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青森県産コクワガタ市町村巡り 完結編「風間浦村」 [日昆 採集記 【2023年】]

長年を掛けて(掛けるつもりなかった)集め続けていた
青森県産コクワガタ全市町村採集
自分で採集する事、♂個体を採る事の2つを達成条件として、2021年までに全40市町村&3飛び地のうち1村以外はクリアしました。

青森県 コクワ採集済みマップ2022時点.png
残る1村・下北郡 風間浦村は、我が青森市から遠い下北半島の奥まった地域に位置している事もあって、なかなか気軽に行くことが出来ません。
これまでに、当地を目的として記憶上3回はライトトラップに訪れています。決して多くない回数ですがコクワガタ狙いだと考えると苦しいところです。勿論、外灯回りに関しては(大間や佐井の帰りも合わせて)それ以上の回数を行なっています。その度にコクワガタにはかすりもせず、何度も辛酸を嘗めていました。


2023年の夏、決着を付けに行ってきました。


はじめに&いざ風間浦へ
7月15日、東北地方北部は梅雨前線の影響で長時間の激しい大雨に見舞われ、特に秋田県は記録的な大雨により市街地の冠水・河川の氾濫・死亡者発生などと云った大きな被害を受けました。青森県においても、津軽地方西部には土砂災害警戒情報が発表され、深浦町では濁流や道路の通行止めと云った土砂災害が発生し、周辺の地区では孤立や避難指示がありました。


 7月16日

津軽西部に限らず県内はこの数日悪天候が続き、自分はもう何日も夜間採集出来ずにいました。前日の大雨から回復したとは言えない天気ですが、貴重な休日を無駄にしたくない一心で、地図・天気アプリ・道路情報サイトと睨めっこです。
道路情報を確認すると、山間部の県主要道は大体が封鎖されています。
天気予報を確認すると、やはり昨日の影響がまだ残っていてこの後は津軽地方や八甲田周辺は雨雲の通り道になる予想です。

こうなると、青森県内で唯一ライトトラップに適しているのは下北地方のみ。
今こそ「やり残していた宿題」を片付けようではないか! と、風間浦を目的地に決定しました。

植林地以外の場所で大きく拓けたポイントが無い事は去年以前までの調査で分かっているので、400ワット機材を車に積み込み、ガソリンスタンドに寄って出発!
時刻は15時半を回っていました。

空は曇天。
7月16日.JPG
↑↑青森市東部の空模様ですが、灰色の雲で埋まっています。

平内町・野辺地町・横浜町を通過中には時折り小雨もパラついてきて、ワイパーを振る事もしばしば。
むつ市内に入ると、道路もところどころに乾き色が見えるようになってきました。


風間浦に入ってしまうと自販機以外には物資補給が出来ないので、手前の大畑地区にあるマエダストアで買い出しします。ここのマエダ、地元チェーン店かつ漁師町なだけあって鮮魚コーナーに面白い品があったりするのですが、今回は大してお金を持ってきていないので――いやお金はいつもほとんど無いか――採集前の小腹を満たすおにぎり手頃な地元名菓などを買ってお会計。・・・いやぁ、大畑産ウニ、自分は食べないけどちょっと買いたかったな・・・

店を出るとどこからか、聞いた事ありそうでちょっと違うような、そんな祭り囃子が聞こえてきました。
町内放送か何かか?と思いましたが、駐車場を出るとそこには祭りの衣装を纏った人だかりと山車が。青森市から離れたところで夏祭りの光景を目にするのは久し振りだったので、殺伐としかかったいつもの気分が一瞬晴れやかになりました。


出発から2時間経った18時30分頃、風間浦村域へ突入。
素朴な土地で、市町村境を跨ぐ所でよく見る「ようこそ〇〇町へ!」みたいな看板は何も無く、地図を見ていなければどのタイミングで風間浦に入ったか分かりません。

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津軽海峡を隔てた向こうを眺めても、今日は北海道は見えません。


村の様子
今回、時系列に沿って記事を書くと狭い村域の為に場所がバレてしまいますので、内容を分けて書いていきます。
(とは言っても採集のうまみがある土地ではないので、仮にこれで場所を暴いたからと言ってその人が得する事は無いんですけどね)

記事の冒頭に大雨による災害の話を書きましたが、ここ風間浦も去年大きな豪雨で何ヶ所も甚大な被害を受けました。
あれから1年弱が経ちましたが、県内外の援助によって多くの場所が復旧を終えています。村域の主要道は海岸線に沿った国道1本のみですが、急峻な山肌がすぐ横に迫っていて、そうした山肌が何ヶ所も崩れて道路を塞いでしまった当時を思えば、よくここまで短期間で直す事が出来たものだと感心してしまいます。

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焼山沢近くの土砂崩れ跡地も、斜面のだいぶ上の方まで直してあります。

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土砂が流れ出た浜も更地になっています。

特にニュースで取り上げられ被害が大きかったむつ市‐風間浦村境付近にある赤川地区は、つい先日橋の工事が完全に終了したと云う事もあって、気が付かないまま通り過ぎてしまうほどきれいな街道になっていました。
一部まだ片側相互通行の場所も残っていますが、今回村内を彼方此方ドライブしてみて、道路の復旧・村の復興が進んでいる事を大いに感じることが出来ました。


海岸沿いの国道から少し中に入れば、様子も一変して山の景色になります。
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住宅地の小路に入れば、家の裏が高い法面だったりと、如何にもこの地域らしい風景です。

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村の観光地・下風呂温泉郷
ここも去年被災した地区ですが、歩いてみる限りその当時の爪痕はもう残っていないように見受けられます。紹介するにはフォトスポット選定がちょっとズレていますが、これは大間鉄道計画跡地のメモリアルロード。街よりも小高い場所に在り、周辺を一望できるいい場所でした(夜だけど)
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趣きのある足湯も設置されていて、乳白色で身体にとても効きそうです。

小さな温泉地と云う事もあって周辺は温泉の匂いで包まれていて、歩いているだけで温泉に浸かっているようなリラックスした気分になりました。


採集
さて採集本編ですが、暗くなる前にざっと巡ってロケーション探しを行ないました。
前段でも書いたようにこの村へは何度も来て採集していて、勿論ライトトラップのロケ探しもしています。そう広くもない村域に延びる林道も少なく、全部チェック済みですが正直言ってクワガタ狙いで理想的な場所は無いに等しいです。
今回、樹が伐られたり地形が変わってどこか新しい場所が出来ていないか期待してみましたが、そう面白い展開はありませんでした。結局、以前1回採集を行なったポイントへ入る事にしました。



雨の後なので当たり前ですが、足場は水気を含んで泥っぽいです。
あまりにゲチョゲチョだとクワガタが落ちても見つけにくいので、ちょっとでも乾いてて見易い位置を選んで作業台を設置します。

一通り機材の配置を終えて、空腹避けにおにぎりを補給。最近はライトトラップで現地入りしても時間の余裕が無い場合が多かったので、こうして一息つけるのは結構大切だったりします。

辺りもすっかり暗くなってきた20時ちょうど、発電機のスターターを引いて
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点灯!

次第にガやハチなどが集まり、ライトの周囲がにわかに賑やかになってきます。

しかし、乱舞する虫の中になかなか大型の甲虫は混ざってきません。
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ライトが照らす先に見えるのは、手付かずの原生林・・・ではなくスギの植林の多い混交林
メディア紹介やら観光パンフレット等で、「下北半島には手付かずの大自然が・・・」と云った宣伝文句が当たり前のように並べられているので、他都道府県民のみならず青森県民でさえも「やっぱり下北半島って原生林が広がってるんだろうなぁ」と思いがち(主観です)な土地ですが、実際のところ普通の観光客が足を踏み入れるエリアでは原生林なんてほぼほぼ残っていません。
そもそも林業が盛んでヒバの一大産地でもある下北半島は、伐られた山肌に植え付けられたスギでどこもかしこもトゲトゲの真っ黒森です。
・・・とまでは言い過ぎたかも知れませんが、これを読んでいる方には是非とも「下北って青森県の僻地だから自然豊かでクワガタ採集も簡単なんでしょ」なんてイメージは改めていただきたい(?)ところですね!


甲虫の気配も薄いまましばらく経って、ようやく何かデカいのがライト前に墜落。
いよいよクワガタか! とも思いましたがカミキリのよう。ノコギリかなと思いましたが、確認するとウスバでした。

するとまた何かが墜落、クワガタであってほしかったですがまたもウスバカミキリ。他に大型甲虫も来ないので溜め息も出ますよ。

ライトに留まるガを見て、なんとなく他の地域では見ないような奴も混じってるような気がして若干興味が逸れたりしますが、なかなかクワガタが来ない事に対する焦りも覚え始めます。
ライトの周りを忙しなく走るウスバカミキリは2頭重なっています。


ライトの方向を微調整しながら、点灯開始から20分以上が経過した頃でした。

ライトの3m前方に何か甲虫がひっくり返っているのを発見しました。ノコギリカミキリでも来たか(←やけに気にする)と見に行ってみると、

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ようやく今夜最初のクワガタが飛来していました。
アカアシの♂。君の事は待ってなかったけど、ありがとう!
とりあえず、数少ないクワガタだし貴重な?風間浦産なので個別ケースにしまっておきます。

さぁここから盛り上がっていくよ! と思ったのも一瞬で、ここからクワガタが連続飛来することも無く沈黙に戻ってしまいました。
足元ではウスバの♂が逃げる♀に追いすがっています。

気温・湿度・風がライトトラップに適する日は他地域より少なく、この日は珍しくライトラ日和ではあります。それだけに、こうも感触が渋いと心も折れそうになります。


まだ開始序盤ながら、半ば諦めかけてきた点灯約30分時点。
ライト正面、向こうから波線状の軌道でややゆっくりめに飛来してくる「何か」が目に入りました。
右手に持っていたスーパーアルミ棒(by 蝶研出版)をすかさず振り抜く!

網の中を覗くと・・・・・・




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紛れもなくコクワガタの♂

思わずうおぁッ!!!と叫び声が出てしまいました。唐突にやってくるこの瞬間、このいきなりさがいかにも昆虫採集って感じですね。

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内歯も消えている本当に小さな個体ですが、♂が来てくれて本当に良かった・・・!

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※ブログ書いてる途中に思いましたが、こんな小さなコクワガタ採って証明写真撮る人、全国探しても他にいないだろうな アハハ ちなみに、写真を撮る時は位置情報も入れていますが、ブログにアップロードする際はそうしたデータは消してから入れています。

肩の荷も下りて気が楽になりましたが、この後の追加も狙ってみます。
せっかくなので、♀個体も飛んできてほしいところです。

しかしやっぱり飛来は続かず、
ほぼ満足しきったところでアカアシの小型♂個体、
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21時前にノコギリの(カミキリじゃない方!)準大歯♂個体が墜落してきたところで消灯を決めました。21時消灯なら1時間きっかりでキリもいいし、この時間帯なら機材片付けて村内を回ればそちらの方が収穫があるかもしれないと云う判断です。

6126.jpg20分程度で片付けを済ませ、ライトトラップの成果を記録。
最初はコクワガタだけ持ち帰るつもりでしたが、もうこれからしばらく先このラベルには縁が無いだろうと思うと惜しくもなってきて、結局アカアシの小♂以外は持ち帰る事にしました。



時刻はまだ21時半を回ったところ。ここからは村内を回り主に外灯採集でクワガタを探していきます。


ここまで読んでいると、
「いやご苦労なすってるようだけど、コクワなら樹液で探しゃいいでしょ?」
と考える方もいるかと思います。
勿論探しました。以前に日中に林道に入り樹液を探しましたが、他の地域のように都合よく樹液を出す樹種も少ないし、樹液を探して見つかるのはミズナラの樹皮から僅かに滲み出る樹液かどうかも見分けが付かないような滲みだけでした。仮に上手い人が探せばこんなに遠回りせず結果を出せる土地なのかもしれませんが、自分としては樹液採集はあまり得意としてないので、ある程度やったら見切りをつけた方が効率が良いと考えました。


風間浦の3つの地域、下風呂・易国間・蛇浦、各地を回り、知っているポイント・飛んできそうなポイントを虱潰しにチェックしていきます。
大雨被害の影響による節約の為か、以前は点いていた外灯が消えていたりもして、まともに虫が飛んでくる場所はほとんど残っていません。

そんな中、期待できる数少ない外灯からちょっと離れた路上にて、
風間浦村外灯コクワ.jpg
幸運にもコクワガタの♀個体を発見!
勿論♀も初採集です。自分が探しに来たこのタイミングで飛んできていた事、車に轢かれず完品で生きて見つけられた事に感謝し、しばらくその場で感動に浸っていました。

ちなみに、外灯回りでは他に
・ミヤマの♂(頭部のみの死骸)×1
・アカアシ♂×1
が見つかりました。


帰宅&おわりに
目的は充分遂げられたので、遅くならない内に帰宅すべく日付が替わる前に村を後にしました。

道中、帰路に影響が出ない程度に寄り道して外灯を見回り、採っていなかったラベルのコクワも1頭見つける事が出来ました。以前ブログのコメントで教えてもらったポイントなので、この場を借りてお礼を申し上げておきます。

帰りのドライブは、近年では珍しく睡魔に襲われることもありませんでした。
これは成果をきちんと得た後だからでもあるんでしょうが、やはり採集前のおにぎりが効いたんでしょうね。夕飯抜きのソフトドリンクのみで採集を終える事も最近多いので、やはり採集前にちょっとでも食べ物を摂っていた方が後々楽ですね。

帰宅できたのは翌17日2時半。約半日の採集行でしたが、今年の中では今のところ最も充実した内容に終わる事が出来ました。
総走行距離296km。県内の採集にしては結構長かった・・・






・・・と云う事で思い出を振り返りながら記事を書いていますが、
下北半島に思いを馳せるため大畑で買ったお菓子を食べています。これがまぁいつもながら美味しい!
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お菓子工房やなぎや フライボール
むつ市の名菓であり、所謂ひとくち大のあんドーナツですが、中がこしあんで食べやすいです。
ぶっちゃけ青森県なら他の地域のスーパーや土産物屋でも買えるのですが、下北名菓と云う事で当地へ採集に来た折には(財布に余裕があれば)意識的に買って帰ります。スーパーで買えるあんドーナツは他の物も置いてありますが、このフライボールが一番しっとりやわらかくて美味しいと感じます。


そして、持ち帰った個体を今一度眺めます。
風間浦村産コクワガタ.JPG
体長を測ると、♂は26mm、♀も26mm。なお、ノコギリは56mm、アカアシは42mmでした。どれも至ってつまらないサイズですが、貴重な風間浦産。皆標本箱の一画で光り輝き続けることでしょう。





これにて、青森県全40市町村を集めるコクワガタ採集
堂々の完結となりました。

2011年に本種を標本として収めてから、脚掛け実に13年が経ってしまいました。目標を掲げた当初はこんなに年月がかかるとは思わず、ゴールが遠く感じた時期も一時あってダラけた事もありましたが、カツオブシムシの毒牙に掛かる前になんとか成し遂げられた事は今でも夢のように感じます。
たかがコクワと言えども県内を駆け回った分、採集中の思い出が山のように蓄積しています。残した標本そのものよりもずっと大きく重みがあるかもしれません。
また、普通種を探し回った事により各地の採集情報や地理地形といった知見もかなり得られたように思います。これは、オオクワガタ等の特定の珍種・レア種を追い求めるのとはだいぶ視点が違うでしょう。



さて、
ブログ上ではこれでコクワ採集記事は終了予定ですが、
自分はまだまだコクワの新規ラベルを集め続けていきます。
なにしろ、青森のコクワ採集は楽しいですからね。

それに、もう少しで
現40市町村どころか旧67市町村ラベル制覇に
手が届くところまできてますので・・・



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