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はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐後編‐ [日昆 採集記 【2024年】]

前記事、【はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐】の続きです。

 【前記事】
   ⇒ 2024-1-27  はじめてのヒラタクワガタ採集 ‐前編‐

当初は一つの記事にまとめる予定でしたが、長くなってしまったので途中でぶった切りました。前後編成にするなら、いっそ【日昆会長 西へ】とかにした方がよかったかな・・・?(そのタイトルだと舞台が神戸になるけど)





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クワガタ――― って、
えッ もう出ちゃった!!?

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ただしコクワガタの♀3令幼虫ですが。
ヒラタではなかったにせよ、県外採集・感動の1頭目です。
大慌てで車に戻り、ケースとスプーンを持って回収にかかりました。食痕が多く走っていましたが、この材にいたのは1頭だけ。

その後も少しばかり材探しをしてみますが、道路際でしかも暗いので色々とキツイものがあります。何にせよ採集の予行は出来たので、これで満足して斧をしまう事にしました。

この後は他にやる事も無いので、島の最東端・樫野埼灯台でも行ってさっきみたいに記念撮影でもしてこようかと、近くの駐車場まで行ってみました(灯台は駐車場から400m先)。しかし、着いてみれば朝釣り客複数名も居合わせていて、好奇の目に晒される事を考えると急激にやる気が失せてしまい、素直に本土へ戻る事にしました。

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『飲酒運転 なめたらアカン 飲酒運転根絶 大使天童よしみ』
・・・!?!?
目が疲れているのか、
『飲酒運転根絶 大天使天童よしみ』
に見えちゃって思わず写真撮っちまった。
しかし、・・・なんで天童よしみ? のどアメ? なめたらア カ ン~~♪♪


本土に戻り、潮岬の駐車場でひと時の仮眠をとることに。
時刻は4時20分。翌朝の体調をちょっと心配しつつ、運転席を後ろに倒しました。









7時00分。スマホのアラームだけで起きられる自信が無くて、目覚まし用で使っている置き時計も持ってきていたのですが役に立ちました。ただ、いくら南紀とは言え朝方はそこそこ冷え込んだので、寒くて起きたのかもしれません。寝袋や毛布はありませんし、車のエンジンも止めてましたしね。

顎をガタガタ震わせながら寝床を片付けていると、朝日が昇ってきました。
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太平洋側住まいでもなく朝型人間でもない自分としては、水平線の向こうに見える日の出は、心が洗われる様な感動を覚えます。


さてここから、冷え切った体を温める為に一旦コンビニに立ち寄っておにぎりと水分を調達。体の調子を整えたところでいよいよ採集本番。
改めてこれから渡る島の遠景を写真に収め、意気込みを新たに再び島へ向かいます。
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空は快晴! ちょっと風は吹いていますが採集には打ってつけのコンディションです。




さてここで、改めて採集地の概要を↓↓
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紀伊大島(南紀大島)
和歌山県の南海上、北緯33度28分00秒 東経135度49分50秒の位置に在り、面積約9.68平方kmで和歌山県において最大の島。
東牟婁郡 串本町に属する有人島で、大島須江樫野の3つの集落があり、トルコ人慰霊碑や記念館、日米修交記念館、日本最古の石造灯台(樫野埼灯台)などの施設がある。1999年に本土と陸路で繋ぐ「くしもと大橋」が竣工し、それまで渡島に使われていたフェリー航路は廃止になった。
島内の海岸及び内陸の一部は吉野熊野国立公園に属しており、
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スダジイ、カシ、タブノキ等の照葉樹が多く見られ、植生は南国の様相となっている。道路からはソテツも視界に入るが、これは植栽らしい。串本町の年間平均気温は17℃台1月の平均気温は8.3℃(2021年)



装備を整え、森に分け入ります。
時刻は8時40分きばってこーーぜ♪♪

ヒラタと云えば、幼虫は根食い系で湿潤な環境に生息していると聞きます。それにならって、乾燥しやすい島地形の中でも比較的湿度が高そうな沢沿い・谷地を狙ってみますが、なんかゴミの投棄が目立って気になります。橋が架かる前の、ゴミ処理が面倒だった時代のものなのかな?

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ヒラタではないですが、コクワの産卵痕が付いた落ち枝はすぐ見つかりました。
早速中身を見てみますが、食痕は現れるもののその主はいません。

周囲を探索すると次のコクワ材がすぐ見つかりますが、またもはずれ材。

そんな時、“真っ黒な丸くツヤツヤな虫” が出てきたら迂闊にも喜ぶじゃないですか。オオゴキブリってヤツですよ、青森県では十二湖近辺でしか記録が無い南方系で朽木棲のゴキブリ。こういうのがポロッと出てきちゃうのを見ると、「遠くに来たなァ」としみじみさせられますね、要らんけど・・・


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ようやく1頭目(昨晩の1頭を除く)が出てきたのは、林内に入って30分以上経ってからでした。その間、産卵痕が付いた材は何本も見つかっていましたが、食痕の先が材ごと無かったり、羽脱した跡だったりで空振り続きでした。

その後、じりじりと林の奥に進んでいくにつれて当たり材の確率も上がってくるようになりました。
イノシシの糞が密集した獣道を進み、耕作放棄地のような湿地に入ると見通しも良くなり材探しも捗ります。
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1令から3令まで、大小様々な幼虫が順調にストックケースに収まっていきます。
興味深い事に、幼虫の体内にはきちんと食べたものが詰まっています。青森だったら、この時期野外の幼虫はみな体外に糞を出し尽くして不凍液で透き通ってますからね。

さて、順調に幼虫が出てくるのはいいのですが、段々と状況が煮詰まってきた感じがして焦り始めました。
さっきから採ってるのはコクワばっかりのような気がするからです。

大きさからして少なくとも3令はコクワで、1~2令は見た目ではよく判りません。しかし、さっきから見えやすい産卵痕で無意識に材を選別し、「よく知らないヒラタより、よく知ってるコクワ」と云う逃げのスタンスに甘んじている自覚はありました。既に頭数は余裕で2桁台、いくらここのコクワが赤くて特殊だと言ってももうお腹いっぱいです。
時刻は既に11時30分、狭いエリアで時間を消費し過ぎた事を反省。

林を一度出て、別エリアに移る事にしました。

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林内から出て上を見上げると、青森県民としては今の時期信じられないような青空で気持ちが安らぎます。青森は今の時期、空は大体白か灰色ですからね。
ちなみに同時刻、青森はドカ雪が降っていました。


時刻は11時50分。貴重な採集時間も残り半分と考えるとちょっと焦りを覚えます。現状、「歩いて行ける範囲のどこかにヒラタが必ずいる」事が分かっているだけに、自分の採集者としての嗅覚の無さにつくづく呆れてしまいます。
せっかく狭い島の中にいるので、先ほどまでいた「湿った谷地」からガラッと雰囲気を変えて、「山の上の方」へ行ってみます。

道に沿って歩く事、距離にしてわずか数十m。
スギの植林は多いですが、道の脇には落ち枝や腐朽材が落ちています。いかにも「処分がめんどくさくてとりあえず路肩にブン投げといた」と云う感じ。
そんな材の中に、幾分マシな状態と思われるコナラ材が1本ありました。

太さ15cmほど、長さ50cmくらい。まだ樹皮が付いていて、腐朽がよく進んでいる所為か手で持ち上げた感覚では結構軽いです。

斧で入れた一撃の感触もかなり軽く、サクッと入った刃を少し捻っただけで材がキレイに真っ二つになりました。

!!!!!!
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デカい! さっきまで度々出てきたコクワの3令より明らかに大きな♂の3令幼虫が1頭見えました。周りの食痕も粗くて広範囲です。隣に指を置いて撮ってみますが、いやぁ~~伝わらんなぁ~~! 時刻は11時57分とうとう念願のヒラタクワガタ初採集成りました!

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採れた3令幼虫(右上)をケースに収めてコクワガタ3令幼虫(左下)と見比べても、明らかに体格が違います。

一気に肩の荷が下りた気分ですが、続けて♀個体の追加に目標を定めます。今回の旅、最初からブリード目的のクワガタを採るために来たワケですから、最低ノルマは♂♀ペア、成虫で採れればなお嬉しい。
材の中は6~7割が食べられ、繋がった坑道を見る分には1頭だけしかいないように見受けられます。割り進めていきますが、やはり何も出てきません。バラしていった端材の中に小さな蛹室のような空洞が見えたような気がしますが、・・・ま、食痕がキレイに抜け飛んだだけかな。

割り終えましたが、結果はさっきの1頭のみ。
そうそうテンポよく一気に物事は進まないもんですね。

割り終わったので、後片付けを始めます。

その最中の事でした。

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破材の下に、黒く光る虫が・・・矢印部分。なお、これは発見時の再現です)

裏返ったその虫の腹部を見た一瞬、またオオゴキブリかと思いましたが、一拍おいてそれがクワガタの♀だと気付きました。やっぱりさっき見たのは蛹室で間違いなかった!

これだけでも驚きましたが、本当に驚いたのはそのクワガタを摘まんで背中を確認した時でした。大きさから「コクワかな?」と瞬間的に想起したのですが、





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ハッ!!! ひヒラタヒラタヒラタヒラタヒラタッッ!!!!


知らずに弾き飛ばしていたのは迂闊でしたが、狙い目の♀、しかも成虫が出たので喜びも一入です。

しかも、もう一度下を確認すると3令幼虫がもう1頭こぼれていたのを発見! しかも♀個体!
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丁寧に叩いていたつもりだったので落っことしていた事にちょっとモヤモヤしますが、とりあえずこれで材から出たのがヒラタであることに確信が持ててホッとしました。
実は、♀成虫が見つかるまではこの♂幼虫が本当にヒラタなのか疑わしく、「実はノコギリなのでは?」と真剣に悩んでいたんですよ(ここら辺の種類の幼虫判別経験が乏しいもので)


余談ですが、
紀伊大島には4種のクワガタが生息している事が知られています。
  • コクワガタ
  • ヒラタクワガタ
  • ネブトクワガタ
  • マメクワガタ
このうち、ヒラタ・ネブト・マメの3種は青森県には分布していません。

さらに、以下の種も「採れた」話を僅かに見つける事ができたのですが、情報の信憑性に乏しいものがあります。
  • ルイスツノヒョウタンクワガタ
(もし仮にいるにしても、現在は吉野熊野国立公園の特別地域内でのルイスの採集は禁止されています。普通地域はその限りではないにしても、ルイスの生息環境として可能性が高い海岸付近は全て特別地域なのでまず厳しいでしょう。ちなみに、念の為今回の採集へは国立公園の範囲マップを印刷して持参してきています。)
  • ノコギリクワガタ
(1件だけ「採れた」と云う情報が引っかかり、曰く『激レア』なのだそうです。ただ、あのド普通種のノコギリが、あれだけ色んな採集者が来ていた中で、記録に残せないほど稀な個体数で人目に付かずにひっそりと生息しているなんてあり得るのでしょうか? 確かに、島嶼域の分布地の中には本土ほど個体数が多くない場所もあると聞きます。しかし、紀伊大島みたいな有人島で道路も整備された環境で人目になかなか付かないでいられるってのは、正直信じられません)

この他、島に分布している種もいるかもしれません。ただ、遠征前・採集中とインターネット検索してみたのですが、瀬戸内海の島嶼域なんかで見られたりするスジクワガタやミヤマクワガタは、採れた記録が一切出てきませんでした。


こうして無事にヒラタが採れたので、気持ちをリフレッシュして探索を再開します。

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さっきと同様、コクワ材はよく見つかりますが「コクワ以外はいなさそう」なのでスルーしていきます。それなりに太さがあって朽ちているように見えても、叩いてみると「枯れているのは表面だけ」でゴイィィン――と斧が弾かれたり、逆に「腐朽が進み過ぎた」スカスカな材だったりでちょうどいい度合いのものは見つかりません。
スカスカでボソボソな材からは、
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とにかくオオゴキブリはよく出てきます。材内の空洞からチラッと覗かせる腹部を見ると、一瞬ドルクスっぽく見えてホントに紛らわしいです。

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ヒラタ材を探しているつもりが、やっぱりいつの間にかコクワ材を見ています。これって、去年までずっとコクワばかり探してた所為でコクワ材にしか反応出来ない人間になってしまったとか!? んなアホな。


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場所を変え、一見樹相が良さげな所を見つけて歩き回りますが材があまり見当たりません。特に、よく朽ちた太めの材が在りません。
これって・・・そう云う事か・・・
どういう事かはあえて言及しませんが、納得しましたよ。何せ、ヤブっ気が無くて歩きやすいですもん。


ではそこからちょっと深いところへ潜ると材はあるのか?
ポイントが枯れているのか、やはり最初の頃のポイントと比べて材が少なく、コクワ材すら貴重です。

いい材が見つけられずにしばらく歩いていましたが、
ふと立ち止まって自分の身体を見ると、服がビッシリとひっつき虫(草の種)まみれな事に気付きました。特に下はジャージを穿いてるので、草に触ったそばからゴッソリ付いてきやがります。
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コレです↑↑ 調べてみると、コセンダングサと云う帰化植物。
センダングサ、聞いた事はありますが青森のフィールドで接触した経験は無かった気がします。全国的にはメジャーなようで、「ひっつき虫の代表格として親しまれている」なんて書いてるサイトも見つかります。親しまねぇよ!
薮を漕いでいる時は気にならなかったのに、いざ意識してしまうと材よりもそればかり気になって仕方なくなります。どうにか服に付いた種を全部取り払ったものの、目の前に視線を戻すと一面がコセンダングサ群落でドン引き(この時の光景と絶望感は、ブログを書いている今も強烈な印象として残ってます)。摺り足で慎重に茎を踏み倒しながら、どうにか一帯を脱しました。
ただ今になって思えば、わざわざ遠征に来ておきながら薮に入って草の種にヤキモキするとか、下らないにもほどがあるよな・・・


ある意味 “道草を食って” 時間を無駄にした事で、時刻もとうに15時を過ぎています。日も落ちて林内も影が濃くなってきました。次がラストになると覚悟して、エリアを移動しました。

日も落ちてくると足元が見えなくなってくる所為か、無闇矢鱈と「道なき道」みたいな場所には入れなくなるもので、危なげない街道沿いのような場所でしか探していない事に気付きます。小さな島とは言え、島全域を探し回れたとはとても言えません。

最後、なんとか当たり材を見つけて
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今回初めてのコクワ成虫を発見しました。最後までコクワか!
時刻はもう16時。林内も採集出来る明るさではなくなってしまいました(日の入りは17時05分この後の予定も迫っていた時刻なので、これで採集終了!


車に戻り、余計なお土産(ひっつき虫)が付いてないか入念に確かめてから本土へ引き返します。

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結局、島では一切観光しなかったなァ・・・

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16時37分。島を出る直前、夕暮れに陰るくしもと大橋。

車のバックミラーに映る島影が小さくなっていくのを脇目に、名残惜しさで胸いっぱいのまま次は串本町図書館へ向かいます。

16時50分、図書館へ到着。
さっきの採集の終わり頃、時間を気にしていたのは図書館の閉館時刻が迫っていたからと云うワケです(閉館時刻17時15分。採集したラベルの詳細を割り出す為、住宅地図を確認しに来たのが目的です。一応、グーグルマップでも大まかな範囲分けはされていますが不正確なので、ゼンリンの方で確認したいんですよ。
どうやら、住所上では大島・須江・樫野の大字3つより下の区分は無いようです。古い通称でもっと細かい地名もあるようですが、自己採集ラベルとして納得するには大字で充分です。この島のクワガタ生体も現在一般に出回っていますが、それらが基本的に「南紀大島」止まりの表記である事を考えれば、これで自己採集としての箔はついたでしょうしね。


用事も済ませたので、あとは・・・帰るだけ!
3日目ともなると疲労もうんと溜まっていて1日目以上に休憩を挿めていかないと危険なので、日付を跨ぐ前に出発します。

・・・とは言え、お腹も空いてお土産もまだなので、串本町を出る前にスーパーに立ち寄って夕飯とお土産を買い出しします。オークワ串本店、おじゃましまーす!


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・・・こ う い う 事 か・・・!
後で調べて知りましたが、天童よしみの出生地って和歌山県 田辺市だったんですね、意外でした。まぁ大阪育ちではあるから和歌山のイメージが無かったのはさもありなんだけど。

とりあえず、少しばかりの和歌山土産と夕食を買ってお店を出ました。
誤算だったのは、和歌山行きを決めた当初から買おうと思っていた「ミカンジュース」が無かった事! 青森ではあまり売ってない(小瓶のヤツとか、遠方価格でバカ高いヤツとかはある)ので、本場でしか手に入らないローカルなのを期待して売り場を探し回ったんですが、
ポンしかねェェェェ!!!!
それ青森にもあるゥゥゥゥ!!!!
和歌山ミカンはどこだよォォォォ!!!!
ここにきて、「地元産ストレート果汁ジュースが複数メーカー分どこのスーパーでも常に置いてある青森が異状である事に気付かされました。
残る可能性としては道の駅しかありませんが、道中に点在する道の駅は全て営業時間を過ぎています。終わった。

車に戻って夕食をとります。
スーパーの弁当とは言え、この旅で一番まともな食事です。ただ、買う時は見た目でパッとかごに入れたので気付きませんでしたが、パックに付いたラベルを見ると
  • 大分宇佐 太閤監修からあげ
  • 神戸長田風 ぼっかけ焼きそば
和歌山はァァァァ!!!!?
現地に居るにもかかわらず、和歌山との絶妙な距離感に切なさを覚えます。

すっかり日の暮れた串本町を脱し、新宮市で一旦給油します。


ところが、それから間もなくして瞼が重くなってきました。
思えば、さっきスーパーの弁当しっかり食べちゃったからね・・・そりゃ眠くなるよねぇ。
眠気に襲われているのを自覚したのは、車道のセンターラインを割りながらハッと起きて慌ててハンドルを戻した時でした。
この眠気、なめたらア・カ・ン!
腿をバチバチ叩いて眠気を堪えながら、どうにか三重県 御浜町の道の駅に辿り着きました。









「無事に」目が覚めたのは21時を過ぎた頃でした。
時間にして、およそ2時間くらい駐車場で眠っていました(今思えば、よく2時間程度で起きられたもんだと感心します。正直あのまま「昏睡してもおかしくない」くらい限界きてましたからね)
外の空気を吸い、頭を覚醒させて再出発しました。

熊野市のイオンでミカンジュースが無い事をもう一度確認した後、熊野大泊インターチェンジから自動車道に突入します。


和歌山ではあまりお土産が買えなかったので、その代わりにこの三重で買い込む事に決め、安濃サービスエリアで伊勢うどんやらお菓子やらをじっくり吟味しました。
いやはや、流石は三重と言うか、お菓子でも何でも “ちゃんと地元で” 作ってらっしゃいます。青森の場合、土産物屋に売っているお菓子とか、『青森〇〇』とか銘打ってる製品の大半が地元で作ってないですからね。製品の包装上から「販売者だけ書いた」製品表示シールが貼ってあるヤツ、大体が県外で作ってますからね。包装紙に印字されてるフリーダイヤルを検索すると、長野県とか岩手県の菓子メーカーにヒットしますからね。道の駅にある菓子でちゃんと県内で作ってるの、ラグノオと煎餅だけですからね!
(ごめん、言い過ぎました)




1月8日 3日目・復路
土産選びで30分以上じっくり悩んでいるあいだに日付は変わり、会計したのは0時19分の事。

本線に戻り、帰路を急ぎます。
来た道を順調に戻り、四日市ジャンクションまで来ました。結局、三重県内では闇夜の景色しか見られなかったな・・・

さて、この後ですが、
同じルートを辿るなら伊勢湾岸自動車道へ進路を変えるところですが、「違うルートを使えば脳へいい刺激になって眠気対策になるだろう」と考え、東名阪自動車道を直進。名古屋市を北回りで抜けるルートを選んだのです。

はい、この辺ご存知の諸兄ならば乾いた笑いがこぼれるトコロですね。大失策でした!
料金所に次ぐ料金所の連続で、往路の時より通行料が割増しになってしまいました。しかも、料金所直後のルート選択を間違えて名神高速道路を逆方向に入ってしまい、危うく滋賀に行きかけました。慌てて道を戻るべく最寄りの料金所を一旦出て→また入ったもんですからその分無駄にお金使っちゃったりして・・・
この時のてんやわんやでまた疲れがドッと溜まり、休憩で仮眠をはさみながら長野まで戻ってきたのは日の出時刻ギリ手前頃。「交通量の少ない夜中のうちに魔の中京圏を抜け出す」と云う目標は遂げられましたが、思った以上に遅くなっちゃいました。

さぁ続いて、
この辺りまで来ると気になってくるのはガソリンメーター
 
そろそろ給油しなきゃな~と思う頃合いであの町が近づいてくるワケですよ。
 
降りちゃいますよね、飯田インターチェンジで。
 
ガソリンスタンドへ直行し、前回と同じ179円/1L給油後すぐにまた高速道路へ。

はい、この辺ご存知の諸兄ならばまた乾いた笑いがこぼれるトコロですね。これも大失策でした!
他に用事があるならいざ知らず、単に「給油するだけ」なら多少割高でも高速道路上のスタンドで給油した方がトータルで安上がりなんですよね。高速道路を途中で降りると、降りなかった時と比べて道路料金が3,000円くらい高くなるんですよ(帰宅後に計算して気が付きました)。高速道路と地上とのガソリン代の差なんて、給油1回あたり500円程度しかありません。世間知らずの田舎者にとってこれは正に “お勉強代” になったワケですね。


さて、空も明るくなった高速道路上、車の通行量も増えてまたハンドルに齧りつくスタイルで長野を北上します。
休憩やお土産探しも挿みつつ、野尻湖付近まで来ました。長野県域もあと少しで終わりです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

車列が急に渋滞し始めました。
前方には長い列が出来ていて、自分も先行車に続いて減速します。

ダラダラ進む事数分~十数分。
渋滞の原因が判明します、除雪車でした。付近は既に雪景色、道路上も薄っすら雪が見えていましたが、これって除雪した後の状態で、最初はもっと積もっていたんですね。
除雪車が一旦脇に抜け、一般車両の我々が再び高速巡航に戻れたかと思いきや、またその先で渋滞。

二度三度と繰り返し、遂に一番前の除雪車を失敬した直後に「この旅最大のピンチ」に遭いました。

場所は、長野県を抜けた新潟県 妙高市
スキー場犇めく大積雪地帯。前日には大雪。まだ午前中。未除雪。
路面は新雪で真っ白。追い越し車線(右車線)にのみ細く黒い轍が真っ直ぐ残っているのみで、その轍をブレ無く辿っていかないとハンドルをとられてしまいます。
実際、誰も走っていない走行車線(左車線)には、横転したジムニー1台と、逆方向を向いた2トントラック1台が寒風にさらされていました。

「うっはぁぁ・・・きッついわぁ、笑えんし
 横を通り過ぎてく車皆に見られて恥ずいだろなぁ・・・」
と思った矢先でした。

油断して轍からほんの少しタイヤがずれた途端、
一気に車体が蛇行して操縦困難に!!!!!
車軸が真横を向く前に何とか逆方向へ頭を振るも、タイヤは完全に轍から外れてスリップ状態。燃費を考えて積載物を減らし、車体を軽くしていたのが仇になりました。
ブレーキも利かず、すぐ後ろには低速だった為に近距離で後続車がつけていて、仮に止まれても追突や玉突きの危険あり。
路面状態が均一な分、かえって積雪路面の走行車線に避けた方が安全と判断し、蛇行状態のまま左に車線変更! ――どうにか車体の姿勢を持ち直せました。この間ほんの数秒、「俺ももう終わりだッッッ」と覚悟しそうになりました。

後ろの車には「こいつ、青森ナンバーのクセに雪道の運転下手クソだなー」と絶対思われたでしょうね、でもいいんです、無事なら。
右側を次々追い抜いていく後続車に気恥ずかしさも感じつつ、低速で走行車線を進んでいきますがやはり積雪路面で走行が安定しません。やはり右側に入らないとダメだなと思い知り、追い越し車線の車列が途切れるまでノロノロ待つ事にしました。

2度目の危機は、すぐ訪れました。

スノーフェンスの張ってある地点まで来た時です。
フェンス直下、メガ盛で積もっていた吹き溜まりが突風でゴッソリ巻き上がり、スノーフェンスではね返った地吹雪が車道に全部戻ってくると云う最悪のミラクルが発生。
瞬間、上下左右全てが白い光に包まれホワイトアウト
さらに、積雪の上を低グリップで走行しているので、車が今進んでいるのかどうか感覚すらありません。
今度こそは「死ぬ!!!!!!!!!!」と直感して急ブレーキ踏みましたよ。

幸い、低速で走っていた事と、後ろに全く車がいない事も分かっていたので、無事に停まって事なきを得ました。(ちなみに、帰り道の大部分では油断して車載カメラを起動してなかったので、ここまで写真なし)

その後、どうにか追い越し車線に戻って妙高市山間部を脱出しました。
ラジオの交通情報に耳を傾けると、さっきの2台のみならず、さらに複数の事故が北陸界隈で発生している事を聴き、改めて冬季の長距離ドライブの危険性を再認識しました。


話は変わりますが、今回の遠征においてはドライブ中の数少ない楽しみとしてラジオはずっとつけていました。
今回の旅は、移動距離のわりに町に降りる事も少なかったので、「その土地へやってきた」と云う感覚は実際のところ薄かったと思います。特に、夜になったら景色を観る事も出来ないので、ラジオが無ければドライブも無味乾燥した退屈なものになっていたでしょうね。
別の地域に入る都度チューニングを変えてそれぞれの地域の局の番組を聴くと、旅をしている実感がわいてきます。トークバラエティ、交通情報、ラジオドラマ・・・初めて聴く番組でもそこそこ楽しめるってのは有り難いもんです。


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正午の様子。命懸けで抜けてきた妙高市と比べると、あとの新潟区間はイージーモード。路側帯の雪が見えるだけです。

朝日まほろばインターチェンジを通過し、久し振りの下路へ。
高速巡航の疲れをとる為に一時仮眠、目が覚めたのは14時半を過ぎた頃でした。

新潟を脱する前に、ガソリンスタンドへ寄ってこの日最後の給油をします。二日前の往路では付近の別のスタンドに寄ったのですが、あっちのは1リットルあたり12円も高かったんですよねぇ。ちょっとショックでした。

そして、長かった新潟区間を抜けて山形まできました。
東北地方まで戻ってきただけで、一人旅の身としては安心感がグッと増してきます。2日前に初めて来た県だけど。
一方、路面に関しては安心感のカケラもありません。山形はアイスバーンでツルツル、秋田に入るとシャーベットでハイドロプレーニング。これぞ東北・・・
グーグルのルート案内にダマされて地獄の一丁目で嵌まりかける一幕もありましたが、ようやく

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雪地獄あおもり まで戻ってきました。
嬉しいような哀しいような変な気分。時刻は20時22分
写真は秋田県境の矢立峠で、2日前とは景色が見違えています。変わっていないのは交通量だけです。

故郷の土地を走り続けるあいだ、「自宅まであと少し」と云う気持ちはほとんど無く、和歌山にいた時の夢のような体験の記憶だけが頭の中で反芻されていました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、遂にこの時が―――

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0泊3日の弾丸遠征が終わり、帰宅しました。
運転席のドアを開けて地面に降りた瞬間、夏用シューズに雪解け水がジワァ~っと滲みてきてゲンナリします。雪が雑じった寒風で身も縮まり、現実に引き戻された感覚です。荷物を降ろすのに車と玄関を行ったり来たりするのもダルい事ダルい事。

何にせよ、生きて帰ってこれた――― それが何よりです。
構想時点では、「俺は今回の遠征で死ぬかも」ってビビってましたから・・・

そんなワケで、用済みになった「遺書」は忘れずきちんと破り捨てました。




結果発表(遠征のまとめ)
それでは、今回の遠征のまとめや感想を項目ごとに分けて書いてみます。

掛かった費用
ガソリン代
 1日目:17,250円
 2日目:3,564円
 3日目:7,649円
道路料金
 1日目:15,990円
 2日目:支払い無し
 3日目:17,340円

以上、合計で61,793円が自家用車での交通費として掛かりました。
ガソリン価格も結構高い時期だったのでそれなりに痛い金額ではありますが、それより高速道路のルート選びでやらかしたのが痛かったですね。ルートの真ん中付近で高速道路を(無駄に)降りたり、復路でルートの変更さえしなければ5,000円くらい経費は浮いた事でしょう。今後、頻繁に遠征に行く事は無いでしょうが、次にどこか遠くへ車で行く時にはきちんと学習しておきたいところです。

ちなみに、この他に飲食やお土産品の購入でお金を使い、そっちの方では23,000円ほど出費しました。土産はほとんど三重です 笑

移動距離
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↑↑往復でこれだけの距離を走りました(写真 上段)
潮岬到着後の深夜徘徊でウロチョロした分を除けば、片道だとおよそ1260km掛かりました。
青森県内で遠隔地へ採集に行った場合、佐井や深浦でも往復でたいだい350~400kmです。そう考えると、今回の採集1回で【青森県内での遠方採集6回分】以上のドライブをした事になるんですねぇ。そりゃキツいハズですわ。
特に、長野県・新潟県・三重県の区間を走ってる最中は、実際の距離以上にホント~に永く感じました。

採集個体
さて、一番重要な採集成果です。
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コクワガタ 成虫♀1頭 幼虫17頭
ヒラタクワガタ 成虫♀1頭 幼虫2頭

クワガタのみ、全て合わせて合計21頭を採集してくることが出来ました。

それでは、♀だけですが採れた貴重な成虫を見てみます。
まずはコクワガタ↓↓
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体長は25mmコクワらしいサイズです。
さて、先にも書いた話ですが紀伊大島のコクワと言えば、「赤コクワ」と呼ばれる特徴的な体色の個体群である事が知られていますが、本個体は残念ながら特徴的と言えるほど全身に赤味は帯びていません。裏返して見れば前胸腹板が「まァ赤いっちゃ赤いな・・・」と認められる程度です。
このくらいだったら北日本でも普通にいますよネェ~? こういう点が、紀伊大島産を亜種に分けようとする研究者がいない要因でしょうね。逆を言えば、赤みの程度がピンキリで存在するからこそ、「赤みが強い個体」が採れた時の喜びが格別な “面白い産地” なんだと思います。

幼虫の方も、羽化後に選別できそうなくらいには数がいるので、この成虫は幼虫の羽化を待って標本行きになると思います。


続いてヒラタクワガタ↓↓
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体長は27mm、大きくはないですが奇形も傷も無い立派な成虫です。
こちらも、貴重な新成虫なだけに正直言ってこのきれいなまま標本箱に納めたいところですが、コクワと違ってヒラタは採集数が累代ギリギリなので、標本にする前に♂の羽化・成熟まで待って産卵させておきたいところです。

幼虫は3令の♂♀1頭ずつと少ないですが、コクワとしてカウントした1・2令幼虫の中に「ヒラタが紛れてないかな~」と淡い期待をしてるんですよね。

採集の反省
終わってみれば、あっという間に感じられる採集行でした。
採集当日は8時から16時過ぎまで約8時間採集したワケですが、島内のコクワの密度はこれまで経験したことが無いほど高かったものの、ヒラタは非常に渋かったですね。明確にヒラタ材だったのは1本だけで、頭数もギリギリ累代可能な数でしたし。島には他にも魅力的なネブトやマメも分布していたので余裕が出来ればそれも狙おうと目論んでいましたが、結局最後までヒラタ探しに暮れてしまいました。探し方も、適度に力を抜いて広い視野でスムーズに動けたら良かったですが、腐朽材と判断したものは細くとも逐一見ていってしまった結果、狭い範囲で時間を掛け過ぎた点はよくなかったです。
体感として青森で同じ事をするよりずっと難易度は低かったですが、思った以上にはかがいかないものですね。
・・・言ってしまえば、不完全燃焼でした。

こう言うのも、帰ってきてブログを書く為に色々調べ直してみたら自分が「如何に不勉強なまま南紀へ向かったか」よくよく思い知ったからです。

そもそも、紀伊大島行きが現実味を帯びてきたのは採集の4~5日前で、その頃は「採集の下知識」よりも「和歌山行きのスケジュールや道中のシミュレーション」で精一杯でした。採集前日になってやっと、他の人の【南紀大島の採集記】をいくつか読んだり、国立公園区画図を印刷したものですから、ちゃんとした予習などしていませんでした。
帰ってきてじっくり探してみれば、まだ読んでいなかったウェブサイト上の採集記や採集動画、島内の植生分布や生息種について書かれた資料など、採集前に読んでおけば大変有用だった情報がいくつも見つかりました。
「こういう所を探せば、ヒラタも見つけやすかったかもしれない」
「そっちへ行っていれば、ヒラタと一緒にネブトやマメも採れたかもしれない」
「クワガタだけじゃなく、別のあんな虫こんな虫も採集出来たかもしれない」
ヒラタ採集と云う本懐を遂げたにしては、何かしらの空腹感が込み上げてきます。
これはきっと、昆虫採集に魅せられた人間なら感じた事が絶対にあるはずです。
採集に行ったけどコレは採れなかった―――
コレは採れたけどサイズは小さかった―――
もっと効率よく採集できたはずだった―――
なんやかんや言ってもどこかに必ず “無い物ねだり” が生まれてしまうので、「採集へ行く事」と「完全燃焼する事」は、そもそも結び付かないのかもしれません。





以上で、当ブログ初の青森県外採集記「はじめてのヒラタクワガタ採集」は完結です!

正直言って、齢30を過ぎ体力的に無理が利かなくなる前にやってみたかった・・・と言うほどには思い切ったつもりでしたが、時期と資金に気を使えばまたやれそうだと云う事も分かってしまったのはある意味困りましたね。またどっか連休が取れたタイミングで、次は淡路島とかでも行っちゃいそうで

最後に、
今回の旅で実に色々なものを見て感じる事ができた分、余す事無く書こうとしたら記事が長くなり過ぎてしまった点をお詫びして、記事を終わりたいと思います。





最後の最後に、
ドライブ中に不具合が発生したあのワイパーについてですが、

KIMG7418_2.JPG
あっぽけェェ!!



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