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カブクワ俗語辞典 [時事・話題・雑報]

どの職業・学問・趣味にも、その分野で独自に使われる言葉があります。

いわゆる「専門用語」「業界用語」と云うもので、昆虫分野においても少なくない数の専門用語が存在します。
さらに、「専門用語」と言うほど厳格に認められたものではないものの、いつの間にか使われはじめそれが一般に浸透し用語化した言葉もまた、数多く存在します。
昆虫に関する分野にもそんな言葉が色々あるとは思いますが、その中でもカブトムシ・クワガタムシに関連するものについての数は、他を圧倒しているのではないでしょうか。
時代も令和に変わって久しい現在。趣味としてのカブクワ採集・飼育の歴史も“浅い”とは言えないくらいに年数を重ねている今、この趣味を深く楽しんでいる人達はその年数も経験も実に様々で、時代と共に生まれて廃れていく言葉に理解が追い付かない場面も出てくるのではないかと思います。

昔は一部のホームページやコミュニティーサイトなどで「用語集」などと云ったページを設けてあり色々と閲覧できたりしていたんですが、ウェブサーバーのサービスの終了により現在はそうしたホームページが消滅していく一方であり、まったく寂しい限りですね。
そこで、今回はそうした言葉を「俗語」と呼称しその種類や意味をまとめていきます。

さて、その「俗語」をどのくらいの範囲・基準にまで広げて取り上げるかについてですが、これは自分の主観で選定すると云う事で、厳しいツッコミは無しでお願いします。
ただ、冒頭に書いたように、一般的に業界専門用語として使用される語『WF1』『頭楯』『灯火採集』『羽化不全』『生オガ発酵マット』みたいなレベルのものは取り上げません。また、範囲としては、主に飼育と採集に関わる分野をメインに取り上げます。
取り上げる語の中には、時代と共に最近多用され始めた語や最近あまり使われなくなった語、一部の狭いコミュニティでのみ使われる語、厳密には別業界で生まれたような語も含める予定ですが、今回の記事はどちらかと云うと「ネット・SNSでの情報収集の際の読解補助」であって「この趣味を長年続けている人が在りし日を懐かしむ」為に作ってはいませんので、『DAIN』みたいな完全な死語は態々入れません。

ちなみに、自分もこうした俗語を使う事もありますが、好まない語も多いです。「通になるにはこうした語を常用せよ」と云う意図は全くありませんので、くれぐれもこれらの言葉を使う際にはご自身の責任の元で発信いただきますようお願いします。


なお本記事は今後、「それらしい」語を見つけたり、思い出したりした時に随時加筆・訂正していきたいと思います。

・読みは50音順です。
読み 説明
いい虫 いいむし 通常、読んでそのまま解釈すれば「魅力的な虫」もしくは「益虫」と捉える語だが、時折「高値で売れる虫(種)」の事をやんわりと表現する為に使用しているように見受けられる場合がある。
色虫 いろむし オレンジ・黄色・赤・緑など、黒一色ではない種のクワガタ全般を指す。また、そうした種が多く含まれるキンイロクワガタ属・ノコギリクワガタ属・ホソアカクワガタ属等が含まれ、飼育分野において「ドルクス属以外」という意味合いで表現する用途で使われることが多い。
対義語:黒虫
egg えっぐ 今はあまり見かけないが、FC2等の飼育系ブログで常用されており、読んで字の如く「卵」を意味するが、産卵セット割り出し時の卵の個数を表す単位としてよく使われる。何故普通に「〇〇個」と書かないのか、甚だ疑問である。
追い掛け おいがけ 飼育において、既に交尾が済んでいる(と思われる)♀成虫に、さらに♂成虫をあてがって交尾させる事。
救出 きゅうしゅつ 読んで字の如くで、「昆虫生体の安全を図るためにある場所から別の場所へ移動させる事」であり、飼育分野と採集分野で少し事情が変わっている。
①飼育において、生育に不適合な環境・このまま放置すると生命の危機にさらされるような環境から取出し、別の飼育環境・餌に移す事。
②採集において、このまま放置すると生命の危機にさらされるような環境から取出し、採集もしくは逃がす事。中でも、オオクワガタ採集において材割採集時に倒木を割って採集する際にこの語が隠語的に用いられる。特に雪国の場合など、乾燥気味の腐朽木を好むオオクワガタは、入っている木(立ち枯れ)が倒れると春の雪解け水の影響によって溺死(ひいてはその腐朽材にいる個体が全滅)する危険性が高く、そうなる前に倒木を割って幼虫を採集すれば、溺死の危機から救い出す事になる。昨今はオオクワガタの材割採集に対する眼差し(批判)は厳しくなる一方であり、「採集・採る」ではなく敢えてこの語を使うのは、採集の正当性を説明する意図も含まれているのではないだろうか。
(しかし、ここから先はあくまでも自分の所感であるが、最近この語がオオクワガタ材割り採集の際に無分別に乱用されているように感じる事がある。つまり、倒木か立ち枯れか関係無く材割りの免罪符のようにこの語を使っているきらいがあるのだ。確定的ではないものの、「救出」したオオクワガタだとアピールする為に立ち枯れを一度切り倒してから採集して写真を撮ったように見える物もその中には見られた。自分は材割り否定派ではないが、普通に「立ち枯れを割って採集した」と言えばいいものを、善行ぶった行為にすり替えているように見えてしまい悪印象を抱いてしまう。)
関連語:パトロール
クレクレ くれくれ 主に飼育分野に使われ、他人から無料で生体を貰いたがる事(人)を指す。また、そういった人を指して「クレクレ君」と呼称する。基本的には、嫌悪する対象に使われる語。
黒虫 くろむし ①前出の「色虫」と対照的に、体色が黒一色のクワガタを指して言う事が多く、「ドルクス属全体」を指し示す意味合いが強い。
対義語:色虫
②材割り採集において、採集された個体が「成虫」だった場合にそれを指し表わす語。幼虫より出てくる確率が低いので、いわば当たりクジにも近い意味合いがある。
撃沈 げきちん ①飼育において、(特に初めての飼育種で)産卵させようとしたものの失敗してしまい、なおかつ親個体も死なせてしまう事。
②採集において、その回の採集行で狙ったものを採る事が出来ず終わりを迎えた事を言う。

どちらも、自分に対して自虐的な意味で使い、昆虫分野以外でも散見される表現である。ただし本来は、「敵の戦艦を攻撃して沈めること」でありどちらかといえば相手側に対して使う言葉である。ちなみに、自分の場合は以上の理由から、同じような意味ではあるが敵味方特に関係無く使える「轟沈」という語を使っている。
御神木 ごしんぼく 採集において、特定の昆虫が付いている確率が周囲に比して特に高い樹を指す。言葉の印象から大木を想像しがちではあるが、特に樹齢や幹の太さは関係ない。
自力ハッチ じりきはっち 飼育において、羽化した新成虫が成熟し、自力で蛹室から出てくる事。略して「ハッチ」等と書く場合もある。自前の蛹室から出てきた場合に限られ、人工蛹室で羽化した個体には通常使わない。
同義語:羽脱
水牛 すいぎゅう 日本産ノコギリクワガタの♂の大腮(大アゴ)の歯型で、大歯型(長歯型)の事を指す。最近は「水牛型」という風に、型名のように使用される事もある。元は全国に数ある古いローカル表現の一つ(?)だったが、現在は全国的に多用されている。
スーパー大歯 すーぱーだいし クワガタの♂個体の大腮の形状で、発達が限界近くまで達したあたりで特定の内歯(多くの場合、最大内歯)の途中から別の小突起が出現したもの(またはその個体自体)を指す。吉田賢治氏がこの語の生みの親とされ、具体的にはアラガールホソアカクワガタなどでこうした個体が出現する。大型化した際に限定的または偶発的に発現したような種にのみ使用される語で、種として「必ず」内歯から小突起が現れるような場合にはあまり使われない。
即ブリ そくぶり 「即座にブリード可能」の略。成虫を譲渡・販売する際に、その個体が未後食・未成熟・休眠中ではない事を一言で表せる。「即ブリ可」と表記される場合もあるが意味は同じ。
同義語:成熟個体
タコ採れ たこどれ 採集において、期待以上に多数の個体が採れた状態を表す。かつて有名だった採集用品の名前にあったように、特に材割り採集で使われる事が多い印象の語であるが、特定の採集法に限らず現在使われている。
また、飼育時に多数産卵した場合にはこの語は使われない。
対義語:ボウズ
着弾 ちゃくだん 荷物が届いた事を指す語。厳密にはカブクワ用語ではないみたいだが、他のブログを読むようになって初めてこれを目にした時「は? 何その表現?」と思ったし、正直今でも違和感があるので取り上げた。
ニョロ にょろ 「幼虫」を表す語。また、割り出しの際に幼虫の頭数の単位としても使われる。
爆産 ばくさん 累代飼育において、産卵セットから期待以上あるいは管理能力を超えるほど多くの卵を産んだ事を表す語。「多産」の上位語として呼称される場合が多く(本来は「多産」が正しい)、使う人によって「100頭以上採れた時だけ」などと決めている場合もあるが、数に関して明確な線引きは無い。
パトロール ぱとろーる ①「警察官が地域の異状がないか見回る事」や、他に「マナーの悪い採集者、無秩序な採集行為を行なう人がいないか見回る事」などを表す語。

以上は通常の意味ではあるが、以下の様な意味でも使われる場合がある。
②一箇所または複数箇所の、既知の採集場所(主に自宅近くなどのよく立ち寄るポイント)の見回りを行なう事。採集目的の意味も含むが、単に環境の異状がないかを見に行く場合を指す事が多い。
③前出した『救出』との兼ね合いで使われ、主に「倒れてしまった立ち枯れ(オオクワガタが入っていそうなもの)が無いか見回る事」であるが、「オオクワガタの材割り採集」の隠語として使われる事がある。
羽パカ はねぱか 幼虫飼育において、羽化個体の上翅が会合線に沿ってきれいに閉じず隙間が開いてしまった事を表す。また、上翅はきちんと閉じたが下翅が畳めずに不全を起こした場合にも使われる事がある。
B品 びーひん 流通時、脚・触角・外骨格の一部が欠損した個体に当てられる記号。昔から一般的に認知されている語であるが、欠損状態によってアルファベット順に細かく分ける場合もある為ここで取り上げた。基準は人によってまちまちだが、個人的な感覚としては以下の通り。
「A品」:一般に言われる「完品」と同義。体表の大きな傷・各部の欠損が無い状態。
「B品」:体表に大きく目立つ傷や、脚・触角が1~2本欠損した状態。
「C品」:欠損箇所が多数有り、もしくは、生体だが非常に弱っている状態。
♀単品 めすたんぴん 読んでそのままの意味だが、「♀単」などと表記していると知らない人からは何の事か分からない為取り上げた。流通上の表記で、♀個体1頭のみである事を示す語である。♂個体1頭のみである場合は「♂単品、♂単」と表記する。特に通信販売だと、商品自体は♀単品でも写真が♂の参考画像になっていたりするので、購入の際にはこの点をよく確認する必要がある。
露天掘り ろてんぼり 観察しやすくする、壁面の崩落を防ぐ等の目的で、蛹(前蛹)のいる容器の中身を掘り出して、蛹室の上面を開口する事を指す。ただし所感として、蛹室を掘った後にそのまま蛹(前蛹)を取り出してしまう場合や、既に成虫に羽化している場合には使われない。


書き終わってみれば結構少ないものですね。それに加えて、結構遠慮して書いたので個人的にはだいぶ薄味になってしまったと感じます。本心では今回もっと毒を吐きたかったところですが、前々から書いてみたかった内容なので今はこれで満足です。
中には、「いやいや。そんな言葉どこで誰が使ってるの?創作お疲れ様ー」とか「認識間違ってませんか?」とか色々ご意見はあるかと思います。自分も、書き方が間違ったり誤認する表現になっているところもあるかもしれないと思いますので、時々読み返してみたいと思います。

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