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日昆 採集記 【2021年】 ブログトップ

青森県産コクワガタ市町村巡り 2021年総集編 [日昆 採集記 【2021年】]

約10年前に始めた青森県産コクワガタ蒐集

ダラダラ続けていてはいけないという事で2020年には全身全霊で市町村攻略にあたりましたが、その翌年2021年もコクワにほぼ一本化して採集していました。

 【2020年には】
   ⇒ 2021-1-31『青森県産コクワガタ市町村巡り 2020年総集編』

シーズン通してコクワ「のみ」を狙う採集は体力的・精神的・時間的にかなり負担がかかるものですが、前年からの慣れがあったので2021年は多少は楽だったと思えます(麻痺しているとも言えますね)

「多少は楽」・・・とは言っても、
2021年のターゲットは、それ以前に何度も赴いていながら採集出来なかった難度の高い(と個人的に体感している)市町村ばかりです。実際、目的の♂成虫が採れるまでに2020年以前も含めて何度も通っています。


・・・と云う事で今回は、
昨年コクワ採集に行った市町村の内、新たに攻略完了(♂成虫自己採集)した所をまとめて書いてみます。

今回は、
採集に至るまでの過程
その市町村で採集する際の所感
を中心に書いていき、紹介する順番も時系列ではなく個人的な印象や難易度と云った要素を基に順位付けしてランキング形式にして書いてみます。

一応、目安的に★数5段階評価でも個人的難易度を表してみます。
あくまでも個人的な感じ方に基づいた評価ですが・・・

アクセス距離
その市町村へ行くまでの地理的距離です。青森市から出発した際のドライブ距離になりますが、遠い場所になるほど星の数が増えます。また、単に距離が長いかどうかと云う他にも、道中の交通量や経由地の複雑さと云った体力的・精神的負担も加味します。
先にも書いた通りあくまで個人的な評価ですから、悪しからず。

採集不能環境
そもそも、採集できる環境がないとコクワガタを得るチャンスは得られません。私有地、住宅地など、コクワの生息出来なさそうな環境が多いところほど星の数を多くします。特に、面積の狭い平野部の自治体ほど採集不可能な環境は多いです。

採集回数
達成までにかかった採集回数(その地を訪れた回数)が多いほど星の数は増えます。ただ、本人も正確に何回行ったか数えていないので、あくまでも記憶上での評価です。


・・・ちなみに、
去年の採集記事にあるルリクワガタやヒメオオクワガタは、コクワ採集以外の貴重な箸休め的イベントで、これ以外の採集はほぼ全てお休み状態でした。


〉〉2021年コクワガタ市町村巡り スタート!


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時限採集 60分前!! [日昆 採集記 【2021年】]

2021年の夏は去年に引き続き怒涛のコクワ採集に明け暮れました。
あれほど遠かったクリアマップも、気付けばもうあと1市町村! すでに夜も寒くなり夏が終わろうとしている今、採集のチャンスもほとんど残されていません。
つまり、まだまだコクワ採集の手を止める事が出来ないのです。


そんな状況で、カレンダーに視線を飛ばせば透けて見えるのはあの光景・・・

 あぁ・・・ヤナギを見上げたいナァ~~・・・

思えば、去年だって何度か林道を攻めたものの、大してヒメオオを見つける事が出来なかったんですよ。一応採ったには採ったのですが、既知産地のみで新規開拓は全部失敗。行った数も少ないし個人的にはそれほど充実感がありませんでした。さらに10月途中からは車の買い替えで、強制的に採集納めになった記憶が・・・もう遠い過去のように感じます。
今年に関しても、コクワ採集ばかりしている所為か、オオクワやヒメオオを採ってる周囲の人達に感化されて空しくなる事も時々あるんですね。ネットで情報収集していても、フォトジェニックかつ硬派なドルクスを趣きたっぷりに見せつけられる毎日。時期的にコクワも採り辛くなってきた事も相まって、焦りと空腹感が高まるばかりです。

 そんな秋の、ある日の話を書いてみます。





  9月7日(火)

当然ながらこの日は仕事。基本的にこのブログで仕事の話は書かないのだが今回の記事の便宜上書いておくと、自分が勤める会社の部署はその日その時々によって県内の各地へ赴いて業務を行なっている。

この日も、朝の時点で自分は「X市町村」へ単独で向かう予定だった。

本音として秋のヒメオオの姿を見たくて堪らなくなっていたのではあるが、コクワの最後の1市町村を投げ出したくない気持ちも強い。
さらにそこ以外にも、コクワの採集ラベルとして揃えておきたいエリアが多数残っている。
天候が変わりやすく夜寒いこの季節、コクワを採るにしても夜行って探したりライトを焚くよりは日中に探す方が近道だと考えると、スケジュールの立て方は完全にヒメオオとぶつかる事になる。
こうなると、仕事が休みの日はどうしてもコクワ採集を優先するためヒメオオ採集が出来ないのである。

ここまで書けばもう察しがつくが、
そうなるともう平日の仕事の合間に近場の産地へコッソリ潜り込みヒメオオに会いに行くしかないのだ。
なお、職種は山との関わりが一切無い為、仕事中のヒメオオ採集なんぞは当然〇ボてる事になるワケである。


「X市町村」か・・・
と云う事は道中のルートをちょっと変えれば
「Z市町村」のヒメオオポイントを見に行けるじゃん♪♪


思い付いたと同時にそれは確定事項に決まった。

今年、ライトにたまたま偶然飛んで来た個体は見ていたものの、まだ樹に付くヒメオオは見ていない。「Z市町村」のポイントは既に採集済みでレアでもない場所ではあるのだが、知ってる産地でもいいから兎に角林道でヒメオオを見たい一心であった。
(この記事出してしまっていいのかちょっと迷いが出てきた)



よし、気合入れるか!と俄然やる気が湧いてきたところだった。



しかし、
直後にそのやる気が圧し折られる事となる。



上司 「今電話が来たんだけど『Q市町村』のXXに行って頂戴。午後1時ね。」



ええぇぇぇぇぇぇぇ~!!!??
なンッだよ畜生ッッ!!!!!(声には出さない)

「Q市町村」の方でトラブルがあったらしく、優先順位の低い「X市町村」は別日に後回しにして急遽そっちの方へ対処する事になってしまった。

残念な事に「Q市町村」は「Z市町村」とは別方向。
「Z市町村」のポイントは、仕事中に寄り道したとしても業務への支障が少なく非常に助かる場所なのだ。自分の覚えている県内ポイントの中でも特に立ち寄りやすかっただけに、それがお預けを食らってしまうとなると、もはや絶望的とも言える。

上司 「あ、それと市内の△△からも呼ばれたから対応お願いね」

ウッ・・・仕事増えた・・・


やはり平日の仕事中じゃそんな上手く事が運ぶワケも無いと冷めつつも、
自分の頭の中はヒメオオモードのまま切り替えられなくなっていたのである。

「Q市町村」・・・
採れるとは思うものの、実はまだここではヒメを採った事が無い。
かと言って、その道中にも手軽かつ仕事のスケジュールに影響が無い採集ポイントは無い
しかし、外はヒメオオ向きの良い天気でここ数日雨も降っていないし、明日から天気がやや崩れる予報が出ている事を勘案すると、諦めるのは非常に惜しい・・・
やはりここは多少不安はあるものの、未採集ラベルの「Q市町村」でどうにか時間を作って山へ突っ込むしかない!
覚悟は決まった。
(これが全て仕事の話だったら・・・と自分でも思う)


最低限の採集道具(網と長靴)を見つからないように自家用車からこっそり社用車に積みこみ、出発した。


「Q市町村」の仕事は午後1時と決まっている為、まず先に市内の方から片付け市外へ。
市内では予想していたよりも時間が押してしまったものの、後が堪えるのできちんと昼食をとり、時間的に午前中の影響も無く午後1時を少し過ぎた頃に「Q市町村」の現場へ到着。
しかし、ハプニングや大きなトラブルは無かったものの仕事は予想以上に長引いてしまい、対応が完了するのに午後2時半近くまでかかってしまった。

何にせよこの日の仕事はとりあえずは終わったので、
目星を付けていたエリアへ真っ直ぐ向かう。

目的地は帰路の導線上から少し外れた方向にある為、そこまでの往復時間を含めるとあまり余裕は無さそうだ。
何より、その往復時間がどのくらいか予想がつかない事が一番不安である。
このエリアは本当の昔=免許取りたての頃に来たのが最後で、距離感もほとんど忘れてしまっている。
時刻は午後3時過ぎ、帰社するルートに戻るまでの時刻を逆算すると約1時間以内に山を下りていなければならない。
ついつい焦って未舗装路でスピードを出してしまう。

「Q市町村」のヒメオオは、記録こそ残っていないものの既に採った人が居る。
地図で確認すれば望みのある環境はたったの1ヶ所。その辺りにしか居ないだろうと思うほど環境は限定されている。
KIMG3103.JPG
少しずつ標高を上げていくとそれらしい雰囲気の林道になってきた。
ここ数日雨が降っていないだけあって道も乾いてて爽やかである。

KIMG3106.JPG
道路脇から迫り出した木々。小高くなった道路脇から生える根曲がりの木々を見ると、鼻息が自然と荒くなってしまうのだが・・・これもしばらくお預けを食らった所為だろうか。


当地の特徴的な植生。
KIMG3109.JPG
ヒバ


KIMG3110.JPG
ブナ

2種類の原生的な森林が入り混じり、自然度の高さが窺える。


KIMG3107_01_BURST1003107_COVER.JPG
いたる所に巨大なブナの腐朽木が立っていたり倒れていたり。
自然の循環の一部としてこれらの腐朽木がそのまま残っている様子は、純粋に景観として好感が持てる。どこぞの観光地とは大違いだ。幹の途中から容赦なく切断された立ち枯れが林立したあの光景など、自然としては本当に「不自然」でしかない。


地図を見ると、もう目的地周辺。
車を停め、長靴に履き替えて網を手にルッキングを本格的に開始。

日が傾き、風が時折さらりと抜ける度に肌寒さも感じられる。
雲が薄く掛かり空色は今一つなものの、久しぶりの感覚で若返ったような気さえする。

とは言え、あまり悠長にしている場合ではない。
時刻は既に午後3時半の折り返しに来ている上、会社のケータイが圏外になっている。長時間圏外だともし電話が来た場合、連絡がつかない事で所在を怪しまれてしまう・・・!


焦りからか、どこにでも居そうな環境にもかかわらず焦点を絞れない。
そんなはずは無いと言い聞かせるも、シーズン初めで目が慣れていない事もあるのか目に留まる枝が無い。


それから時間にして僅か2~3分だろうか、
噛み痕が付いた木を見つけた。
KIMG3113.JPG
強烈だ・・・!
やや古いように見えるものの、大量の噛み痕である。

しかし、目を凝らしても噛み痕以外の物が付いている様子は無い。

まさか・・・誰か来ている・・・!?

すぐ変な想像に走ってしまうのも被害妄想が過ぎると思うが、
最近は肩透かし的に新しめの噛み痕が多くても本体が居ない現場に出くわす事も珍しくないので、仕方のない事なのかな・・・と諦め混じりに次の木を探す。







その直後、午後3時30分
失望してからおよそ15秒程度後の事だ。

KIMG3124.JPG
写真中央、枝打ちされた大変不格好なヤナギを見上げると・・・


KIMG3115.JPG
まだ短い上の枝に・・・


KIMG3116.JPG
居た。
肉眼で見てもこの写真のような感じで、曇り空が反射して虫も枝も真っ黒にしか見えないが、枯葉でも浮いた樹皮でもない。
はっきり視認出来ているとは言えないが、目が慣れているからかアカアシでもノコギリでもなく、これはヒメオオであるとこの時点で確信した。


KIMG3118_01_BURST1003118_COVER.JPG
枝の上に乗るような形で付いている為こそぎ落とせないが(下や横に付いていると剥がし易い)、兎に角網を伸ばしてみる。
さぁ、平日の朝に見た夢を遂に叶える時が来た!


・・・お!入ったッ!!!

・・・ん? まだ1頭上に付いてるのか?

・・・網先当ててるのに落ちないな~・・・

ん~~・・・いや、違うな、あれは剥がれた樹皮か!


 ポロッ・・・   パチン

あっ!!! やべッ 網から落ちた!!!!


KIMG3119.JPGしかし安心、木の根元の下草は薄く、落ちた場所は砂利敷。
もう逃げられないと諦めてくれ・・・



2021ヒメオオクワガタ.JPG
ああ・・・この久しぶりの感覚。
コクワガタよ、・・・浮気してすまない。

2021年の秋もひとまずこれで最低限のモノは見られた。
39mmと小さい♂だが、未採集市町村だったので充分である。

採れるかどうかで焦ることも無くなったので、
大型更新をすべく追加個体を探しに行く。
(もっとも、時間が無い事に一番焦らなければならないのだが・・・)


しかし、
その後噛み痕もあまり見つからず、木自体もだんだんそれらしい種類も見られなくなってきて終点に辿り着いてしまった。この時点でもう午後3時40分を過ぎていた。
急いで来た道を戻り、先ほど見つけた噛み痕だらけの木々に答え合わせとばかりに蹴りを入れてみたが、虚しくも落ちてきたの葉っぱだけであった。

結局、この1頭が最初で最後の獲物となった。
青森県ヒメオオクワガタ.JPG

車に乗り込み、急いで林道を引き返す。
保管用ケースを忘れてしまったので、網の中に虫を包んだまま帰路を急ぐ。

山を下りた時点で、既に時刻は終業時刻前の1時間を切っていた!

普段は、この「Q市町村」から会社まで掛かる移動時間はほぼ1時間なのだが、
すでに夕方の帰宅&帰社ラッシュが始まっている街道を通ってもその通りにならない事は明白である。
自分のいる職場の部署は、残業が決まってない限りは終業時刻に全員揃って退勤するのだが、今日に関しては特に誰も予定残業が無い為、仮に終業時刻を過ぎて帰社すると全員を待たせる事になって迷惑を掛けてしまう。

「一か八か・・・賭けるしかない!!」

普段のルートでは絶望的だと悟り、
いつもは通る事の無い農道をひた走る博打に打って出た。
(今回の記事で、社会人としてアウトな事を何度犯しているのだろう・・・)

前のめりでハンドルを握り、
〇〇〇〇を〇〇〇〇し、
〇〇〇〇を〇〇して〇の〇を〇〇〇〇て、・・・いやもう←こんなの書けるかッ!


これ以上近道の出来ない市内に入るとやはり渋滞。
時計にビクビクしながら少しずつ会社へと近づいていく。
あと5分・・・あと4分・・・あと3分・・・





残り1分!!! 会社に到着!!!
セーフゥゥゥゥ――――!!!!


自分 「戻りましたお疲れ様です~」

上司 「あァ、ハイお疲れ様~・・・」

自分 「?・・・あれ・・・?」


帰り支度していない・・・
と言うか、なんか本日業務を終わる雰囲気ではない。

上司 「今日中にやっつけとかないといけない仕事がさっき入ってきたのさ・・・」

同じ部署の他の社員がせかせかと仕事を続けていた。



これは・・・


自分だけ終業時刻ギリギリで帰ってきた分、  
だいぶ気まずい・・・




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最果ての採集 [日昆 採集記 【2021年】]

  7月11日(日)

2021年、夏の採集シーズンが始まって既にひと月は経過しただろう。
梅雨明けした南日本だと、「ここからがいよいよ本当の夏」なのかも知れないが、暑さについてだけ言えば青森は今頃が夏の盛りである。この数日で刹那のピークを迎え、夜の気温からズリズリと下降し秋の季節に変わっていく。

現在、今年の採集の主軸である青森県産コクワガタ採集は過密気味のスケジュールで進行中である。コクワ相手とは言え県内全域ともなると、体力的にも時間的にも消耗が激しい(あと金銭的にも)
故あって今年の内に全ての市町村を採りきらなければいけないのだが、まだ8ヶ所ものエリアが残っている。


この日、自分はその残された8ヶ所の未採集エリア・・・ではなく、
市町村単位としては既にクリア済みだったものの「ここのラベルは採っておきたい」と云う考えのもと、県内某所へ向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


方。
今シーズンにしてようやくしっかりめにライトトラップを始める事もあって、準備では慌てた。今回は発電機ではなくHIDハンディライトを使う為、充電済みのバッテリーを確認し、三脚とホルダーを確認、撤退作業用の箒も忘れずに! LEDライトと替えの電池は持ったか!? 熊スプレーも抜かりなく。虫用のケースに網もきちんと積んだな。
おっと、もう17時20分
これ以上チンタラしてられないと、車のキーを回す。
(「キーを回す」って言うのもアレな時代になってきたのかな)

時折フロントガラスに微かな水滴が付くものの、本降りになる様子は無い。
KIMG2709.JPG
道中通りすがった野辺地湾での空の様子。
晴れそうもなく、かと言って雨も降らなそうなほどほどの曇り具合である。これからライトトラップに行く身としては、とてもいい天気だ。

そんな良い気分のドライブ中ではあったが、ライトトラッパーの意識が少し戻ってきたのか、ある事を思い出した。

・・・温度計を持ってくるの忘れてた。



てここで、今回の目的地とその理由について説明する。

上の画像では野辺地町を経由した事が判るが、この日の目的地はむつ市である。
ここのコクワガタは、先月末に訪れており旧 むつ市内にて既に自己採集済み。
しかし如何せんこのむつ市と云うのは、先の平成大合併の際に近隣の町村を併合しており、広大な土地を半島内で占めている自治体。市街地近辺でたかだか1・2ヶ所採った程度では、個人的に満足とは言えないのである。

そうなると、コレクションとしてラベルの分散を図るには編入合併された旧 大畑町・川内町・脇野沢村へ赴く事になるのだが、この3つの地区の内、大畑と川内については下北採集の道中通過する事が比較的多いのに対して、脇野沢は半島の西南端に位置しており交通の要所も無い為あまり行くことが無い。
そこで今回は、この脇野沢を狙ってみようと考えたのだ。

さらに、その脇野沢の中でも特に採ってみたい地区があり、当初から狙い目として設定していた。

九艘泊と云う地区を知っているだろうか?
「くそうどまり」と読む。船が9艘ここへ泊った(難破か来泊かは諸説あり)事を由来とする説や、アイヌ語が元となったとする説もあるが確固たる証明は無い。
県内の者でも、地元の方やある年代以上(60代以上?)の方、魚関係に明るい方以外は聞き馴染みが無い場所かもしれない。

以下、地図で指し示すと矢印の部分が九艘泊である。 長尺青森県図.png
下北半島の西南端、陸奥湾に突き出る海岸部の地区であり、この地区がむつ市最奥地・行き止まりの集落なのだ。

地図をもう少し拡大すると、その辺鄙さが分かってくる。
kusoudomari.png
人の生活圏として下北半島の中心となっているむつ市街地から路線距離を測ってみたところ、他に人が住んでいる中では奥地に位置する
川内 湯野川地区(下北半島のほぼ中央部)
脇野沢 源藤城地区(同じ脇野沢の、山方面にある最後の集落)
よりも遠かった。さらに言えば、半島最北端の大間町中心部への距離と同等でもあった。
距離に比例して現地へのアクセスも時間を要し、フェリーも脇野沢へ通っているが基本的には自動車移動で、むつ市街地からでも1時間、青森市からとなると丸3時間も掛かる。 間違いなく、現在のむつ市内では「最果て」と呼べる集落だろう。
この、「最果て」だとか「最奥地」などと言うべき土地にロマンを感じてならない。これこそが、今回の採集地選定の理由であり、これは大間産や佐井産、津軽半島の三厩産あたりについても言える事である。

この地区については、民俗調査として青森県立郷土館が詳しく調べており、1979年に「九艘泊・蛸田の民俗」調査報告書を刊行している。
これによると、歴史的な面ではこの村の存在を示す資料は17世紀中盤頃からあり、19世紀は戸数が10前後で昭和後期あたりは戸数も増えて人口も200人近く居たとの事。当時から今も変わらず生活の中心は漁業と密接に関わっており、地区のほぼ全ての人がそれに携わっていて、行事や伝承なども海や漁に関連するものが多い。
地理的には、山の斜面がそのまま崖となって海に落ち込むような中で、小さな入江付近の僅かなスペースを居住地として利用している。その為、集落自体は非常に狭く、農業を行なうような一定の広さの土地も無い。なお、九艘泊地区はすぐ手前の芋田地区も分村扱いとしており、現在ではこの2つの両方が九艘泊と住所表記されている。
そして交通についてだが、前述の理由から、なんと1960年頃になるまでまともに歩いて通れる道路が存在しなかったらしい。それまでは、船を使って接岸するか、急峻で勾配のきつい崖山を徒歩で越えるか、あるいは潮が引いた時に海岸の岩場を伝って歩くのみだったと云う。現在では、九艘泊へは海沿いの道路の他に、山林を拓いて七引地区からの細い道路も延びている。


中、むつ市街のスーパーで夕食を買い込み、脇野沢へ急ぐ。

この頃にはもう周囲は暗くなり、湾を挟んで対岸の野辺地や蟹田の方には点々と灯りが見えていた。
海岸線をひた走ること1時間、川内を通り過ぎ脇野沢中心部を通り過ぎ、遂に目的地へ辿り着いた。


この地区へ来たのは今回が2度目。
先月のコクワ巡りの時に初めて訪れたのだが、本当に小さな集落である。東通の尻労に行った時もそうだったが、行き止まりのこういった環境の村に来ると、何か一言では言い表せない感動を覚える。
特に驚いたのは、流石は漁師町と言うべきその時間の感覚だ。その時は午前3時に村へ到着したのだが、既に港には大勢の男たちが仕事を始めていたのである。中には村外の遊漁者も居るようだが、家々の明かりが点くよりも先に村の一日は始まっていた。


話が逸れるが、前回来た時に一瞥しただけでよく読まなかったものの、ちょっと気になっていた物がある。
今回はきちんと確認しようと思い、道路の案内標識をよく見てみた。

KIMG2725.JPG
「Kusodomari」。
・・・いやいや、しかしこれもまた明らかな間違いではないらしい。地元民ではないジサマ(まぁ、親戚のおじさんなんだけど)が、半ば罵倒気味のイントネーションで「クドマリ」と発音していたのが正しいのか判らないものの訛りが強いのは実際その通りで、先の調査報告書でも「ウ」を抜かしている発音表記があった。
とは言え、やはり聴き慣れないと下品さが拭えない。


時刻は既に20時20分
日没から1時間が経っており、暗くて風景写真も撮れないので一直線にポイントへ向かう。


イント自体は前回の下見の際に目星を付けていた場所である。ただしこの九艘泊、いくら田舎の山とは言えどこでも簡単に採れそうな環境ではない。
ヤナギ、ミズナラなどの樹液に居るのはどこもアリぐらいのもので、目を見張る虫は居ない。勿論、山奥へ入っていけば採れるだろうが、険しい斜面を夜に歩く危険、多産するクマとの遭遇、そしてこの付近は下北半島国立公園の特別保護地区も一部隣接しているなど、探せる範囲は地図で見る以上に狭い。
さらに、今回は九艘泊ラベルの採集が目的。場所にもよるが集落から200~300m離れると地名が変わってしまう厳しさもある。
そして勿論今回はライトトラップである為、地元の人の迷惑にならない場所で行なう事も前提としてある。

ku-1.png
20時30分過ぎ、いよいよ点灯。

ジワジワと明るくなっていくライトの先には、やや薄っすらとガスがかかっているようにも見える。
温度計は無いが、脇野沢ではアメダス観測もされているしケータイに幸い電波は入っているので問題は無い。時折風は緩く吹くものの、風が吹きやすい海近くだと考えると今日は運が良い方だろう。

エゾハルゼミなどを筆頭に、少しずつ虫が寄ってきた。
こういう慣れない土地に来てライトをやる時、ガの種類や状態を見れば時期の早い遅いが知れて便利なのだが、残念ながらその知識が無く見立てが付かない。とは言え、飛んでくるガはオオミズアオなども含めどれも新しい個体ばかりで、八甲田やその他の地域と比べても季節が遅れているように見えた。


雑虫を一通り眺め終えたところでクワガタの飛来第1号を発見。
ノコギリの♀だった。実は2021年ライトトラップ初めてのクワガタである。感動は無いがひとまずクワガタが来てくれたことに安堵し、この♀はケースへ避難。

続いて、この地の代表格と言えるミヤマが飛来。♀である。
この感じから、ミヤマは今日珍しくないだろうと思いその場へ放置。

それからミヤマ♀の2頭目が来て、今度は♂が上から墜落してきた。
毛も揃っていて綺麗な新物である。無論こちらは、ケースの中へ。


その後も多少間隔が空きつつも1頭また1頭とミヤマは飛んでくるものの、本命が来そうな気配は無い。
何しろ、最初に飛んで来たノコギリでさえその後の追加は無く、アカアシも来ていない。

ku-3.png
甲虫のシルエットが見えて「次こそ来たか!?」と思えば、やっぱりミヤマ。

しかも、飛来数が少ないので不安は増すばかり。
バッテリー1回を使い切った時点で、クワガタは総数でまだ2桁も来ていない。3回分のバッテリーが無くなれば強制終了だ。


灯開始からおよそ1時間半ほどが経過した。
網とLEDライトを手に持ち、ライトの脇でただただ山肌を眺めて立ち尽くしている状態。横には、ひっくり返しておいたミヤマ達が5~6頭並んでいる。

時刻はいよいよ22時を回るかというところ。
飛来して着地する度にパチパチ音を鳴らしていたミヤマとは、違う何かがいつの間にかひっそりとライトの前で静止している事に気付いた。
パッと見た瞬間、♀だが何かちょっと雰囲気が違う・・・





ku-2.png
はッッ・・・!!!!!!

それまで何の手応えも無かったので、「やっと来た」と云う嬉しさの前に「えッ?コ、コクワ!?」と戸惑いにも似た驚きが強かった。

その直後に湧き上がってくる達成感・・・
コクワガタ!! コクワガタだ!!!
♀1頭で大興奮。写真を撮る手もブレまくる。
本土産コクワを採っててこんなに喜ぶ人もそう居ないんじゃないだろうか。
うっかり手から滑って草むらに落とさないかヒヤヒヤしつつ、ここまでの道のりはコイツの為にあったのかと思うとケースにしまうのさえ惜しく思えてくる。


その後、♂も来てくれないかと20分ほど待ったが叶わず、
帰省時間(3時間)も考えてそこで終了。

気が付けば無風になっていて、空は雲が抜けていた。

結果、はっきり計数していないが飛来したのは

・ノコギリ:♀1頭
・ミヤマ:♂2頭 ♀8頭
・コクワ:♀1頭

コクワが1頭でも採れれば目的達成なので満足だが、通常の感覚からすればだいぶ寂しい結果と言えるだろう。
たとえ気象条件がこの上なく良好であったとしても、植生環境その他の要素の問題が有り大して成果があがる場所ではないと云う事を理解願いたい。だからこそこうしてブログに書いたのであるが。

なお、この日の気温データを残しているのでおまけで載せておく。
脇野沢 気温.png
前日まで2日間ほど気温が上がらず18℃台で、一時はまとまった雨も降り風もやや強かった。そこから天候が回復し、日中は日差しが強く昼には24℃台に上がり風も止んできたと云う流れ。採集時の気温は20℃程度だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


の後、脇野沢の別の地区で♂1頭を拾い、脇野沢ラベルのコクワを2つ土産にして帰宅した。

KIMG2726.JPG
帰りの道中もコクワ探しで寄り道してしまい、家に着いたのは朝4時だった。





採集中はブレまくってしまったので、持ち帰った九艘泊の貴重なコクワガタを改めて。
ku-kokuwa.png
体長27mmの一般的なサイズ。上翅会合線の帯がやや広い・・・のはただの個体差だと思うが、なかなかチャーミングである。

正直、貴重なラベルなので産卵させようかどうか悩みどころではあるが、1週間も経てばきっとそれどころではなくなるだろうから、やっぱり無難に標本でいいのか。






 ・・・それと、最後にもう一つ悩みどころが。




kusoudomari-miyama.JPG
ノコギリは帰したが、ミヤマは結局1ペア持ち帰ってきてしまった。
やはり九艘泊ラベルは個人的には次回がもう無いと言ってもいいくらい貴重な物なのだが、この後〆てコクワの件が落ち着くまで放置される事になるだろう。


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