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令和5年の64の日は [青森では・・・]

6月4日。
今の時代、特に若い昆愛好家の間ではこの日を特別視する人も少なくありません。

(64)の日、かの養老孟司氏が制定した記念すべき(?)一日で、「この日付のラベル」狙いで採集に精を出す人もいたり、この日に合わせて即売会が催されたりと云う事もあるようです。

2023年の虫の日、ここ青森県では別な意味で特別な日でありました。


KIMG5892.JPG
青森県知事選挙 投票日。
加えて、青森市長選五戸町長選も同日に投票が行なわれました。

自分はこのブログで過去に何度か書いた事がありましたが、特に政治に関心があるわけでもないのですが「選挙投票日」は結構テンション上がります。選挙が好き、と言うよりはテレビ・ネット動画の「開票特番」が大好きなんですね。
この日の夜も、YouTubeの知事選開票番組をライブで楽しんでおりました。

今回の知事選ですが、20年の長期に亘る三村申吾知事県政が終了し新知事が誕生すると云う事で告示前から強い関心が寄せられていました。何せ、20年(5期)と云う期間は青森県知事史上最長ですからね、県民からはマンネリ化を危惧する声もあるし、長期政権で生まれがちな癒着への不安感も募っていたでしょう。

これによって候補者は全て新人となり、届け出順に
・宮下 宗一郎(44)
・横垣 成年(63)
・小野寺 晃彦(47)
・楠田 謙信(66)
の4氏(いずれも無所属)が出馬しました。簡単な経歴を加えると、
・宮下氏・・・前 むつ市長(3期)、元 国土交通省職員 等。
・横垣氏・・・元 むつ市議会議員(4期)、下北地方森林組合理事 等。
・小野寺氏・・・前 青森市長(2期)、元 総務省職員 等。
・楠田氏・・・元 損害保険会社社員。

5月18日の告示日から2週間強、選挙戦の様々な話題に県内が包まれたのちに投票日を迎えました。残念ながら自分は、投票には行きましたが諸事情から虫に関わる作業も採集も全く出来ず、「虫の日」らしさ皆無の日曜日を過ごしておりました。

そして、いよいよ午後8時を迎え投票が締め切られようと云うところで、青森放送(RAB)の選挙特番ライブ配信がスタート。

今回、新人どうしの選挙戦と云う事で熾烈な戦いを期待してワっクワクで配信動画を開いたら、
開票前からいきなり宮下氏が当確。
結果的に宮下氏が勝つのは分かっていましたが、こうもいきなりすぎだと開票番組としては面白くありませんでしたね。

深夜に確定した結果の集計を見ますと、その圧倒的な人気度がよく分かります。
有効票数593,798、得票数順に
・宮下氏  404,358(全体の68.10%)
・小野寺氏 174,155(同29.33%)
・横垣氏   10,516(同1.77%)
・楠田氏   4,769(同0.80%)
※以上、青森県選挙管理委員会ウェブサイトより引用
この数字を見るだけでも色々思うところがありますが、その前にちょっと遡ってこの選挙の動向を個人的所感を交えて書いてみます。


まず、宮下氏当選の道筋は半年前から既に作られていたように思えます。
今年1月に三村知事が今期での退任を表明した時点で、当時の宮下むつ市長は知事選に出る事を表明していました。報道によってこの事が早い段階から県民に知れ渡った為、宮下氏を候補者として有権者に意識付ける十分な期間が設けられたのは間違いありません。
対して、有力候補のもう1人である当時の小野寺青森市長は立候補表明はその後となり、早期から意欲を見せた宮下氏とは対照的に「知事選に足踏みした」「宮下氏に引っ張られた」ようにも見られる状況だったと思います。小野寺氏の、選挙費用節約の為に市長選を知事選に重ねると云う判断は市民としては嬉しいところでしたが、その結果退任期日が遅くなり選挙運動で出遅れたと云う見立ては各方面でも論じられています。
そして、残る2人は届出日の前に「いつの間にかぬるッと現れてた」所謂 “泡沫候補” 、特に楠田氏に至っては現住所が宮城県仙台市ですし、選挙告示後に新聞を見ても遊説日程は殆ど公表無し、選挙ポスター全然貼ってない(!)。ここまで書けば、青森県外の諸兄にもお察し頂ける事でしょう。いやぁ、東京都やら神奈川県辺りの知事選だと毎度のように「アレ」な候補者が出てきてるのは仄聞していましたけど、こっちでそういう人を見る事は初めてだったので正直腹gA◎★♪н@¥ェ※▼・・・

そして、後ろ盾となる県議や政党からの支持に揺らぎがあったのも見逃せない点でした。
小野寺氏は、市長選時には自民・公明両党の支持の上で当選した経緯もあり、今回も自民党派から一蓮托生で後押しされるものだと思われました。小野寺氏は前任の三村県政を引き継ぐスタンスで、青森の核心部の運営をスムーズに移行しようと考えたのでしょう。ところが、小野寺氏と宮下氏の2人が自民党県連に推薦願いを出した事から党内が混乱(?)したとか。その後の展開で両候補者の意見が割れ、当選後の自民党への全面的な協力体制を約束した小野寺氏に県連が付いたものの、その件が露見してこの流れが止まりました。そして一旦は小野寺氏を推す方向でまとまったものの、最終的な自民党周辺関係者の回答は(たしか)各個人の判断に任せるというものでした。個人的には、この時点では宮下氏と小野寺氏でどちらが勝ち馬か見定めが付かない状況だった為に支持候補者を党として選べなかったのだろうと思っていましたが。その後、告示後の新聞社取材で表明された各県議の支持状況によれば、自民党派は分裂し大半は小野寺氏を支持するところとなりました。これで結果的に、小野寺氏を支持する県議は自民党会派のみで構成され小野寺氏のカラーが明白になったのですが、この点が県民の目にはよく映らなかったのではないかと思えてなりません。現在政権を担っている、岸田首相率いる自由民主党は与党として国民から厳しい目を向けられています。NHK調べによれば今年に入ってじわじわと国内の内閣支持率が回復しているものの、少し前には不支持率が高く推移していました。今回の県知事選では、県政刷新が期待されている事から、自公等の推薦・支持で県政を始めた三村知事に小野寺氏は丸被りして見えてしまうわけです。さらにその三村知事も、最初の頃は「誰の応援もせず選挙では中立の立場をとる」と言いながらも、結局は小野寺氏支持を明言しました。トドメやん
片や宮下氏においては無所属議員や立民系に加え、小野寺氏支持に回らなかった自民党派と云った、党派を超えた支持体勢が出来上がっていて、県民の幅広い層から「アク(政党色)が薄くて融和的」に映ったはずです。
横垣氏だけは、共産・社民から「党からの推薦を受けている」唯一の候補者で、共産党派の県議の支持を一身に受けている状況でした。
また、県内各市町村長の支持分布として、津軽平野圏域が小野寺氏を支持する応援団を結成、下北半島周辺及び臨海部の一部の町村が宮下氏、三八地域が主に中立の姿勢だと云う事を投票終了後の情報として知りました(RAB番組内より引用)


選挙期間に入ると、県民の目には既に宮下 vs. 小野寺の構図が明白に見えていました。片や人口僅か5万の市出身の最年少候補と、片や県庁所在地で県内最大都市の長経験者と云う、元同職ながら対照的とも言える2人のどちらを選ぶか、県民が二分される雰囲気すら漂っていましたね。
ちなみに、自分の職場にもこの両陣営がパンフレットを持って挨拶に来たのですが、実際に対面で一人一人に本人が挨拶してくれたのは宮下氏のみで、小野寺氏の方はいつ来たのか知らされずパンフレットも職場の人数分は無く、個人的には心象にも僅かながら影響したり・・・しなかったり。

選挙戦中盤になると、自分の周りで「宮下が有利みたいだよ」と云う噂を耳にするようになっていました。

ところで、楠田氏のポスター掲示枠は一向にガラ空きのままでした。テレビのニュースでは何かしらやっているように紹介されているのですが、この人だけは選挙期間中は選挙カーも演説している姿も見られませんでした。県民の見えないところで “水中戦” を展開しているのかもしれませんが、この時点ですでに思う事は一つしかなかったです。
「選挙終わっても彼の供託金300万は絶対返ってこない!」




そうして迎えた6月4日投票終了時刻、結果はさっき書いた通りです。

投票率を見ると57.05%で、三村知事の再選続きで低迷していた時期(40%前後)から一気に上昇しています。今回の知事選の関心度の高さを表していますよね。

それぞれの市町村別得票数を見ると、何と宮下氏が全ての市町村で得票数1位。
小野寺氏はその後塵を拝する結果に終わり、これは青森市においても同様でした。

宮下氏の得票率の高さとして目を見張ったのはかつての政治基盤であるむつ市の92.89%(!!) しかもそれだけではなく、周辺の下北郡4町村全てで90%越え、南接する横浜町でも88%台と正に「圧勝」でした。周辺地域一円で元市長に票が集まると云うのは、実績と将来性の両方が評価されなければ実現し得ない事で、むつ市政をよく知らない青森市民の自分にはにわかに信じられない数字でした。

片や、我らが青森市の元市長・小野寺氏の青森での得票率が36.34%と地の利が生かせなかったのは(なお宮下氏は61.12%)、選挙戦で県民からの見え方がやや曇りがちだったのもあるのでしょうが、一番はやっぱりこれでしょう・・・市長時代の除排雪の対応。これについては自分の所感は勿論、周囲でも同じ意見を聞くのでほぼ市民の総意だと思うんですが、現代の青森市政においては他の政策がどれだけ実行されようとも「除排雪対策の動きが鈍重」だと支持率が落ちると言って間違いありません。得票率の低さの要因としては、「宮下氏への期待値が高い」事もあるでしょうが、どちらかと言えば「青森市長時代の評価」が元になっているのではないかと考えています。
市長やっでらッたとぎ雪゛ちゃんとやらねがったクセに応援すルわげネべナって事。
ちなみに、これによってひっそりと肩身が狭くなったのが、小野寺氏の応援団まで作ってしまった津軽平野圏域の市町村長じゃないでしょうか。結果的に対立候補に負け、民意とも相反してしまった形になるんですから。

そして結局、 “水中戦” と云うか、“水から出てこなかった” と言う方が合っている楠田氏は無事供託金没収が確定。実は選挙期間終了間際にようやく自宅近所でもポスターが貼られたので見てみたんですが、いやちょっとポスターのデザインさぁ・・・。選挙中に存在感が無かった上にポスターの顔写真までそんな小さくして何の宣伝をするの!?

最後に、共産支持を受けていた横垣氏。選挙戦当初は「まぁ3番手だな」と解釈していたのですが、得票数でまさかの楠田氏と横並びだったのは驚きでしたね。楠田氏に後れをとる町村まであり、ある意味こんなに “いい勝負” をするとは思いませんでした。
また、当初は共産党の支持が約束されていたかのように見えていたのに、実はちゃっかり共産党員も過半数が宮下氏に入れると云うカスリ拳骨を食らっていたのには失笑しました。





ところで今回の県知事選、いち青森県民としては重要なイベントではあるのですが、虫屋的に(と言うか生物・自然好き)も重要な側面がありました。

現在、青森県民のみならず東北その他美しい山々を擁する地方各地において、山岳部の大規模な風力発電建設を国が計画しています。
来たるエネルギー不足に備えて自国の発電供給量を上げたいと云う狙いは分かるのですが、この青森県においてその候補地として選定されている場所が何を隠そう八甲田山地とその周辺
事業計画として、北は平内町・南は十和田市にかけての広範囲に亘り、大規模に森を切り拓き風力発電設備を建設すると云うもの。計画初期には十和田・八幡国立公園の指定区域までもがその範囲に含まれていたと知った時は、関係者燃yA◎★♪н@¥ェ※▼・・・

政治において、自然環境の保全と云うのは雇用・経済・医療などの分野に比べると圧倒的に優先順位の低い課題ですが、特にこの分野から恩恵を受けている自分としては、これこそが候補者を選ぶ最重要要素でした。開発事業となると、こういった地方では雇用や仕事の面で恩恵が受けられるメリットは存在しますが、事業者は東京のユーラスエナジーホールディングスで、青森県側の関わりとしては建設時の下請け業者と保守業者くらいしかないのでは思われます。(2~3年前の八幡岳の時は、チラッと見えた誘導車両が岡山ナンバーだったんだけど青森県民は果たしてどれくらいいたのだろうか)
三村知事は、この計画に対して断固として反対の立場だった点で安心感がありましたが、知事の退任の報道を受けこの点について再度注視していました。


選挙告示前、この事業計画を危惧して立ち上げられた市民団体が候補者各氏にアンケートを行ない、
「景観保護は二の次で開発は仕方ない、開発した方が野鳥増えるよ」と回答した楠田氏以外は事業の白紙撤回を表明したわけですが、そこから少し時間を巻き戻してみると意見が異なっている事に目が行きました。

当選の目が無い横垣氏はこの際置いておくとして、
宮下氏はこのアンケート自体へは無回答だったもののその前からこの計画への反対を表明していました。とは言え、
「同様の計画が複数持ち上がっている状況を鑑みると、全てに対して問答無用で反対するのではなく再生可能エネルギー促進エリア(つまり開発エリア?)と自然保護エリアを定める条例を制定したい」と話していて、
これはいわゆる「代替候補地で折り合い付けましょう」と云う風にも読み取れます。

小野寺氏については、この計画の必要性に対しやむを得ないと理解を示すような時期があって、平たく言えば『静観派』の立場だったと記憶しています。

この問題、その立ち位置次第で『推進派』『反対派』『中立派または静観派』に大別できるかなと思うのですが、『中立』と『静観』はちょっとニュアンスが違い、『中立』は推進と反対の間に入って両者の妥協点を探るような立ち位置で、『静観』は推進にも反対にも立たないけど中央(国)が動いたらされるがままと云う「無抵抗で関心無い」のと同義です。

あくまで今年に入ってから自分が見知った内容だけでの判断ですが、
以上の変遷を見る分では、同じ「白紙撤回」とは言え小野寺氏の方が “選挙対策” っぽさが見え隠れする様に感じられました。



ついでに青森市長選も、同様の争点で候補者を選びました。
こちらについては、各候補者のホームページを見たところ八甲田山風力発電について言及していたのは4候補者のうち2名だけ。そこから、さらに目のありそうな方を選んで投票しました。

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さて、新県知事も新市長も「ちゃんと」決まったし、この方針を変えずにそのままいってくれればいいな。


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