夜の昆虫採集での注意 [青森の昆虫事情]
今週初め、知り合いからある写真が回ってきました。
↑↑これは、青森県のとある行楽地の一画に貼り出されていたものです。
(なお、この画像は実際に現地へ赴き撮影した写真です)
他県でこうした「昆虫採集者へのメッセージ」が貼り出された事はウェブ上で何度も見ましたが、本県で見たのは今回が初めてなので大変衝撃を受けました。
なお、貼り紙の下部には現地の町内会名も書いているのですが、当ブログではトリミングして掲載しています。
こうすると、「その写真本当に青森県内なの?」と訝しむ方もおられると思いますが、残念ながら事実です。SNSで探せば全容を写したものが見つかりますし、本記事としては「どこなのか」は大して重要ではありません。当地の事情を全く知らない方には余計な情報ですし、青森県で車を使って外灯回りをほうぼう行なっているような方なら聞いた事や行った事は絶対ある・・・と言っても過言ではない場所なので、分かる人にはすぐ見当が付きます。
さて、この貼り紙のメッセージを読んでみて、皆さんはどう思うでしょうか?
ここに書かれている内容、
採集を行なうなら当たり前の事ばかりです。
こんな「採集者としての知識」以前の常識的な事を地元の住民の側から言わせてしまうと云うのは、昆虫採集をする者として大変恥ずかしく思います。
当地で一体何があったのか、どういう状況なのか、
知り合いからの情報と現地での聞き込み内容を大まかにまとめました。
なお、どれも夜の時間帯の話です。
①私有地に無断で入られる
貼り紙にも書いてある内容ですが、いくら昼間は観光客が多く色々な人が歩き回る場所であろうとも、夜は静かな住宅地です。当地の飲食店で聞いた話ですが、家と家の間の路地裏に入ってくる人もいたそうです。
②建物の壁や窓に懐中電灯の光を当てられる
聞いた話としては特に多かった内容がこれです。建物が並ぶこのようなエリアでは懐中電灯の扱いは特に厳しくならないといけないのですが、複雑な空間である為スイッチを入れたままフラフラとあちこちに向けてしまう人も居るのではないでしょうか。
また、真っ暗な屋内から見れば分かりますが、たとえ直接窓に光を当てなくても建物に向ければ室内から光は見えています。それはさながら「人魂」が踊っているようで、気味悪く映っているのです。
③網で壁を叩く
建物の壁の高い場所に付いた虫を採る為でしょう、網で壁をバシバシぶつけられるとの事です。夜に屋内に居てそんな衝撃や音を感じれば、誰だって平静ではいられないでしょう。
④車のエンジンを掛けたまま車外に出て散策
集落の中に車で入ってきて、エンジンを掛けっぱなしにしたまま車から出てきて周囲をウロウロ歩き回られるのだそうです。小さな集落の中ではたった1台の車のアイドリング音も気になってしまうため、迷惑となります。ちなみに、当地の方々の話では、こうしてエンジン音を響かせたまま探し回る採集者は、県内・県外ナンバー関係なくいるのだそうです。
⑤集落内で複数名で騒ぐように歩き回る
これは具体的にどのくらいの大声なのか分かりませんが、それが昆虫採集者だと分かるくらいには響いていると云う事が察せられます。
⑥植木鉢・プランターを動かす
家の軒先にある鉢やプランターを動かす(ひっくり返す)人もいるそうです。外灯に飛んできて物陰に隠れる虫を探す・・・どういう狙い目か想像が付きますが、人の家の物に手を掛け動かすのは論外です。
⑦ゴミを捨てていく
歩きながら飲み殻などを捨てていく人もいるのだそうです。当地には自動販売機も在り、飲み歩きながら採集しその場でゴミを捨てているのも見るのだとか・・・
どの話も、「本当にそんな事する人いるのか・・・」と思う事ばかり。
当地は、古くから各種昆虫の記録が報告されている地域で、地元の昆虫関連誌にもここで採れた昆虫の記録が多々載っています。そんな歴史ある場所だけに、訪れる採集者の数も県内では特に多いと思われます。
その上でもう一度この貼り紙を見てみると、どれほど優しい書き方なのかよく分かりますよね。
通常であれば「採集禁止」と言われても仕方ないような事でありながらも、まだ採集者側に猶予を与えてくれているような寛大さが行間に滲み出ています。
注意文は柔らかい書体(ポップ体)で、ある種穏やかそうに書かれていますがその背景に隠れた実態は深刻で、上記の内容が時に深夜や朝方にまで及んでいたり、直接面と向かっての注意・クレームも何度となく繰り返されているのだそうです。警察への相談も既にされているとの事で、パトロールも行なわれています。「通報」うんぬんの文言は決してハッタリではありません。
聞き取りをしていた時も、「クワガタが拾えるって話で昔から有名みたいで・・・」と教えてくれる方もいた一方、「知らない人には何が採れるかとかすらも喋りたくない・・・」と云う顔をされる方もいました。
このように、色々な意見があったでしょう、それを含めて考えるとこの一見物腰穏やかそうな貼り紙も楽観視する事はまったくできませんよね。
今現在、この貼り紙は採集者が特によく来る一画のみに数枚貼られているだけですが、この状況が続けばどうなるかは書くまでもありません。さらに言えば、こういう状況になった場所は、「それまで些細に思えた事」に対しても過敏になりがちですので、余計な事をしてないから採集してもぜんぜん大丈夫・・・とも限りません。
くり返しの話ですが、昼間は行楽地であっても夜は静かな住宅地です。静かだからと言って、そこに居るのは自分(自分達)だけではありません。
「マナー」と云ったやわらかい表現で済ませてもらっている間に、こうした全ての問題行動が無くなってほしいですね。
そして、この問題は貼り紙が出された当地に限った話ではない事も、よく覚えておかなければなりません。
↑↑これは、青森県のとある行楽地の一画に貼り出されていたものです。
(なお、この画像は実際に現地へ赴き撮影した写真です)
他県でこうした「昆虫採集者へのメッセージ」が貼り出された事はウェブ上で何度も見ましたが、本県で見たのは今回が初めてなので大変衝撃を受けました。
なお、貼り紙の下部には現地の町内会名も書いているのですが、当ブログではトリミングして掲載しています。
こうすると、「その写真本当に青森県内なの?」と訝しむ方もおられると思いますが、残念ながら事実です。SNSで探せば全容を写したものが見つかりますし、本記事としては「どこなのか」は大して重要ではありません。当地の事情を全く知らない方には余計な情報ですし、青森県で車を使って外灯回りをほうぼう行なっているような方なら聞いた事や行った事は絶対ある・・・と言っても過言ではない場所なので、分かる人にはすぐ見当が付きます。
さて、この貼り紙のメッセージを読んでみて、皆さんはどう思うでしょうか?
ここに書かれている内容、
採集を行なうなら当たり前の事ばかりです。
こんな「採集者としての知識」以前の常識的な事を地元の住民の側から言わせてしまうと云うのは、昆虫採集をする者として大変恥ずかしく思います。
当地で一体何があったのか、どういう状況なのか、
知り合いからの情報と現地での聞き込み内容を大まかにまとめました。
なお、どれも夜の時間帯の話です。
①私有地に無断で入られる
貼り紙にも書いてある内容ですが、いくら昼間は観光客が多く色々な人が歩き回る場所であろうとも、夜は静かな住宅地です。当地の飲食店で聞いた話ですが、家と家の間の路地裏に入ってくる人もいたそうです。
②建物の壁や窓に懐中電灯の光を当てられる
聞いた話としては特に多かった内容がこれです。建物が並ぶこのようなエリアでは懐中電灯の扱いは特に厳しくならないといけないのですが、複雑な空間である為スイッチを入れたままフラフラとあちこちに向けてしまう人も居るのではないでしょうか。
また、真っ暗な屋内から見れば分かりますが、たとえ直接窓に光を当てなくても建物に向ければ室内から光は見えています。それはさながら「人魂」が踊っているようで、気味悪く映っているのです。
③網で壁を叩く
建物の壁の高い場所に付いた虫を採る為でしょう、網で壁をバシバシぶつけられるとの事です。夜に屋内に居てそんな衝撃や音を感じれば、誰だって平静ではいられないでしょう。
④車のエンジンを掛けたまま車外に出て散策
集落の中に車で入ってきて、エンジンを掛けっぱなしにしたまま車から出てきて周囲をウロウロ歩き回られるのだそうです。小さな集落の中ではたった1台の車のアイドリング音も気になってしまうため、迷惑となります。ちなみに、当地の方々の話では、こうしてエンジン音を響かせたまま探し回る採集者は、県内・県外ナンバー関係なくいるのだそうです。
⑤集落内で複数名で騒ぐように歩き回る
これは具体的にどのくらいの大声なのか分かりませんが、それが昆虫採集者だと分かるくらいには響いていると云う事が察せられます。
⑥植木鉢・プランターを動かす
家の軒先にある鉢やプランターを動かす(ひっくり返す)人もいるそうです。外灯に飛んできて物陰に隠れる虫を探す・・・どういう狙い目か想像が付きますが、人の家の物に手を掛け動かすのは論外です。
⑦ゴミを捨てていく
歩きながら飲み殻などを捨てていく人もいるのだそうです。当地には自動販売機も在り、飲み歩きながら採集しその場でゴミを捨てているのも見るのだとか・・・
どの話も、「本当にそんな事する人いるのか・・・」と思う事ばかり。
当地は、古くから各種昆虫の記録が報告されている地域で、地元の昆虫関連誌にもここで採れた昆虫の記録が多々載っています。そんな歴史ある場所だけに、訪れる採集者の数も県内では特に多いと思われます。
ちなみに、こんな話をすると「やっぱりマニアか・・・」と思う人も出てくるかと思いますが、話によるとそんな事は関係が無さそうで、色々なタイプの人達がいるようです。 そうした人達の具体的なタイプや組み合わせも聞きました。偏見の助長になるので本記事ではあえて書きませんが、実は意外と「普段昆虫採集なんて興味無いけど、ひと夏のイベントにと思って採りに来た人」がこうした行動を犯しがちだったりします。 突発的に採集に行くが為に不慣れと言う点もあるでしょうし、昆虫採集は「単なる口実」で結局複数人で燥ぐのが目的としか見えないような場面にも他所では何度か出くわした事もあります。 昨今の昆虫関連書籍や採集関連のウェブサイトにはお決まりのように「採集時のマナー」は載っていますし、世の昆虫好きでそこを読んでいない人なんていないと言ってもいいくらい、虫の知識がある人なら頭に入れている事です(その上でやらかす人も一部いるとは思いますが)。しかし、そういった本やサイトを読んだ事の無い人の中には、どういった事に気に付けるべきか分からずにやってしまう場合もあるのでは・・・とも思えるのです。 |
その上でもう一度この貼り紙を見てみると、どれほど優しい書き方なのかよく分かりますよね。
通常であれば「採集禁止」と言われても仕方ないような事でありながらも、まだ採集者側に猶予を与えてくれているような寛大さが行間に滲み出ています。
注意文は柔らかい書体(ポップ体)で、ある種穏やかそうに書かれていますがその背景に隠れた実態は深刻で、上記の内容が時に深夜や朝方にまで及んでいたり、直接面と向かっての注意・クレームも何度となく繰り返されているのだそうです。警察への相談も既にされているとの事で、パトロールも行なわれています。「通報」うんぬんの文言は決してハッタリではありません。
聞き取りをしていた時も、「クワガタが拾えるって話で昔から有名みたいで・・・」と教えてくれる方もいた一方、「知らない人には何が採れるかとかすらも喋りたくない・・・」と云う顔をされる方もいました。
このように、色々な意見があったでしょう、それを含めて考えるとこの一見物腰穏やかそうな貼り紙も楽観視する事はまったくできませんよね。
今現在、この貼り紙は採集者が特によく来る一画のみに数枚貼られているだけですが、この状況が続けばどうなるかは書くまでもありません。さらに言えば、こういう状況になった場所は、「それまで些細に思えた事」に対しても過敏になりがちですので、余計な事をしてないから採集してもぜんぜん大丈夫・・・とも限りません。
くり返しの話ですが、昼間は行楽地であっても夜は静かな住宅地です。静かだからと言って、そこに居るのは自分(自分達)だけではありません。
「マナー」と云ったやわらかい表現で済ませてもらっている間に、こうした全ての問題行動が無くなってほしいですね。
そして、この問題は貼り紙が出された当地に限った話ではない事も、よく覚えておかなければなりません。
タグ:青森県
確定! セラートゥスネブト [セラートゥスネブト]
このネブトクワガタ界隈で、俗に
「ネブトガチャ」
などと云う言葉があるのをご存知でしょうか。
詰まる話、ギャンブル要素があると云う事なのですが、
おおかた2つほどの意味があります。
①野外採集の生体♀の中で、卵を持っている個体が入手できるのかという問題
(種によって、野外で先に産卵を終えた個体が多く採集されるので、入手した野外個体が全く産まずに死ぬ事も多い)
②生体・標本双方において、多数出回っている普通種の中に珍種が混じっている場合がある
去る2021年、ハルマヘラ島からプラティオドンネブトがいくつか入荷しました。
2ペア入手したのですが、その内1♀がどう見てもプラティオドンではなく、大図鑑で確認するとセラートゥスネブトかもしれない事が判明。
(同産地において特徴的な外見の♀個体は本種以外には図鑑で見られませんでした)
調べてみても、今現在のところ生体も標本も出回っていないようで、ガチャとして考えれば「とんでもない大当たり」を引いてしまった事になります。
自分としてはただプラティオドン買っただけで、「他の種が紛れているかも・・・」なんてのは全く考えてなかったんですけど・・・
興奮しながらもセットしてみたのですが、
卵はまだ持っているのか?
そもそも産卵の難易度は高いのか低いのか?
情報も無いし運要素もまだまだ残っていたのですが、セットした9月から3ヶ月以上経った去年12月の時点で、既にほぼ諦めているような状態でした。
この件が進展したのは今年の2月末。
セットを組んだボトルの内部も相当腐敗が進んでドロドロになってきました。
いつまでも現実(失敗)から目を背けてはいけないと意を決し、久しぶりにボトルを手に取って持ち上げてみると側面になんと幼虫の姿を発見!!!
諦めていた中でこれは嬉しいですね。
マットの表面は腐敗し、キノコまで生えてました。
壁際を見ると、♀が潜って動き回った形跡が色濃く残っていますね。
マット上部を軽く掘り上げると、ツヤツヤの幼虫が出てきました。
その後マットの仕込み作業などもあって、数日に作業を分けて複数頭の幼虫を確保しました。
割り出しが遅いだけあって、幼虫はどれも丸々太った2令~3令ばかりです。
こんな小さな♀成虫の産んだ卵から、こんな大きな幼虫が育つのは本当に面白いですね。
流石に野外品からの産卵という事で、あまり多くの幼虫を得ることは出来ませんでした。
ほとんどの個体はプリンカップでの飼育ですが、
その後5月に入るといくつかのカップでマットの偏り・凝縮が見られ、蛹室が作られている事が確認できるようになりました。ネブトなので外側からはほとんど見えませんが、大きさから見るとやはり♀でしょう。
一部、蛹室内部が覗けた個体の様子を観察しながら一部の♀のカップを暴いてみたのは6月の事。
我が家でも見慣れていたプラティオドンとは違ってツヤっツヤの体表は新鮮です。
こんな具合に、無事♀新成虫を見られた事に小さな興奮を覚えつつ、
♂だと見られる幼虫のカップを見てみるとこちらはまだまだ幼虫・・・
国産ネブトも見た事が無いので見慣れませんが、最大30mmちょっとの種だと思ってこの幼虫を見ると、随分と大きくなるんだなと驚きを覚えます。
♀に遅れること1ヶ月、
♀だと勘違いして小さなカップに入れていた♂が羽化していたのを確認。
不全していなさそうでまずは安心ですが、♂はまだ図鑑でしか見た事が無いので頭部を確認するこの瞬間は緊張しますね。
紛うことなくセラートゥスネブト! 確定です。
大きめのカップやビンに入れた幼虫は、これよりさらに羽化が遅れているので、ここからまた待つ事にしました。
♂♀共におおかた羽化したので写真を撮って確認してみます。
♀個体。16~18mm程度で、プラティオドンよりは一回り以上小さいです。
頭部から上翅まで、光沢が強めで点刻は浅いです。親♀はだいぶスレていたので、見た目にも新鮮に感じます。
同じ環境で飼育したのですが、真っ黒な個体、やや赤みを帯びる個体など色味に違いが出ています。
これが、累代を重ねていくと固定化できてしまうのでしょうか。
そして♂個体。
最初に羽化を確認した個体ですが、体長は25mmちょっと程度。
大腮は、他のネブトではまず見られない歯型で個性的です。
そして、この画像だと判りにくいですが頭胸部がほぼ無点刻で鈍く光沢があるのも国産や大陸系のとは違って目新しさを感じます。
別角度から見ると、大腮の外縁に2つのエッジが通っています。
今度は、初期の羽化♂個体を2頭並べてみました。
サイズはどちらもほぼ同じくらいですが、大腮の形に個体差が見られます。
1頭目とは別個体ですが、大腮中間(鋸歯がある部分)の肉付きが痩せて見えます。
♀の色味の件もそうですが、こうした特徴のバラつきもWF1ならではの面白みでしょうか。
カップ組は大体同じくらいのサイズでしたが、
最後に1頭ビン飼育していたものも固まったので撮ってみました。
右個体、サイズは30mmを超えていてカップ組とは迫力が違います。
大腮も太く、頭楯の形も相まって鬼の口のようにも見えます。大腮表面の捻じれも顕著で、造形の複雑さがより増して見えます。
手に留まらせるとこんなに小さく見えてしまうネブトも、拡大して見るとなんとも味わい深い造形をしているものですね。今回、WF1個体を見て深く感じさせられました。
「ネブトガチャ」
などと云う言葉があるのをご存知でしょうか。
詰まる話、ギャンブル要素があると云う事なのですが、
おおかた2つほどの意味があります。
①野外採集の生体♀の中で、卵を持っている個体が入手できるのかという問題
(種によって、野外で先に産卵を終えた個体が多く採集されるので、入手した野外個体が全く産まずに死ぬ事も多い)
②生体・標本双方において、多数出回っている普通種の中に珍種が混じっている場合がある
去る2021年、ハルマヘラ島からプラティオドンネブトがいくつか入荷しました。
2ペア入手したのですが、その内1♀がどう見てもプラティオドンではなく、大図鑑で確認するとセラートゥスネブトかもしれない事が判明。
(同産地において特徴的な外見の♀個体は本種以外には図鑑で見られませんでした)
調べてみても、今現在のところ生体も標本も出回っていないようで、ガチャとして考えれば「とんでもない大当たり」を引いてしまった事になります。
自分としてはただプラティオドン買っただけで、「他の種が紛れているかも・・・」なんてのは全く考えてなかったんですけど・・・
興奮しながらもセットしてみたのですが、
卵はまだ持っているのか?
そもそも産卵の難易度は高いのか低いのか?
情報も無いし運要素もまだまだ残っていたのですが、セットした9月から3ヶ月以上経った去年12月の時点で、既にほぼ諦めているような状態でした。
【去年12月の時点】 ⇒ 2021-12-31 『歴シート ~2021~』 |
この件が進展したのは今年の2月末。
セットを組んだボトルの内部も相当腐敗が進んでドロドロになってきました。
いつまでも現実(失敗)から目を背けてはいけないと意を決し、久しぶりにボトルを手に取って持ち上げてみると側面になんと幼虫の姿を発見!!!
諦めていた中でこれは嬉しいですね。
マットの表面は腐敗し、キノコまで生えてました。
壁際を見ると、♀が潜って動き回った形跡が色濃く残っていますね。
マット上部を軽く掘り上げると、ツヤツヤの幼虫が出てきました。
その後マットの仕込み作業などもあって、数日に作業を分けて複数頭の幼虫を確保しました。
割り出しが遅いだけあって、幼虫はどれも丸々太った2令~3令ばかりです。
こんな小さな♀成虫の産んだ卵から、こんな大きな幼虫が育つのは本当に面白いですね。
流石に野外品からの産卵という事で、あまり多くの幼虫を得ることは出来ませんでした。
ほとんどの個体はプリンカップでの飼育ですが、
その後5月に入るといくつかのカップでマットの偏り・凝縮が見られ、蛹室が作られている事が確認できるようになりました。ネブトなので外側からはほとんど見えませんが、大きさから見るとやはり♀でしょう。
一部、蛹室内部が覗けた個体の様子を観察しながら一部の♀のカップを暴いてみたのは6月の事。
我が家でも見慣れていたプラティオドンとは違ってツヤっツヤの体表は新鮮です。
こんな具合に、無事♀新成虫を見られた事に小さな興奮を覚えつつ、
♂だと見られる幼虫のカップを見てみるとこちらはまだまだ幼虫・・・
国産ネブトも見た事が無いので見慣れませんが、最大30mmちょっとの種だと思ってこの幼虫を見ると、随分と大きくなるんだなと驚きを覚えます。
♀に遅れること1ヶ月、
♀だと勘違いして小さなカップに入れていた♂が羽化していたのを確認。
不全していなさそうでまずは安心ですが、♂はまだ図鑑でしか見た事が無いので頭部を確認するこの瞬間は緊張しますね。
紛うことなくセラートゥスネブト! 確定です。
大きめのカップやビンに入れた幼虫は、これよりさらに羽化が遅れているので、ここからまた待つ事にしました。
♂♀共におおかた羽化したので写真を撮って確認してみます。
♀個体。16~18mm程度で、プラティオドンよりは一回り以上小さいです。
頭部から上翅まで、光沢が強めで点刻は浅いです。親♀はだいぶスレていたので、見た目にも新鮮に感じます。
なお、今回はちょっと面倒くさかったですが成虫画像にはコピーライト(みたいなモノ)を入れました。
ウッディをはじめとした幼虫詐欺は依然として多く、最近はヤフオクの絶滅危惧種の出品停止を目前にしてオオクワなどの詐欺も多数見られます。自分も過去にヤフオクで画像を盗用された事もあり、「自分の画像なんかどうせ使われないだろう」なんて楽観視すると後でこちらが思わぬ被害を受ける可能性もあります。
今回は、国内流通も無い種という事で、人目を誘う種かどうかは別問題として念の為加工してみました。
同じ環境で飼育したのですが、真っ黒な個体、やや赤みを帯びる個体など色味に違いが出ています。
これが、累代を重ねていくと固定化できてしまうのでしょうか。
そして♂個体。
最初に羽化を確認した個体ですが、体長は25mmちょっと程度。
大腮は、他のネブトではまず見られない歯型で個性的です。
そして、この画像だと判りにくいですが頭胸部がほぼ無点刻で鈍く光沢があるのも国産や大陸系のとは違って目新しさを感じます。
別角度から見ると、大腮の外縁に2つのエッジが通っています。
今度は、初期の羽化♂個体を2頭並べてみました。
サイズはどちらもほぼ同じくらいですが、大腮の形に個体差が見られます。
1頭目とは別個体ですが、大腮中間(鋸歯がある部分)の肉付きが痩せて見えます。
♀の色味の件もそうですが、こうした特徴のバラつきもWF1ならではの面白みでしょうか。
カップ組は大体同じくらいのサイズでしたが、
最後に1頭ビン飼育していたものも固まったので撮ってみました。
右個体、サイズは30mmを超えていてカップ組とは迫力が違います。
大腮も太く、頭楯の形も相まって鬼の口のようにも見えます。大腮表面の捻じれも顕著で、造形の複雑さがより増して見えます。
手に留まらせるとこんなに小さく見えてしまうネブトも、拡大して見るとなんとも味わい深い造形をしているものですね。今回、WF1個体を見て深く感じさせられました。