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時間を見つけて修正しています。お見苦しい記事も少なくない点、予めご了承ください…

勝手に! 製本計画 [時事・話題・雑報]

2023年7月12日。ある1冊の本が出来上がった。
この本の存在を知る者はたった2人だけ、・・・のつもりだった。

この本が完成の日を迎え、それまで辿った足跡を顧みるとそれはもう既に、
途方も無い道のりを歩き続けた旅の記録にも等しくなっていた。

それを記事にしないのは勿体ないと、
何とも惜しくなってしまい急遽記事を書く事を決めた。
本記事は、その本の制作に初めて挑戦した悪戦苦闘の記録である。





半年以上前、たしか冬の時期だったと思いますが
処分予定だったコピー用紙を引き取ってきたと云う身内から、その一部を押し付けられ貰ってきました。
一部と言ってもそこそこ量があり、知り合い各所にお裾分けしてどうにか数を減らしたのですが・・・

B5用紙。1箱2500枚。

多いです。
A4サイズならばそれなりに使う用途も考えられるのですが、一般宅でB5サイズのコピー用紙には用途を見出すことはほとんど出来ません。
KIMG6242.JPG
↑↑1包み500枚入りでそれが1箱に5包入ってます。
(1包はもう取り出して使ってる最中です)


このB5用紙の山を見ながら、
以前からやってみようかと密かに考えていた「計画」の実行を決心しました。



その「計画」とは、
WEBサイトの書籍化。

長期間WEBサイトをレンタルサーバーで運営していると、ブログサービスの終了=ブログの消滅が心配になってくるかと思います。WEB関連の知識が豊富な方は最初からそんな心配をするようなところを使わずサイト運営しているものだと思いますが、自分のような半端者はたまたま見つけたレンタルサーバーで安易にブログを創設してしまい、ブログが終了・消滅してしまう危険と背中合わせで戦々恐々としていたりもします。・・・いや、自分だけかな?

そこで、いつか来るかもしれないその日を迎えてしまう前に、内容をアナログ媒体にインポートしたいと考えていたのです。

一応、ここのサーバーにも『ブログ製本』のサービスがあるのですが、料金面やデザイン面でも不安はありますし、現在までに書き溜めてきた700以上の記事――しかも長文――を紙に印刷するって事はページ数も生半可なものではありません。
そもそも、このブログの製本化って無理があるよなぁと悟り、一つの結論に行きつきました。




そうだ、
ファーブルハウスの記事を本にしよう!(?)

鈴木店長もWEBサイトを開設以来、様々な内容を書いていましたが現在は更新もしなくなって長期間経っている状況。現在のサーバーのプラン運営では下手を打てばサイトの消滅もあり得ます。ついでに言うと、鈴木店長も「超」のつくアナログ人間。

このサイトを製本化してプレゼントするのはどうだろう?
と思い至りました。

そうなると、まずは本人への許可取りに行くところではありますが、
「・・・ちょっとグレーではあるけども、サプライズにするか・・・」
事後承諾と云う事に決めました。





さて、ファーブルハウスのサイトを書籍化するにしても、どこまでの範囲を製本するべきか考えました。
普通に考えれば全部コピペすればいいんですが、【新着情報】とか今さら読んでも無意味でしょうし、【特定商取引法に基づく表記】とか【お問合わせ】のページなんてのも、本人に渡す手前必要ありません。
やはりここは、読み物として充実度が高い
【飼育と採集の知恵袋】
【店主のひとりごと】
の2つが良いだろうと云う事で、2月下旬に着手しました。



製本作業内容に入る前に、今回使用した材料・道具をまず列記します。

・パソコン、プリンター(インクジェット式)
・コピー用紙(本文用)B5
・マット紙(薄手 写真用)A4
・マット紙(厚手 表紙用)A4
・カラー用紙(遊び紙用)B5
・手貼りラミネートフィルム A3
・テープ糊、製本糊
・平板(背表紙用)
・大型ホッチキス
・作業板、カッター、定規 等



まず、物は試しとファーブルハウスのページをそのままブラウザの印刷にかけてみましたが、ページに無駄な余白が出来てしまう事や、「スペース改行」の影響で文頭の位置が大きく下がったり変な所で大きく間が空いて滅茶苦茶になってしまいます。これでは、印刷したって読む気には到底なれません。
最初から分かっていた事ですが、文書ソフトにコピペして再編集することにしました。
使った文書ソフトはMicrosoft Office Word。

サイトのページは年度毎に分かれていて、2009年度から2022年度までの14ページにわたります。これを、年度ごとにファイルを作っていきます。
初めての作業なので、ひとまず記事数が少ない【店主のひとりごと】の方からやってみる事にしました。

元のサイトから文章を持って来る時、そのままコピペすると内容が降順(元のサイトは最初の記事が一番後ろにある)になってしまうので、1節ごとに記事を並べ替えて貼り付けていきます。
書き始めの2009年から2012年頃までは特に記事が多く、日常の合間を縫って作業している自分としては「本当にこれ、完成まで辿りつけるのか・・・!?」と気が遠くなっていました。この作業だけで2~3週間は掛かってしまい、これ以上やり続けるのは無理だと悟って【飼育と採集の知恵袋】の書籍化は諦めました。


次に、ペーストした文章を再編集していきます。
まず、一番厄介なスペース改行を潰していきます。これがまあ途方も無い作業で、スペースを消して文を詰めては次の行に移って・・・を繰り返します。軽く吐き気がしてきます。
全てのスペース改行を潰し終えたら、今度は適切な位置での改行に直したり、段落を作って読みやすくしていきます。ただ、作業量に絶望してしまった為、文頭に通常空けておくべき1字スペースの挿入は断念しました。また、この他に数の単位などの環境依存文字や、誤字・脱字も見つけて直します。

そして、書籍化ならではの楽しい要素として、装飾も加えていきます。
WEBサイトでだと、書体はほぼ1種類、基本的にフォントサイズも一律なので、抑揚をつけるべく複数の書体をポイント的に使用し、サイズも強調箇所で変更、色も変えたり、括弧書きをルビに直したりと、元の文章を書いた本人が読んでも楽しめるよう小細工してみました。
もがみうし.jpg
自分と鈴木店長では感性が違うので、自分で「ここがキメどころかな」と思っても鈴木店長からすればそうでもない場合もあります。無駄に装飾を施してしまう自分の悪い癖が出てしまいそうになりますが、あくまでこれは鈴木店長の物なので変にサービスせず、昔直接この話を聞かせてもらった時の店長のテンションや笑いどころを思い出して、そこだけ装飾するように抑えました。
読みながら直していくので、疲れはしますがニヤニヤが止まりません。


さらに、書籍化することで面白くなるのが、「ページ跨ぎ」ではないでしょうか。
スクロールして次の文が必ず見えてしまうWEBサイトと違って、ページをめくる作業が必要な紙媒体だと「どんでん返し」や「落としどころ」など展開への溜めの瞬間を作る事も出来るので、一度読んだ話でも新鮮に映るかもしれない・・・
頁替わり.jpg
あくまで無理のない範囲で。落ちを切る為に無理矢理ページを改めたりはしません。

その他、ページの体裁を整えるための微調整も含め、何度も繰り返し校正していきます。

また、素材がサイトの元データだけと云うのもつまらないので、僅かですが鈴木店長が持っていない「記事関連の写真」を加えてみました。写真が増えるだけで豪華になりますが、流石にコピー用紙にインクジェットで写真を印刷すると紙がヨレヨレになって裏写りもするので、画像印刷にも耐える用紙を使いました(薄い用紙でインクジェット用を探すとB5が無かったので手作業でA4から切り出しました)

記事の編集が大方終わったら、ページ数も多いと云う事で目次を作ります。
記事数も全て合わせると相当な量なので、記事の一個一個のページ番号を確認しながら記事タイトルとページ数を入力していきます。この目次だけで11ページにもなってしまいました。

記事、目次が出来てきたら、さらにその前後を作っていきます。
中表紙を作り、
まえがきを1ページ書き、
最後のページに奥付も作りました。
これでかなり書籍らしくなってきました。ページ数は374に達しました。


あとは表紙・背表紙・裏表紙が出来ればOKですが、デザインのアイデアが中々浮かばないのでこれは後回しにして、いよいよプリンターで印刷に入ります。
KIMG5720.JPG
これがまた根気の要る作業で、自分の知識不足もあって印刷時ののりしろ設定(ページの片側だけ開いてしまう)を手作業で微調整すべく、手差しでトレイに1枚ずつ用紙を入れて両面印刷していきます(!!?)
「まとめてカセットに用紙を突っ込んでページ指定してあとは放置」
 ・・・じゃぁないんですな これが!
ペラペラのコピー用紙なので、扱う際も折り目が入ったり汚れが付いたりしないように、触る時は細心の、細心の!注意を払います。(二度言いました)
印刷の際、時間が掛かり過ぎるので
・カラーページのみ高品位専用紙指定で写真印刷
・文章のみのページは普通紙指定で文書印刷
と頻繁に切り替えながら印刷をかけていきました。
この作業も何週間掛かったか・・・

KIMG5799.JPG
刷り終えて全て完成するまでの間、紙にホコリやゴミが被らないように袋に入れておきます。

表紙以外を全て刷り終え、用紙の枚数を数えると188にまでなってしまいました。


作製当初から悩んでいた事ですが、この次が問題です。

これだけの枚数をどうやって製本するのか?

紐を使った昔ながらの和綴じだと、何かいかにも「手作り」っぽくてヤだなぁ。
糊で貼るか?
でも1枚ずつ貼ってったら紙がヨレるし背幅が厚くなって不格好になるよな。
背中に塗ってまとめたら多分メモ帳みたいにページめくると剥がれるよなぁ。
ホットボンドも、道具の扱いもきれいに仕上げるのも案外難しいみたいだし。
そうなると、やっぱりホッチキスに頼るしかないんだけど・・・
こんな分厚いモノ、市販のホッチキスでどうにかなるワケないしなぁ。
ぁ そうだ、分割して留めてそれを糊で貼り合わせたら、・・・あぁー駄目だ、
「ホッチキス膨れ」が生じるし、貼り合わせ部分からきっと「ページ割れ」が起きる。
ああぁ・・・どうしたもんか・・・


悩みつつも、一縷の望みに懸けてネットを検索し続けたところ、
ありました。問題を一発で解決してくれる物が。

KIMG6232.JPG
大型ホッチキス
探していながら、見つけた時に「こんなモノほんとにあったんだ!?」と目を丸くしてしまいました。ヘラクレスオオカブトじゃん。

KIMG6239.JPG
スペックを見ると、コピー用紙(55kg紙)にして200~240枚まで製本可能と云う常識破りの性能。こんなのほとんど需要無いだろうよ!(褒め言葉)

KIMG6238.JPG
針も長さがなんと24mmあり、意味不明に迫力を帯びています。
針1本あたりの太さも0.7~0.8mmくらいあります。


心配していた製本法も決まったので、下準備を行ないます。用紙を全てまとめ、きちんとページが並んでいるか、ページが入れ違っていないか入念にチェックします。
そしていよいよヘラクレスの出番ですが、そのまま全部に針を通す事はしません。印刷物を全てホッチキスで留めてしまうと、完成時に針部分が浮き出てお粗末な造りになってしまうので、前後の各10枚くらいを省いてガッチャンコします。一発勝負なので、一箇所一箇所緊張感をもってレバーを下ろします。針先の膨らみを潰して整えたら、今度は省いた残りの方の処理に取り掛かります。
KIMG5895.JPG
針が当たる部分をカッターで切り抜きます。
そして、テープ糊で1枚ずつ貼り合わせます。これでひとまず製本作業の峠を越えました。


ここまでくると出来る作業はもう無いので、
観念して表紙の作成に掛かりました。

自分のセンスで全力を出すと下品なデザインになりかねないので、あれやこれやと考えたものをグッと堪え、どんなテンションの時でも抵抗なく手に取って読めるシンプルなデザインにする事に。
写真やイラストは使わず、3点パーツで表紙部分を構成する点を考慮して、ファーブルハウス店舗イメージカラーで太めに縁取りし、タイトル著者名だけ入力しました。
ちなみに、先にも書きましたが表紙は
・表紙
・裏表紙
・背表紙
それぞれ作ってB5サイズで印刷します。
我が家のプリンターは最大でA4サイズまでしか刷れないので、表紙から裏表紙まで一繋ぎで印刷する事はできません。

用紙は約0.35mm厚のマット紙を使用しました。家で使ってた在庫から引っぱり出しただけですが、この後の作業を思えば汚れや傷に弱い光沢紙を使わなくて良かったです。
表紙類をカット・印刷後、まず先に遊び紙となるカラー用紙を貼り、その後に表紙と裏表紙を貼ります。遊び紙をわざわざ挟む理由は、万が一表紙から中表紙が透けてしまう事を防ぐ意味があったのと、表紙と中身を別けて書籍としてメリハリを出す為です。
この時、用紙を貼り合わせるのはテープ糊ではなく、製本専用の糊を使用しました。
P8050127.JPG
表紙は堅いのでめくった時に力が掛かって剥がれやすく、しっかりした性能の糊を使う必要がある事、そしてホッチキス部分の切り抜き箇所を埋める役割もあります。ネットで作り方を調べてみると、製本糊として木工用ボンドも代用が利くとも書かれていますが、やはり貼り合わせた時の粘着力(ゆるさ)や速乾性が違います。
KIMG5957.JPG
重しを乗せて待ちます。製本糊は水分を含んでいるので、紙がヨレないように乾燥するまでこのまま放置しました。こういう時に大図鑑が活躍するんですね。

表紙、裏表紙が貼り終わったので残りは背表紙だけですが、
そのまま貼りはしません。

背幅がそれなりに広いので、糊だけで貼ると表面がモコモコと歪になると思われます。それでは美しくありません。
KIMG5967.JPG
そこで、背表紙に補強板を入れることにしました。
本の背幅は大体19~20mmあったので、理想に近い18mm幅の平板をホームセンターで見つけてあてがう事にしました(かなり探し回りました)

KIMG5969.JPG
最後に天地(上下の端)を断裁する事を考えて、B5辺よりもやや短く切って貼り付けます。

KIMG6034.JPG
片面を先にテープ糊で貼った後、製本糊を塗ってもう片方の面を貼り合わせます。中空になる上下の端にも糊を充填して埋めておきます。


完成まであと少しですが、次は表紙の保護作業。
具体的な方法が思い浮かばず、これはホッチキス以上に悩みました。

何を使って保護したらいいんだ・・・?」

調べても、自家製本で防水をかける為の加工は出てこないのです。
表紙とは別にクリアフィルムを1枚重ねる(表紙に貼らない)のは理想的な完成品とは程遠いし、安易に思い付くブックフィルムは今回は避けたい。糊の粘着性が意外と弱く、フィルムのコシが強いので長期間経つと背表紙の角部分が剥がれて浮いてくる事が予想できます。
P8050129.JPG
↑↑こうなる。(上写真は別の本)
メーカーによってはその心配が無い物もあるのでしょうが、試している余裕はありません。

作業が膠着しアイデアが煮詰まって少し経った頃に、立ち寄ったダイソーでとある物を見つけました。

KIMG6079.JPG
手貼りのラミネートフィルム(A3)よりによってダイソーかぁ、とは思ったのですが、安価なので試してみてダメでも懐はそんなに痛まないと云う事で購入。
テストしてみたところ粘着力も問題なく、貼り直しが利かない程度には強力です。材質も、ブックフィルムでよく使われるポリプロピレン(PP)ではなくポリエチレンテレフタラート(PET)で、貼る前に折ってクセを付ければ剥がれて浮いてくるのも防げそうです。これで決定。
一発勝負で難しい作業だった為、結果的にちょっと背表紙部分が汚くなりましたがなんとか完了。


残すは最後の作業、小口三方の化粧裁ち
これはもう個人の道具・設備では不可能に近いので、ウルトラCを発動
KIMG6081.JPG
分厚い本ほど、この作業の重要性が増してきます。美しい・・・


完成した本がこれです↓↓(モザイクかけまくりですが)
KIMG6093.JPG

いやぁ、もう・・・長い!長かったです!
当初の完成予定日だった5月下旬を大幅に過ぎ、7月12日に完成しました。この間、挫折しかけて作業が停滞した事が数え切れないほどありました。時には妥協したり、後からこうすべきだったと反省する事もありましたが、それなりに価値を感じてもらえそうな出来には仕上がったと思います。

あとは中身が透けないように注意しながらラッピングして、
鈴木店長に次回会う時に持って行くだけです。





贈呈当日7月23日

別件を口実に鈴木店長宅へ訪問し、話も落ち着いたところで書籍を進呈しました。


FH鈴木 「嫌な予感がする・・・」

俺そんなにトラブルめいた物持ってきませんって・・・!
包装紙を気持ちよくビリビリと破き、中から出てくる本のタイトルが目に入る・・・

FH鈴木 ぴょォォォォぅ!!!!

奇声を上げて驚いてくれました。
驚くのはまだこれから、中身を読んでいけばじわじわと感動の波が押し寄せてくるでしょうよ。まぁ、それは後でじっくり楽しんでもらえればいいので、あの大事な問題を確認しておかないといけません。

自分 「許可取ってなかったですけど、いいですか?」

FH鈴木 「いいですよ♪♪」

自分 「(ホッ・・・)



FH鈴木 「じゃぁこの後【知恵袋】の方もよろしく頼む!」

自分 うッゲェェッ!! 冗談じゃねェよ!!!


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カブクワ俗語辞典 [時事・話題・雑報]

どの職業・学問・趣味にも、その分野で独自に使われる言葉があります。

いわゆる「専門用語」「業界用語」と云うもので、昆虫分野においても少なくない数の専門用語が存在します。
さらに、「専門用語」と言うほど厳格に認められたものではないものの、いつの間にか使われはじめそれが一般に浸透し用語化した言葉もまた、数多く存在します。
昆虫に関する分野にもそんな言葉が色々あるとは思いますが、その中でもカブトムシ・クワガタムシに関連するものについての数は、他を圧倒しているのではないでしょうか。
時代も令和に変わって久しい現在。趣味としてのカブクワ採集・飼育の歴史も“浅い”とは言えないくらいに年数を重ねている今、この趣味を深く楽しんでいる人達はその年数も経験も実に様々で、時代と共に生まれて廃れていく言葉に理解が追い付かない場面も出てくるのではないかと思います。

昔は一部のホームページやコミュニティーサイトなどで「用語集」などと云ったページを設けてあり色々と閲覧できたりしていたんですが、ウェブサーバーのサービスの終了により現在はそうしたホームページが消滅していく一方であり、まったく寂しい限りですね。
そこで、今回はそうした言葉を「俗語」と呼称しその種類や意味をまとめていきます。

さて、その「俗語」をどのくらいの範囲・基準にまで広げて取り上げるかについてですが、これは自分の主観で選定すると云う事で、厳しいツッコミは無しでお願いします。
ただ、冒頭に書いたように、一般的に業界専門用語として使用される語『WF1』『頭楯』『灯火採集』『羽化不全』『生オガ発酵マット』みたいなレベルのものは取り上げません。また、範囲としては、主に飼育と採集に関わる分野をメインに取り上げます。
取り上げる語の中には、時代と共に最近多用され始めた語や最近あまり使われなくなった語、一部の狭いコミュニティでのみ使われる語、厳密には別業界で生まれたような語も含める予定ですが、今回の記事はどちらかと云うと「ネット・SNSでの情報収集の際の読解補助」であって「この趣味を長年続けている人が在りし日を懐かしむ」為に作ってはいませんので、『DAIN』みたいな完全な死語は態々入れません。

ちなみに、自分もこうした俗語を使う事もありますが、好まない語も多いです。「通になるにはこうした語を常用せよ」と云う意図は全くありませんので、くれぐれもこれらの言葉を使う際にはご自身の責任の元で発信いただきますようお願いします。


なお本記事は今後、「それらしい」語を見つけたり、思い出したりした時に随時加筆・訂正していきたいと思います。

・読みは50音順です。
読み 説明
いい虫 いいむし 通常、読んでそのまま解釈すれば「魅力的な虫」もしくは「益虫」と捉える語だが、時折「高値で売れる虫(種)」の事をやんわりと表現する為に使用しているように見受けられる場合がある。
色虫 いろむし オレンジ・黄色・赤・緑など、黒一色ではない種のクワガタ全般を指す。また、そうした種が多く含まれるキンイロクワガタ属・ノコギリクワガタ属・ホソアカクワガタ属等が含まれ、飼育分野において「ドルクス属以外」という意味合いで表現する用途で使われることが多い。
対義語:黒虫
egg えっぐ 今はあまり見かけないが、FC2等の飼育系ブログで常用されており、読んで字の如く「卵」を意味するが、産卵セット割り出し時の卵の個数を表す単位としてよく使われる。何故普通に「〇〇個」と書かないのか、甚だ疑問である。
追い掛け おいがけ 飼育において、既に交尾が済んでいる(と思われる)♀成虫に、さらに♂成虫をあてがって交尾させる事。
救出 きゅうしゅつ 読んで字の如くで、「昆虫生体の安全を図るためにある場所から別の場所へ移動させる事」であり、飼育分野と採集分野で少し事情が変わっている。
①飼育において、生育に不適合な環境・このまま放置すると生命の危機にさらされるような環境から取出し、別の飼育環境・餌に移す事。
②採集において、このまま放置すると生命の危機にさらされるような環境から取出し、採集もしくは逃がす事。中でも、オオクワガタ採集において材割採集時に倒木を割って採集する際にこの語が隠語的に用いられる。特に雪国の場合など、乾燥気味の腐朽木を好むオオクワガタは、入っている木(立ち枯れ)が倒れると春の雪解け水の影響によって溺死(ひいてはその腐朽材にいる個体が全滅)する危険性が高く、そうなる前に倒木を割って幼虫を採集すれば、溺死の危機から救い出す事になる。昨今はオオクワガタの材割採集に対する眼差し(批判)は厳しくなる一方であり、「採集・採る」ではなく敢えてこの語を使うのは、採集の正当性を説明する意図も含まれているのではないだろうか。
(しかし、ここから先はあくまでも自分の所感であるが、最近この語がオオクワガタ材割り採集の際に無分別に乱用されているように感じる事がある。つまり、倒木か立ち枯れか関係無く材割りの免罪符のようにこの語を使っているきらいがあるのだ。確定的ではないものの、「救出」したオオクワガタだとアピールする為に立ち枯れを一度切り倒してから採集して写真を撮ったように見える物もその中には見られた。自分は材割り否定派ではないが、普通に「立ち枯れを割って採集した」と言えばいいものを、善行ぶった行為にすり替えているように見えてしまい悪印象を抱いてしまう。)
関連語:パトロール
クレクレ くれくれ 主に飼育分野に使われ、他人から無料で生体を貰いたがる事(人)を指す。また、そういった人を指して「クレクレ君」と呼称する。基本的には、嫌悪する対象に使われる語。
黒虫 くろむし ①前出の「色虫」と対照的に、体色が黒一色のクワガタを指して言う事が多く、「ドルクス属全体」を指し示す意味合いが強い。
対義語:色虫
②材割り採集において、採集された個体が「成虫」だった場合にそれを指し表わす語。幼虫より出てくる確率が低いので、いわば当たりクジにも近い意味合いがある。
撃沈 げきちん ①飼育において、(特に初めての飼育種で)産卵させようとしたものの失敗してしまい、なおかつ親個体も死なせてしまう事。
②採集において、その回の採集行で狙ったものを採る事が出来ず終わりを迎えた事を言う。

どちらも、自分に対して自虐的な意味で使い、昆虫分野以外でも散見される表現である。ただし本来は、「敵の戦艦を攻撃して沈めること」でありどちらかといえば相手側に対して使う言葉である。ちなみに、自分の場合は以上の理由から、同じような意味ではあるが敵味方特に関係無く使える「轟沈」という語を使っている。
御神木 ごしんぼく 採集において、特定の昆虫が付いている確率が周囲に比して特に高い樹を指す。言葉の印象から大木を想像しがちではあるが、特に樹齢や幹の太さは関係ない。
自力ハッチ じりきはっち 飼育において、羽化した新成虫が成熟し、自力で蛹室から出てくる事。略して「ハッチ」等と書く場合もある。自前の蛹室から出てきた場合に限られ、人工蛹室で羽化した個体には通常使わない。
同義語:羽脱
水牛 すいぎゅう 日本産ノコギリクワガタの♂の大腮(大アゴ)の歯型で、大歯型(長歯型)の事を指す。最近は「水牛型」という風に、型名のように使用される事もある。元は全国に数ある古いローカル表現の一つ(?)だったが、現在は全国的に多用されている。
スーパー大歯 すーぱーだいし クワガタの♂個体の大腮の形状で、発達が限界近くまで達したあたりで特定の内歯(多くの場合、最大内歯)の途中から別の小突起が出現したもの(またはその個体自体)を指す。吉田賢治氏がこの語の生みの親とされ、具体的にはアラガールホソアカクワガタなどでこうした個体が出現する。大型化した際に限定的または偶発的に発現したような種にのみ使用される語で、種として「必ず」内歯から小突起が現れるような場合にはあまり使われない。
即ブリ そくぶり 「即座にブリード可能」の略。成虫を譲渡・販売する際に、その個体が未後食・未成熟・休眠中ではない事を一言で表せる。「即ブリ可」と表記される場合もあるが意味は同じ。
同義語:成熟個体
タコ採れ たこどれ 採集において、期待以上に多数の個体が採れた状態を表す。かつて有名だった採集用品の名前にあったように、特に材割り採集で使われる事が多い印象の語であるが、特定の採集法に限らず現在使われている。
また、飼育時に多数産卵した場合にはこの語は使われない。
対義語:ボウズ
着弾 ちゃくだん 荷物が届いた事を指す語。厳密にはカブクワ用語ではないみたいだが、他のブログを読むようになって初めてこれを目にした時「は? 何その表現?」と思ったし、正直今でも違和感があるので取り上げた。
ニョロ にょろ 「幼虫」を表す語。また、割り出しの際に幼虫の頭数の単位としても使われる。
爆産 ばくさん 累代飼育において、産卵セットから期待以上あるいは管理能力を超えるほど多くの卵を産んだ事を表す語。「多産」の上位語として呼称される場合が多く(本来は「多産」が正しい)、使う人によって「100頭以上採れた時だけ」などと決めている場合もあるが、数に関して明確な線引きは無い。
パトロール ぱとろーる ①「警察官が地域の異状がないか見回る事」や、他に「マナーの悪い採集者、無秩序な採集行為を行なう人がいないか見回る事」などを表す語。

以上は通常の意味ではあるが、以下の様な意味でも使われる場合がある。
②一箇所または複数箇所の、既知の採集場所(主に自宅近くなどのよく立ち寄るポイント)の見回りを行なう事。採集目的の意味も含むが、単に環境の異状がないかを見に行く場合を指す事が多い。
③前出した『救出』との兼ね合いで使われ、主に「倒れてしまった立ち枯れ(オオクワガタが入っていそうなもの)が無いか見回る事」であるが、「オオクワガタの材割り採集」の隠語として使われる事がある。
羽パカ はねぱか 幼虫飼育において、羽化個体の上翅が会合線に沿ってきれいに閉じず隙間が開いてしまった事を表す。また、上翅はきちんと閉じたが下翅が畳めずに不全を起こした場合にも使われる事がある。
B品 びーひん 流通時、脚・触角・外骨格の一部が欠損した個体に当てられる記号。昔から一般的に認知されている語であるが、欠損状態によってアルファベット順に細かく分ける場合もある為ここで取り上げた。基準は人によってまちまちだが、個人的な感覚としては以下の通り。
「A品」:一般に言われる「完品」と同義。体表の大きな傷・各部の欠損が無い状態。
「B品」:体表に大きく目立つ傷や、脚・触角が1~2本欠損した状態。
「C品」:欠損箇所が多数有り、もしくは、生体だが非常に弱っている状態。
♀単品 めすたんぴん 読んでそのままの意味だが、「♀単」などと表記していると知らない人からは何の事か分からない為取り上げた。流通上の表記で、♀個体1頭のみである事を示す語である。♂個体1頭のみである場合は「♂単品、♂単」と表記する。特に通信販売だと、商品自体は♀単品でも写真が♂の参考画像になっていたりするので、購入の際にはこの点をよく確認する必要がある。
露天掘り ろてんぼり 観察しやすくする、壁面の崩落を防ぐ等の目的で、蛹(前蛹)のいる容器の中身を掘り出して、蛹室の上面を開口する事を指す。ただし所感として、蛹室を掘った後にそのまま蛹(前蛹)を取り出してしまう場合や、既に成虫に羽化している場合には使われない。


書き終わってみれば結構少ないものですね。それに加えて、結構遠慮して書いたので個人的にはだいぶ薄味になってしまったと感じます。本心では今回もっと毒を吐きたかったところですが、前々から書いてみたかった内容なので今はこれで満足です。
中には、「いやいや。そんな言葉どこで誰が使ってるの?創作お疲れ様ー」とか「認識間違ってませんか?」とか色々ご意見はあるかと思います。自分も、書き方が間違ったり誤認する表現になっているところもあるかもしれないと思いますので、時々読み返してみたいと思います。

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