SSブログ

Jump into forest!! ヒメオオ採集2023年9月総集編 [日昆 採集記 【2023年】]

脚、痛ってェ・・・!

いや、別に大きな怪我をしたとかではない。
ヒメオオクワガタ採集で少しばかり無茶をし過ぎた結果、脚が極度の筋肉痛になっているだけだ。

9月、この時期は毎年ヒメオオを探して脇見運・・・――ッではなくて山歩きに勤しむのが恒例となっている。
夏のライトトラップの延長戦を選ぶか、ヒメオオ採集にワークチェンジするかとても悩ましい時期で、ライトラをやるようになってからはヒメオオをほとんど見ずに終わる年もあった。
「いや、ライトは夜だしヒメは昼なんだから、一日で両方やれるだろ」とも思うところだが、意外とそう上手くはやれないものだ。と言うのも、ヒメオオを探しに行く場所は例外を除いて〔新規〕か〔大型個体未採集〕の産地に限っている。また、ライトトラップもこの時期になると狙い目の虫(あえて具体的には書かない)が採れるのは盛夏に比べると限られ、ヒメオオを探しに行くポイントからは離れている。これら双方のエリアがきれいに離れている為に、どちらかしか選べないワケだ。


どうでもいい話が長くなってしまったが、今回は兎にも角にもヒメオオの話である。この脚の痛みを忘れないうちに、ドーンとまとめて9月分の採集行を書きまとめておく。一気読みは体に悪いので、適度に休息を入れる事を強くおすすめする。



9月12日 黒石市
『HIMEOOの世界 その1』
実質的にこの日が今年最初のヒメオオ採集である。
自身、まだ夏のライトトラップを諦めきれないでいた時期だったが、知り合いから発生報告を受けた事で触発され、現地へ向かった。

ここのポイントを知っているのは、断言はできないがその知り合いと、YES, I AM!
その人は日昆のメンバーではなくまして虫屋でもないが、「生物に対する理解」があり、「採集圧による発生の消長」、ひいては「根こそぎ採らない事の重要性」を理解していると判断し、その他成り行きもあって自分がこの場所を教えたのである。シーズンが始まると観察に出向き、その様子を教えてもらう事もある。

勿論、言うまでもなくポイント発見時に産地コレクション分は採集済みなので、観察目的のみで現地へ向かった。見られればいいや、と云う事で特に装備も揃えてはいない。


この日は天候に恵まれ空は晴れ。
青森市を出発した頃にはウッキウキで青い空の下をドライブしていたのだが、黒石市内の山中に入ると空模様は一変。グレーの雲がにわかに広がり車のフロントガラスにポツポツと水滴が・・・

そして正にこれから、こ れ か ら、ヒメオオのポイントに入ると云うタイミングでスコールのような大雨! な! 何をするだァーーーッ! ゆるさんッ!
大雨と言っても、ザーーー・・・と云う感じではなくバヂバヂバヂッと云う方が合っているような、雨粒の一つ一つに物理的な威力を纏った感じで、車体を打ちつける音が凄まじく大きい。多少の雨ならヒメオオも平気だが、細枝が弾んでしまうような降り方だ。これではヒメオオが木から落下するのでは!? これは……夢だ この私が追い詰められてしまうなんて…… きっと…… これは「夢」なんだ……。

雨は5~10分ほどでおさまったが、さっきまで乾いていたであろう路面もグズグズになっている。長靴・・・持ってきてない。
これは「試練」だ 悪条件に打ち勝てという「試練」と オレは受け取った。採集者の成長は……未熟な過去の成功体験に打ち勝つことだとな…


ポイントには点々と「実績のある樹」が在るものの、“空き家” ばかり。


KR1kai.JPG
いたッ!見つけた!
やっと見つけた時には、既に「実績のある樹」を半数見終えていた。数日のあいだ晴天続きだっただけに、今さっきの雨が無ければどうなっていただろうと思わずにはいられない。

長靴も無い、網も無い、樹は薮の中に生えているが薮に入れる服装じゃない。
せっかく今期初を見つけたワケだし、汚れようが構わず薮に入るとするかなああ・・・とか言ったりして・・・
この樹は♂2頭・♀2頭が付いていたが諦め、採れそうな所に付いている個体が他にいないか隣のヤナギを見ると、いるではないか!
こちらは薮を漕ぐ事無く採れそうだ。

KR2.JPG
良ぉお~~~しッ!よしよしよしよしよしよしよし目線と同じ高さに1♂りっぱに採れたぞ!
一度手に取り、サイズを測ってみると52mm。意外と大きい事に驚きつつ、元の位置にゆっくり付け戻した。大抵の場合、樹の枝に戻そうとしてもポロッと落ちるものだが、雨によって身体が冷えて脚も力んでいて簡単に戻せた。54mmあったらお前を頂いてくとこだったぜ、生きのびるのよ あんたは『希望』!!

実際に手に取れたのはこの1頭だけだったが、
樹を全て見た結果、合計7頭が発見できた。
ハイシーズンでこの数はちょっと少ないと思えるが、あの雨で落ちた(下りた)個体もいたと仮定すると、ポイント自体の生息数は依然変わりなくッ!保たれているようだ。



9月17日 十和田市
『セイヤク ×× センキャク』
十和田のヒメオオ採集は、もう何年も行っていなかった。
県内の虫屋にとっては、原点と言える人も多い「採集のメッカ」なだけに、ヒメオオが採れるようになった最初の頃はいくつかの場所を回って採ったものである。

県内の地勢も把握し、各所で “それなりに” 採集して集めてきたつもりでも、実際のところ氷山の一角。釈迦の手の上だけで満足した状態で、この1市でさえまだまだ調べ尽くした(勿論、特保は除いて)とは到底言い難い。


十和田市 エリア①  
この日、未踏エリアの調査を第1目標として現地へ突入した。
雲は多いが青空もそこそこ見えている。
一応、観光スポットが付近にあるようなので車通りには気を使いながら道端で気になる灌木に目を凝らしていく。
知ってたつもりでも、全然そうじゃなかったんだなぁと自己の経験値不足を恥じ、なんだかんだで結果はゼロ。
TWD1.jpg
ところどころ道も悪く、道が崩れて封鎖された為に、入るのを断念したり引き返さざるを得ない林道もいくつか見られた。

まぁ、それでもいつもだったら車を降りて徒歩で調べるところではあるんだけども、ちょっと先を急ぐ為に今回はスルーして昔から馴染みのあるエリアへ移動。


十和田市 エリア②  
次は第2目標として、昔から度々(夜にライトで)来てはいたしヒメオオが採れる事も知っていたエリアを攻める。
今さらになってこの一帯のラベルを持っていなかった事に最近気付いたのだ。長年地元でクワガタ採集をしている人にはそこそこ知られている、比較的メジャーなヒメオオポイントである。

TWD2.jpg
このエリア、採集者に優しすぎるよ・・・!
ヒメオオ探しててもこんなに路面が舗装されてる場所って滅多に無いんだもの。

しかし、この優しさがある意味で厳しさにも転じるワケで、
ポイント入りする道中に同エリア内で目に入ったのは、路肩に車を停めて長竿の網を出している同好としか思えない男達の姿であった。ヤナギを見上げているその挙動は間違いなくヒメオオ目的だろう。
何せこの日は土曜日、それも祝日だ。競争率の高い採集地を普段から避けていると、こういう時に出遅れてしまう。なんせもう時刻は14時をとっくに過ぎている。福島の〇沢みたいな有名産地でこの時間に入ったらヒメオオは跡形も無いのではなかろうか。

さらに、悪い事は重なる。車のガソリンメーターがエンプティー!
今回、想定していた走行距離の見積もりが甘く、①のエリアを終了した時点でメーターは既に最低ラインを割ってしまっている。
実は今年、ライトトラップの帰りにガス欠を一度起こす大失態を犯している。深夜に徒歩で自宅へガソリン缶を取りに行き往復2時間歩き通した記憶がまだ心身に残っている。
情けない事に、予備のガソリンを入れた携行缶も今日は持ってきていない。麓のガソリンスタンドまで行くと、ポイントへ戻る頃には周囲は暗くなってしまう。雲も空を覆っていて、既にルッキングできるかギリギリの状態。

移動距離が制約された状態ながらもそのまま特攻してしまったのだが、林道へ入ると幸いにも他の採集者とすれ違うことも無くヒメオオの採れるポイントに突入した。

以前にチラッと流し見した時の記憶を元に、徐行しながら灌木を確認していく。
大量とは言えないが、時々齧り痕の付く樹が確認できる。
それなりの本数で齧り痕を確認したところで、薄々感じていた不安ははっきりと確信に変わった。・・・採られている。

真新しい齧り痕、今日の天候、そして時間帯、気温。これらの要素を合わせると、今このタイミングでこれだけの数の樹に付いていないのは明らかに不自然。
流石は採集のメッカ、この状況に身を置くと採集の為の必要条件が増えているのを実感する。


時刻は15時
ホントに1頭も採れないまま終わるんじゃないか!? と焦っていたところで
TWD3.JPG
感謝するぜ お前と出会えた これまでの全てに!!!

道路から見てやや奥まった所の枝に付いているおそろしく小さい1頭、オレでなきゃ見逃しちゃうね。小さいと分かって先行者がスルーした個体だったかもしれないけど。

TWD4.jpg
真下が沢で、落としたら一発終了なところ無事に回収。
これで最低限の形にはなったので、大型個体のリベンジ採集はまた別の機会に決めて山を下りる決心がついた。一応まだ近くの別の支線でも探す事はできたが、既に曇ってルッキングし辛い上この後は暗くなる一方なので、どのみち分が悪い。

山の麓のガソリンスタンドに着いたのは15時45分頃
どうにかギリギリ間に合って緊張が解けたものの、はたと気が付いた。
このスタンドは街中にあるような夜間も営業しているスタンドではないから、夕方遅くに来てたら閉まってた可能性も有ったんだ。そうなるとさらに長距離走らないとガソリンスタンドが無いからガス欠終了になっていたな・・・
山にいた時、このリスクの事を一切考えてなかった。



9月23日 佐井村・むつ市
『An axe covered with trees』
市町村単位で数えれば、ヒメオオ生息圏でまだ採れていない場所はあと僅かである。しかしその “あと僅か” の市町村のどれもが個人的には鬼門揃いである。
佐井村もその一つで、前から毎年のように記事で触れているが未だに出会えていなかった。
彼の地では幹線道路沿いと林道を合わせて9割方が調査済みなのだが、隈なく地図を繰り返し繰り返し見回して、まだ調べていない林道の中から面白そうな場所を1ヶ所見つけた。

朝、7時30分に自宅を出発。
MT1.jpg
青森市内は雲一つなく快晴。前日から晴れていて、この上ないヒメオオ採集日和。
ここから佐井までは最短で3時間。朝のドライブも仕事の日と違って気分が良い。青森県の土地柄、はじめは海の向こうに小さく見えていただけの山が次第に目の前に近付いてくるような景色の変化があるので、ドライブ好きならここは中々に楽しめると思う。ドライブ好きなら。

途中のむつ市内に入り食糧調達していると、何やら交通規制が布かれ祭りのような催しが始まろうとしているのが目に入った。後で調べてみると、田名部神社の遷座400年を記念した祭事が開かれていたとの事だった。運の良い事に自分はそこへ居合わせたワケだが、生憎 撮影などしていない!


むつ市街を脱し、さらに長蛇の道のりをドライブする。

そして、さぁいよいよ佐井入りするぞ と云う所まで差しかかりふと上空を見上げると、なんだか様子がおかしい・・・

MT2.png
真っ白だ・・・! それに、雲がやけに低くないか?


佐井村 某林道  
佐井村に突入し、目的の林道入り口へ到着。
スマホの電波はゼロで、ダウンロード済みの地図アプリで位置確認しながら林道へ進入する。


MT3.png
・・・なん・・・だと・・・?
見計らったかのようにポツポツ降り出してきた。
景色にピントが合ってしまったが、フロントガラスに落ちた雨粒が見えるだろうか。

先日の黒石市での事を思い出し、急いでルッキングを開始する。
MT4.png
間もなく「良い感じ」のロケーションが現れ、車外へ出て「如何にもいそうな」ヤナギを見回るが、驚くべき事に何も付いていない。・・・なん・・・だと・・・?(2回目)
標高、地形、日当たり全て理想的で、周囲にはヒメオオが利用できそうなブナの立ち枯れがいくつも林立している。正直言って、これまでの佐井村での採集で一番理想的な環境だと思う。
ヤナギを見ても高さ2~4mほどとヒメオオが付くにはうってつけで、地面も湿気ていないにもかかわらず、枝や幹に一切の傷が無い。全部きれいすぎる。ヒメの霊圧が消えた・・・!?

この後、林道奥まで進んだが何も見つける事が出来なかった。
と云うか、林道自体が短く、あっという間に林道入り口まで戻ってきてしまった。

ここからまた別の林道を探るとなるとそこそこ距離と時間が開く為、佐井村採集はここで一旦終了する事にした。





その代わり、今度はむつ市の新規開拓へ向かった。
広大なむつ市域はまだまだ入った事の無い林道も多く、未採集ラベルもまだまだ存在する。佐井の調査が早く終わる事は地図を読んでいた時点で分かってたから、むつの方をこれからじっくり調べさせてもらうとするヨ・・・

ただ、無慈悲にも雨脚はこの後、パラパラ程度だったのがサーーーーっと強まってきた。

MT5.png
まさかオマエらか・・・? オマエ達が食ったのか!!?
以前に白神山地で樹を揺らされて以来、ヒメオオのポイント付近でサルを見ると怨嗟の情が湧き出してきて不安になる。


むつ市 林道①  
佐井で採れなかったショックを引きずりつつも、むつ市内に移動して1本目の林道へ入る。

北国・下北半島と言えども、200m未満の低標高ではヒメオオの気配はまず感じられない。森林鉄道を敷いて盛んに伐採されていたため、低地は現在スギの植林か2次林がほとんどだからだ。

スギ林をガタゴト進み、ハンドリングをミスって水切り(横断排水溝)に両前輪を落とし、バンパーで盛大に砂利をラッセルしてしまいゲンナリ・・・
せっかくリフトアップしたって、運転技術が悪けりゃ台無しだな。

凸凹の砂利道、太めの落ち枝に注意しつつ2km以上進んだその先に、ヒメオオは居なかった。スギの植林地を脱する前に、林道が行き止まりになってしまったからである。
引き返し!



むつ市 林道②  
①の林道のすぐ近くで、地図上で見ると①よりは少々長い。
ただ、その①が奥まで行っても環境的に見込みが無かったので、今回もかなり奥まで進まないと期待出来なそう。

不安を抱きつつ林道を進行するが、ここにきて何故か瞼が重くなってきた。時折道脇の斜面に突っ込みそうになる。
さっきの水切りを乗り越える時もそうだが、「睡眠不足」と「下北までの長時間運転」の所為でだいぶ眠くなっていたようで、仕方なく道脇に車を停めて不本意ながら仮眠に入った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・チョットのつもりが1時間弱も寝てしまい、起きたら13時半を回っていた。
(寝坊助の自分としては、夕方になってないだけまだマシか・・・)

頭も少しは冴えてきたので再び出発する。
さっきまで降っていた雨も止んで、空も抜けていた。

MT13.png
しかし雨の影響はしっかり残っていて、林道を縦横無尽に流れる泥水がそれを物語っている。退けば老いるぞ! 臆せば死ぬぞ!

雨の影響か、はたまた元からいないのか、車止めの転回場所に着くまで一切ヒメオオは見つからなかった。

ただ、林道はまだ地図上では続いていて、歩いていく分には道がまだ続いている。これはつまり、「ここからが本当の採集だ」ってやつだな?
リュックと網を携え、長靴に履き替えて、薮が若干濃くなった林道の奥へ進む。


歩き始めて約1km地点、沢の源流部に到達し林道のカーブ地点へきたところ。
一気に道が自然回帰しヤナギ群落が現れた!

一昔前なら「勝ち確」だと浮かれるところだが、最近は結構裏切られる。
樹高4~5mの若木が立ち並ぶ中、注意深く一本一本見ていく。6~7本、手前から順に見くが何も付いていない。やはり厳しいか・・・!


MT6.png
正解エサクタ”!
道を塞ぐように生えているヤナギに、少なくとも3頭は付いている。

ひとまず息をととのえ、13km5mほどの高さまで網を卍解する。まずは手前の♂1頭。

MT7.png
無事確保! 初ラベルなのでサイズなんてどうでもよろしい!

続いて奥の枝に付いているペア。
MT8.png
写真にマーキングしていないが何処にいるか判るだろうか。
中央上部のY字分岐の所である。

MT9.png
網を伸ばすも見事に♂も♀も弾いてしまうが、落下地点を把握し無事両方とも回収!

そしてさらにまた隣の樹に1ペア発見。
MT10.png矢印の所に付いている。

MT11.pngこれをまたしても弾いてしまうも、足元付近に落下してきたのでなんとか見失うことなく回収。なかなか大きいペア、悪くなさそうなサイズだ。

なお、このペアへ網を差し込む途中、さらに奥の樹にも1頭見えたのでその後挑んでみた。しかし、網から弾いて自分の目の前まで落ちてきたまではよかったものの、しゃがんで手を伸ばそうにも鬱蒼としたササを掻き分けるのに手こずり、あっという間に腐葉土の奥深くへと消えてしまった。幸いにも♀だったのでそれほど悔しくはなかったのだが。


さて、林道はいよいよ道の痕跡すら分からなくなってきて、
MT12.png
ヒメオオを採った樹の先の道は崩落&薮で埋没。
地図上ではまだ先が続いているのだが、もう採れた林道で長居するのも時間が勿体ないので引き返す事にした。
ヤナギ群落も帰りがけに全て “答え合わせ” をしてみたが、何も落ちてこなかった。

車に乗って林道入り口まで戻ってくる頃には、時刻も15時近くになっていた。


むつ市 林道③  
MT14.png
15時を過ぎて入った林道は、だいぶ傾いた陽の所為か、やけに暗く感じる。
当初は、周辺のピンキリある林道全てをしらみ潰しに端から端まで探そうと意気込んでいたものの、やはり圧倒的に時間が足りなくなってしまったので、航空地図を見て雰囲気のよさそうなところを選んで入らざるを得なくなってしまった。

さて、林道に入って間もなくの地点で、早々に1ペアを発見!
やはり採れるようになると次から次へと見つかるものだ。
しかし、そうは言っても場所はちょっとシビアで落としたら崖下、一発勝負。さっきはやたらと網捌きが悪かったので緊張する・・・

MT15.png
MT16.png
よし!入った!
(ちなみにこの日、網枠は写真に写っている「夢を叶える網」以外にも、普通の大径枠も車に積んでいたのだが一切忘れていた)

・・・アレ?
MT17.png
不正解ノ・エス・エサクト”!
アシがアカい・・・一体いつからヒメオオしか柳にいないと錯覚していた?
暗くなってきた所為で、樹に付いてるのがヒメオオかアカアシかもう判らん。

その後、林道自体も早々に終点に辿り着いてしまい、Uターン。


むつ市 林道④  
いくつも支線がある林道で、調べ甲斐のありそうな場所。
砂利も粗いし落ち枝も多く、おまけに起伏も激しい。進むのにだいぶハラハラしたが、大して奥へ進む事無く行き止まりになってしまい、Uターン。


むつ市 林道⑤  
ここも途中にいくつかの支線が存在する。

まずは本線を進んでいくが、雰囲気はあれど道脇に時折り見えるヤナギには何も付いていない。

ある程度奥まで進むと、上の斜面から崩れた土砂により車が通れなくなっており、そこから徒歩で進んでみる。
MT18.png
やたらトゲトゲした下草が絶妙に不愉快。何の草なのか未だよく分からないが、半島部では本当にこれが多くて厄介である。

途中、崖の開けたところからライトトラップが出来そうなロケーションを見つけられたものの、見える樹相はヒバが優勢のようであまり魅力的とは言えない。
道もどんどん酷い上り坂になっていき、ちょっと登山っぽくなってきたところで再度地図をスマホで開いてみた。ダウンロードした航空地図をよく拡大すると、どうもスギ林が奥までぎっしり詰まっているようだ。と云う事で引き返す、もとい、下山! 堆積したスギの打ち枝が足に引っかかって歩き辛い!


むつ市 林道⑥  
⑤の林道を車で引き返し、途中で分かれていた支線に入ってみる事にした。

MT19.png
支線入口には派手な陥没が見られ、いかにも車で入るのはヤバそう。日暮れも押し迫っているが、ここを最後の調査ポイントと決して徒歩で進入する事にした。
何を隠そう、⑤の林道に入ったのは最初からこの支線を目的としていた為で、航空地図で見てもこの支線一帯だけはスギ植林の痕跡は見られない。

MT20.png
こういう所にニホンザリガニはいるんだろうか・・・

(・・・・・・)

見えにくくなった枝に目を凝らす。時刻はそろそろ17時を回る。

(・・・・・・~♪)

沢沿いに延びた林道はどうしても日当たりが悪く、点々と生えるヤナギくらいしかチェックできない。

(・・・・・・オシャレ♪ バ~ンチョ~ウ♪♪)

リュックに下げたクマベルが不規則に鳴る中、頭をもたげて上を向いて一人歩いていると、ほとんど思考停止になり頭の中が空っぽになる。こういう時、人は何か耳残りのするテレビCMのフレーズやら音楽がグルグルと脳内を巡る事もあるだろうが、何故か自分は数日前にYouTubeで久しぶりに聴いたおしゃれ番長(by ORANGE RANGE)がずっと脳内で流れていた。高校生の時に聴いてた曲だけど、そこはまぁ自分が、 “いつまで経っても子供♪♪” だからなのか・・・

(・・・・・・朝~も~夜~も~勝ゥ俣半ズーボン~~♪♪)

しかしその内、だんだんと頭空っぽで歩いてられなくなってきた。
雨でぬかるむと見込んで履き続けていた長靴によって、脚先が靴擦れを起こし始めたからである。
ND7.png
この長靴、元はライトトラップの時に履くつもりで買った軽量タイプの品。これで歩き続ける事は想定しなかったので、脱げないように足のサイズギチギチの物を選んでいた。その所為で、一歩踏み込む度に小指に痛みが走るようになってきた。


歩き続けて数十分が経過。林道の長さはそれほど長くないはずだが、周囲の暗さと足の爪先の痛みで余計に時間が掛かっているような気もする。

そして、ついにヒメオオの姿を確認する事も無く終点まで到着してしまった。
結局ずっと谷沿いを歩いていた所為か、ヒメオオの見つけやすそうな地形に変わる事は無かった。


MT21.png
Uターンして車まで戻ってきた頃には時刻はもう18時になっていた。
当初の予定では余裕を持って帰路に就くはずが、結局真っ暗になるまで長居してしまった。





shimokitahimeoo2023.png
帰宅後、持ち帰った最大♂個体を測ってみたところ、51mmだった。
思ったより(ギリ50だと思った)も大きいが、何よりきれいに大腮も伸びていて脚も欠けていなかったのが一番喜ばしい事である。

この日、探した林道と成果を比べると、
入った林道:7本
採れた林道:1本
発見個体数:6頭♂3頭:♀3頭

本命の林道が空振りした事も踏まえると、新規開拓とは言えども渋い結果である。
ちなみに、自身の足の状態を確認すると、両小指が赤くなり見事にマメが出来ていた。

佐井村、今年も例年通り轟沈して終わったな・・・
また一年後までごきげんよう



9月24日 中泊町
『今日の成果はボーズです…謎の青年の告白』
前日の疲労が残ってはいたものの、この日は前日にも増してP-KANに空は晴れて、もはや採集を休む選択肢は無い!

前日は下北半島へ行ったので、この日は逆方面で津軽半島へ向かう。
疲れの所為か起床するのにモタつき、8時半に家を出た。

ND1.png
この日の目的地は、佐井村と同じく未採集の中泊町。現地に到着し、風の無い爽やかな青空でオラ ワクワクしてきたぞ!!!
勿論(?)、この町も過去何度もヒメオオ狙いで訪れては採集ゼロで終わっていて、簡単でない事は分かっている。青森県内の各文献を調べても、当地は未記録扱い。
今回は、虫仲間からの情報とこれまでの樹相調査結果を基に、今までに探した経験のあるエリアをもう一度踏査してみることにした。

エリア①  
午前中は、虫仲間から昔聞いたヒントを基にして一度探したエリアを再度探した。

あまり詳しく描写できないが、下北半島にも似たような環境が在りそちらでは採集経験があるので、こっちでもワンチャン奇跡的展開を期待するが、影も形も見当たらなかった。

ND2.png
長いルート上にはヤナギ類も疎らで、樹を見回す時間よりもドライブ時間の方が圧倒的に長い。道中、所々にヒメオオ材となり得そうなブナの立ち枯れが視界に入るが、その近くに生えるヤナギには一切の齧り痕も無い。


南中時刻を過ぎ、このエリアは諦めて第2候補地へ向かった。


エリア②  
到着したのは、こちらも過去に2、3回探しに来た事のあったエリア。
林道入り口に到着したのは正午過ぎ、太陽の位置的には既に後半戦である。前半の①ではほとんど車で流し見したようなものだったが、ここらでおあそびはいいかげんにしろってところをみせてやりたい。

目的とするポイントまでは長いが、林道を徒歩で向かう。車は置いてきた、ハッキリ言ってこの採集にはついていけない・・・・・・車両通行止めだったから・・・
「装備」を整えて出発したが、その装備が “大きな失敗” だったとはこの時はまだ思いもしなかった・・・

ND3.png
林道に入ると、早速物騒なオブジェクトなお出迎え。ストーンヘンジかな?

平坦な道が次第に坂道に変わってきて、路面も荒れていく。落ち葉で隠れた石ころにあがって度々スッ転びそうになる。疲れる。
スギの植林地帯も徐々に広葉樹林に変わり、ちょっとずつヒメオオ向きの環境へ様子が近づいてくる。
度々下りが混ざりつつ登り道を進んでいくと、2次林エリアからブナ・ヒバ混交の原生林エリアにようやく突入した。そのはっきりとした境目は判らないが、既に14時を過ぎていたと思われる。


しかし、ここから本番と云うところで歩みが大幅に失速する。

急登になったのではない。
前日からの靴擦れが悪化し、爪先の痛みがDANDAN酷くなりZENZEN前に進めないからだ。薮漕ぎやヌタ場を警戒して、昨日に続きまたもキツキツの長靴で歩いていたのが他ならぬ原因である。実際問題、薮を漕ぐまでもないし地面は全然乾いていて長靴である必要は無かった。
上りや水平な道ならまだ我慢できるが、下りになると爪先に荷重がかかって思うように踏み出せない。

ND4.png
ヤナギ類は勿論、カンバ類、ヤマハンノキ、タラノキ、マルバマンサク、そしてブナの幼木にまで目を光らせるが、ヒメオオ本体はおろか齧り痕すら見られない。

ちなみに、過去何度も来ていて採れないにもかかわらず何故このポイントに固執するのかと云うと、一応理由がある。現在いるこのエリアを遥か奥深くまで進むと、峠を越えて隣の市町村に抜けてしまう。しかし、実はそちらの市町村域へ入って間もなくの地点でヒメオオの生息が確認できているのだ。山林の連続性から見ても、中泊町側で採れる可能性も低くはない。そして何より、そんな “惜しい” 感じの場所は同町内では他に見つかっていないのである。
姫大ーーー!!!! はやく出てきてくれーーー!!!! たのむーーー!!!!!

しかし、“その時” はやってきた。
ND5.png
遂に山道を登り切ってしまった。
時刻は15時を過ぎ、ここまででヒメオオには一切見つけられていない。
そして、登り切ったと云う事はつまり、中泊町の終点=この先は別市町村と云う事。

想定と一致しない コレは96パーセントの確率でボウズという展開・・・・・・
戻り道でヒメオオを発見できる可能性も、無くはないが無理に近い。本パート冒頭で次々フラグを立てた上にそもそも最初に “ネタバレ” しているので、記事を読んでいるドラ〇ンボールファン諸兄においては黙ってもう少しお付き合い願いたい。


未練がましく周囲をうろついてみる。
ND6.png
こんなツーショットもそうそう見られるものではない。ブナの立ち枯れとヤナギ(オノエ?)の若木が並ぶ素晴らしい位置関係。発生木と後食木のセットでこの上なくヒメオオに優しい空間がここにはある!
まぁ何と言おうとも、結局ここにヒメオオがいなかった以上、虚しいだけなのだが。


さてこの後、あと30分ほど歩けば既産地マイポイントとして知っている場所に着く事もあって、その場でしばらく悩んだ。
現時点で時刻は15時30分を過ぎ、往路で3時間掛かっている。このまま森を突き抜けFly Awayすれば、帰る頃には暗くなり中泊町域の再チェックは困難になる。
足の痛みも限界に達しており、これ以上長距離移動を増やしていいのか。
既産地とは言え、もう何年も見に来てないポイントなので様子も気になる。



「道の先」と「来た道」を何度も見比べて、帰る方を選んだ。



ある意味で諦めがついて気が楽になったので、携行飲料として1個だけ持ってきていたパウチ入りのゼリーで喉を潤し、気を持ち直して再び歩き始める。

ただしやはり、来た時とは違い帰り道は基本的に下り傾斜の為、爪先への負担が大きくとにかく痛い。これで復路を歩き通すと考えると絶望的な気分になって足も上がらなくなる。
ギチギチの長靴の中で、足の指先に力を入れたり反らせてみたりするが2歩3歩と続かない。いっそ後ろ向きに歩いたら楽なんだけどな~なんてつまらない事まで考えるようになり、もはやヒメオオの事など気にする余裕も無くなっていた。

・・・しかし、そのふざけたつまらない事が意外にも正解だった。
最初はちょっと慣れなかったが、しばらく続けていると「楽」どころか「速い」と実感できるまでになっていた。見た目には相当シュールでフザケているが、後で調べてみたところ実はそれほど突飛なアイデアではなく、後ろ向きに歩いて山を下りるのは状況次第ではとても有効な方法とのことらしい。まるでトリックだな・・・・・・
道の曲がる方向や水切りゴム・大きな石に注意しながら歩けば、それほど難儀しない。こうして歩く事を考えると、やはり明るい内に引き返したのは英断だった。一応、踵も少々靴擦れしているのでヒリつきはするが、爪先がパチパチするほどの激痛Sparking!に比べれば痛みのうちには入らない。

そんな中、やや景色にも意識を向けられるようになってきたところで思わぬものを発見した。


ND8.png
ここまでくるとむしろこれは見たくなかった!!!!!
ヤマハンノキの灌木の先に、明らかな齧り痕が付いている。
ただ、よく見るとこの痕はだいぶ修復が進んでいてそこそこ古いものである事が見て取れる。他の樹も含めて周囲に真新しい痕は付いておらず、時期やタイミング次第で採れると云うワケではないのだろう。

地図を度々起動しては下山状況を確認しながら、想定していたよりも早くスルスルと道を戻っていく。
ND9.png
日本海に沈みゆく夕陽(水平線は見えないが)に焦りを覚えるが、慎重に一歩一歩を踏み出し続けていく。・・・後ろ向きに。

(・・・・・・ハ ニ カ ミ ポリスメン♪ あ こ が れ パイナポ♪)・・・ッ!? また・・・!

いよいよ陽も暮れて、月光すら輝くような暗さに包まれてしまったが、なんとか平坦地まで戻ってくることが出来、後ろ向き歩法も解除してなんとか18時30分頃に車まで戻ってくることが出来た。ヒメオオにはまたしても手が届かなかった虚無感は抱えつつも、どうにか下界に帰って来られた事に安堵した。





・・・翌日
あの後ろ向き歩法でイレギュラーな筋肉の使い方をした反動から、ふくらはぎ(腓腹筋+ヒラメ筋)が猛烈な筋肉痛になった。
あと、やっぱりマメは潰れていた。



9月27日 青森市
『機能回復訓練』
筋肉痛のピークを越えてようやく治り始めたこの日、昼間に少し時間が取れた。気を遣ってあまり動かさないでいた脚のリハビリにと(?)、無理のないレベルでヒメオオが見られるポイントに行ってみる事にした。

行き先は青森市内某所。
去年見つけたばかりのポイントで、シーズン終盤に場所を見つけた前回では小さな♂しか採れなかった為、今回はもうちょっと立派なサイズの個体が採れればと思い、期待して向かった。

AM1.JPG
天気は晴れて風も穏やか。少し前の猛暑続きの頃と比べて、気温も落ち着き爽やかな秋晴れと言える。
目的地のヒメオオポイントは、林道終点の狭い1ヶ所のみなのでひたすら突き進む。


上下に起伏し路面も荒れた林道をガタゴト進む事しばらく、進行方向から1台の軽自動車と鉢合わせてしまった。

向こうの運転手が「ここまで来れば脇に駐車帯あるぞ」と云う風に手招きをしている。此方が退かねば・・・無作法というもの・・・
お言葉に甘えて駐車帯に入らせてもらい(言葉ではないが)、向こうの運転手と話を交わす。どうやら、ちょうど今この林道では草刈りを含めた道路整備を行なっているとの事。この軽自動車は、作業の先導を行なう係らしい。やはり平日に林道に入るのはまずかった。

「もうちょっと待てば通れるからー」
「すみませーん、ありがとう御座いますー」

軽自動車が通り過ぎると、間もなくその後ろから油圧ショベルが林道をごっそり均しながらゆっくり近付いてくる。

AM2.JPG
車が出やすいように、どけた土をわざわざ寄せて通り過ぎて行った。申し訳なく思いつつ、お礼をして再度出発。

さすが重機が通った直後だけあって、快適とは言わないまでもその先へ行く安心感がさっきまでと全然違う。
しかしこうなると、心配なのは肝心のヒメオオポイントの安否だ。油圧ショベルがどこからスタートしたかによっては、作業の振動でヒメオオが落下していたり、もしかするとヤナギが丸ごと無くなっている事だって考えられるので、かえって不安が増してきた。
もっと早くに見に来ていれば・・・と早くも後悔し始める。判断が遅かった。

地図で位置情報を確認しつつ、いよいよの所までやってきた。
AM3.JPG
良かった!無事だ!
冒頭でヒメオオのポイントは林道の一番奥と言ったが、正確には本線から逸れた短い支線の奥(写真正面、本線は写真左側)に在る。油圧ショベルは本線だけを整備していた為に、ポイントのある支線はそのままスルーしていた。本当によかった。

ここからは徒歩1~2分の距離である。「車は来ない」と先ほどの先導車から聞いていたので、ここに車を停め、逸る気持ちで急ぎ足で向かう。脳内麻薬か、不思議と足の痛みも薄らいでいる。

原生林から一変した開放空間に、数本のヤナギが生えている。樹高も低く、ほとんど2~3mくらいしかない為「居れば採ったも同然」の環境・・・なのだが、想像よりも気配が薄い。前回採った樹も、新しい齧り痕が付いていない。よもやよもやだ。

焦り始めたところで、1ペアだけいるのが発見できた。
AM4.JPG
青空とヤナギとヒメ。つい最近まで闇に包まれた中でばかり虫を探していたのがまるで遠い過去のように思える。それくらい、この光景は鮮烈に感じてしまう。

♂は、肉眼で見ても明らかに小さい。今回の目的として、前回採った40mm未満の♂より立派な個体を採るつもりだったが、残念ながら今日は収穫無しに決まった。
それでも一応、採った気分だけは味わわせてもらおうと網を入れてみる。網に落とし込めたものの、手繰り寄せて虫を確認すると傷みが激しい個体だった。どちらとも、1本ずつ脛節から先がもげていた。おそらく、今年発生が多いスズメバチにいじめられたのだろう。
元の樹に戻し、林道を後にした。


この話はこれでお終いだな!!
―完―


ご愛読ありがとうございました!!
日昆会長の次回作にご期待ください!!


nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:地域

nice! 1

コメント 0

コメントの受付は締め切りました