、ケツ(上翅の端っこ)しか見えてなかったのでどんなカオをしているのか知りません。
ティースプーンでマットを掻き出し蛹室に近付いていきます。
やがてボリッと当たる繭玉の感触に、期待は高まるばかりです。
(奇形かもしれないと云う心配は一切していない)
おお、これが国内初(たぶん)のハルマヘラ産WF1か!!!
臨時特別給付金ありがとう!!
身体もしっかり固まっていてネブトならではの青みもでています。
3令で割り出したためにサイズはそれほど大きくなく、40mm程度。最大で50mm台後半になる種と考えれば結構小さめなのかもしれません。しかし兎にも角にも感動として大きかったのは新成虫♂が見られた事、そして何よりネブト系初羽化と云う新たな体験が出来た嬉しさ
活動前なので、しばらく観賞した後ボトルのフタを閉めそのまま棚に戻します。
この1頭目の美しい姿を見て欲望に火が点きました。
他の♂はどうなっているか見たくないワケがありません。
外からは見て分からないけど多分蛹室を作っているであろうと、スプーンを突っ込んでみました!
なにおめぇ赤くなってんだ。
調子に乗り過ぎました。
一旦冷静になりまして、もうちょっと待つべきかと思い留まる事にしました。
2021年夏
あれからさらに2~3ヶ月が経ちまして、♀個体は勿論の事、♂個体もいくつか羽脱してきました。
ワイルドの弱弱しさにはハラハラしていたので、飼育品の身体の力強さを見るとホント~に安心します。
脚を畳んでガチッと擬死した腹側の様子は、オオクワファンから見ても何かキュンとくるものがあるんじゃないでしょうか。
頭部のアップ。
画質がそれほど良いとは言えないのですが、シルエットだけでインパクト充分です。
芸術的な弧を持つこの大腮は、色々な角度から眺めたくなってしまいます。
また、西ニューギニアのレオポルディに比べると滑らかになる頭胸部の光沢もこの原名亜種の飼育を始めるにあたってキーポイントだったので、どのくらい違うかな? と思って(昔一度飼ったけど随分前の事だから忘れちゃったし)、某き〇こ園の飼育記の写真と同じ構図で撮ってみると↓↓
違いますね。(あちらの画像と交互に見比べてみると分かります)
光沢も違いますが、パッと見て一番分かりやすいのは頭楯の没入具合の違いです。
ホントにきれいなカーブの組み合わせでこのクワガタは出来てるんだなぁ~・・・
さて、割り出しの時点で♂と見られる幼虫は基本的に800ccのクリアボトルに入れたのですが、その800ccで羽化した最大はこの個体↓↓
45mm。他の800cc♂個体は皆40mm台前半でした。
WILDで買った時に見た♂のサイズが43mmだったので、それを上回るサイズで嬉しいです。ただ、初めての幼虫飼育だったので50mmくらいになるものと思ってました、甘かったですね。割り出し遅れでこの容器では、これが精一杯のようです。
↑↑でこの時、1400ccに入れたヤツが1本在った事を忘れていたので、
温室の奥からこれを見つけた時は瓢箪から駒が出たような気分でした。
期待の掛かるその中身ですが・・・
まだ地上に出て来た様子はなかったのですが、流石に羽化はしてるハズと思われるのでその場の勢いで掘り出し!
ノギス当てた写真を撮ってませんでしたが、48mm。
残念ながら大台の50は超える事が出来ませんでしたが、迫力は45mmのそれとは比べ物になりません。
5cmも無いのに随分と重く感じます。これがネブトの世界か・・・
大方♂個体も掘り出したので、各容器で羽化した個体別に並べて撮ってみました。
3~6mmの違いとは思えないほどのサイズ感がするのは自分だけでしょうか。
50mm超えたら、また違う虫に見えるんでしょうね。
次世代は勿論その領域を目指すつもりですが、明らかに容器サイズが影響しています。そうなると、F2幼虫の飼育スペースはきっと大変な事になるよ絶対・・・
そして、片や♀の方は、
WILDと同じ様な20mm程度の個体も居れば、30mm近い個体も居ました。
きちんと測ってはいないのですが、サイズは大体この2つのパターンに分かれたような印象を受けました。♀は120ccと430ccのカップを使ったのですが、その違いではないみたいなんですよね。
その後・・・
去年、WILDのハルマヘラ産プラティオドン入荷は数にして3回・オークションでは5件分の出品があったのは前回書いた通りですが、この7月にまたハルマヘラ便クワガタが入荷しプラティオドンも入ったとの情報が公開されました。
まさか今年も入るとは思ってなかっただけに目を疑いました。
別血統を確保するチャンスだと思い、業者がオークションに出品するのを心待ちにしていたのですが、いつまで経っても出品されず・・・
数日経って、既に終了していたのを見逃したか?と思い終了品検索してみたもののそれすら無し。出品前に死亡したのか小売店に卸したのか・・・、真相は分からないままですが別血統入手は諦めて、WF1のブリードに着手しました。
♂♀共に後食を開始していて、食べっぷりも見ていて気持ちが良いです。
よくネブトは「ゼリーで溺れる」なんて言いますが、ほんとにゼリーの中に浸かってる光景を初めて見た時は驚きますよ!焦らすよなぁ・・・
とっさに取り出してから「あッ!撮ればよかった・・・」と思った時の写真がこれ↑↑
ひとまず、1個だけセットを組んでみました。
親は勿論最大個体、1♂2♀♀でペアリングも込みで投入しましたが、今現在のところ上手くいってるようです♪♪
ここまでが、
現在に至るハルマヘラ産プラティオドンのほぼ全てです。
一昔前(いや二昔前?)は流通が少なく一部のネブトマニアしか飼っていなかった原名プラティオドンですが、最近は随分とよく見るようになりました。モロタイ産の本亜種は今や挨拶で配る名刺かのごとく、「知り合った人にとりあえず渡すクワガタBest 5」に入るような虫になってしまいました(個人的感想)。
ただ隣の島と云う違いで、片やタダ同然、片や5万円越え(WILDだけど)と云う理不尽極まりない残酷な虫になってしまった原名亜種ですが、魅力に溢れた虫である事は揺るがざる事実ですから、金額に関わらず大切に飼育し続けていきたいところです。
現在のところ国内には自分のところでしか累代されていないようですが、
いつか国内に広く出回る日が来るのかな・・・??