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日昆 採集記 【2014年】 ブログトップ
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ルリクワ単独戦! 遭難採集 [日昆 採集記 【2014年】]

前回4月6日、No.2と二人で挑んだ春の雪山でボロ雑巾になって負けて帰ってきた
ルリクワガタ採集でしたが、(2014-4-9 『春の雪山採集』参照
その日からおよそ3週間経ち、ある程度雪が融けたであろうと推測しその山へ3度目の挑戦に出かける事にしました。


  29日(火)

この日は朝から天気は晴れ。
朝に用事を済ませ、採集道具を車に積み込み自宅を出た。

時刻は大体午前11時、今回は自分一人での行程と云う事に気を抜いた所為か、
予定より随分遅い出発になってしまった。
(なんていつも通りなんだろう……)
途中車にガソリンを補給する以外に寄り道はせず、山の麓まで来たのは正午過ぎになってからだった。




【 採 集 編 】


久しぶりに宇宙大戦争のテーマを聞きながら車で山に向かう。

前々回・そして前回は、山の南斜面から突入して生体は見つける事が出来ず産卵痕すら拝む事が出来たのはたったの1本だったという大変苦しく報われない結果となったため、今回は場所を替えて山の東側からアプローチする事にした。
とは言っても、東側に決めたのは「読み」があったわけではない…
ただ単に、地図で見た限り他の斜面より広い範囲に渡って広葉樹が広がっているように感じたと言うだけの理由である。
広葉樹林帯が広いのは良いのではあるが、その代わりこの山は頂上から東の方面に向かっては、南を含む他の方角の斜面より傾斜がなだらかになっていて、一定の標高まで上がるためには前回の南斜面の時と比べてやや距離を歩かなければならないと云う面もある。



山の東側には着いたものの、さて車でどこまで行けて停められるだろうと言う事を今調べなければいけない。入山場所を決めて車を停めたのは結局昼の12時半頃だった。
周囲を見渡してみると、平地(標高230m付近)だけあってさすがに雪は見当たらない。
そりゃそうだなって感じではあるが、行きの道中に山の近くまで来た時、山の中腹に当初の予想よりまだまだ残雪がある事を目視していたのでその時点で「あらら…まだやっぱ早かったかな…」と心配にはなっていた。

舗装路から未舗装路に突入、
ほどなくして道は倒れた木の枝に塞がれ車の進入は終わった。
ここから先を徒歩で向かう。

服装は肌着上下の上につなぎ、首にはタオル、手には手袋長靴を履き、
前回の採集からほとんどそのまま中身を変えていないリュックにはかんじきを突っ込み
水分補給用にヘルシアウォーター1リットルも積み込む。
この時リュックの中身を確認していかなかった事を、後々激しく激し~く後悔する事に……

車の鍵を掛けた後、真上よりやや西に傾きかけた陽に照らされつつ山に入った。


………………………………………………………………………


ほとんど進まない内に未舗装の山道は消え失せ、
早春の気配漂うただの林を進む事になった。

サクラマツミズナラなど様々な種類の木が入り混じる林の中を、
まだ枯れ草や枯れ葉ばかりが積み重なっているだけの地面をワシャワシャ踏みしめて歩いていく。
たまに近く遠くにまあまあな太さの枯れ木が立っていたり倒れていたりするが、ほぼ無視してダラダラ歩き続ける。
本当は少しコクワガタの新成虫なんか採りたいなぁぁなどと思ったりするのだが、
今回は標高を上げるためには前回よりも長い距離を歩かなければいけないのでブナ帯に入る前から余計な道草を食っていられない…と、ただひたすら灌木を右に左にかわしながら西に進んだ。

斜面になったり平坦になったりを小さく繰り返しながら、少しずつ山を登っていく。


……………………………………………………………………


いつまで歩いても樹相が変わらず針葉樹ばかりで、ほぼ無心で歩いていてふと顔を上げると、
それまで全く見なかったのにいきなり一面の残雪地帯に出くわした。
ようやく山に入ったって感じになってきた~…ふぅ~

まだ雪面から生えているのは針葉樹ばかりだったが、ひとまず目に見えて自分が進めているのと、雪の上が歩き易かったのは嬉しい。

雪はかたまっていてまだかんじきを履く必要もない、
どこからか聞こえるおそらくスズメバチの羽音にも度々出くわしながら、見晴らしのいい緩やかな斜面を登っていく。
途中で気付いたのは、山に入って直ぐの頃は汗をダラダラ垂らしてタオルで顔を拭いつつ息も荒くして歩いていたのが、いつの間にか汗の量も減り呼吸も楽になっていたことだ。
この行を続けていけばもっと山慣れしてくるんだろうなぁ…と実感しつつ、
ケータイの地図アプリを確認すると、まだ目的の標高まで遠くて、違う意味で汗が出る…


……………………………………………………………


しばらく歩いているとようやく針葉樹林帯を脱したのだが、
今度は、ミズナラやブナなどの沢山の幼木の枝が手前に向かって真横に伸びている所為でスムーズに前進できない…(つまり自分の歩く方向と真逆に枝が伸びているワケ)
登りで歩くためについつい足元を見ていると、
突き出た枝に不意に突き刺されることがしばしば(苦笑)
CA3I1670.JPG
この時、なぜか『忍び返し』と云う表現を思いつく(確かにそんな感じには思いませんか?)

この『忍び返し』に手間取っている時点で、時刻は既に午後2時を回っていた。
これらの灌木が並んで生えている内は、まだ周囲には身綺麗(?)な成木ばかりしかなく、
枯れて美味しそうな木は全く無い。
標高にして450m付近だろうか…


………………………………………………………………


木人の攻撃に耐えながら進むジャッキー・チェンの如く『忍び返し』と格闘しながら山を登る事しばらくして、ようやく灌木の付き出る地帯を脱した。

いよいよと云った感じで周りの風景が変わった。
木の種類もブナミズナラが主体となり、所々にサクラカンバが混じる。
どの木も幹の太さが20~30cm以上はあり、
所々に立ち枯れや折れた枯れ枝が見えるようになってきた。
枯れたものは大体カワラタケの類のものが生えている、
「コクワはいねがぁ~?」と手頃な落ち枝をバラしてみるが、……食痕しかなかった…

カワラタケで朽ちた白枯れならあるのだが、
ルリが入りそうな朽ち方をした木がまだ見受けられず、進む足はまだまだ止まらない…

この地帯に突入する辺りから、山の傾斜が次第に急になってくる。
しかし足元の雪は依然固いまま、時たまリュックからヘルシアを取り出して水分補給する際
かんじきがリュックの中でつっかえて邪魔に感じる。


…………………………………………


日も傾き、逆光となって西日が目に痛い時間になってきた。
同じ景色を歩き続け……………………………いや、少し変わってきた。


徐々に見る枯れ木見える枯れ木が平均的に太くなってきてる。

そしてさっきまで(ほぼ)全く無かったツリガネタケで朽ちたブナの立ち枯れが増えてきた。
少し尾根から下り、雪で斜面にずり落ちたブナの立ち枯れの折れ口を見てみると、
細かい目の詰まった食痕が… ヒメオオ…!!!!

少し斧を入れてみたが、やはりカッタい[あせあせ(飛び散る汗)]
これでは本命に辿りつく前に体力ゼロになってしまう……
おまけに斧で刃を入れる度に振動で木が斜面をずり落ちていく(オイオイ!)

(これで変に意地になって没頭しちゃう奴がギャンブルで落ちるタイプなんだろうなぁ…)

尾根筋に戻り依然として周囲を見ながら傾斜を登る。


……………………………………


標高はおよそ700mを過ぎたあたりから、ようやく次の段階にやってきた。

産卵痕の発見。

長かった~~~(・)

時刻は既に午後の4時を回っている。





早速表面を削ってみるがスカ。
周囲にもボコボコ「綺麗な」穴が空いている上、
削っている途中にも憎たらしいコメツキの新成虫が出てくる。
(持って帰ればよかっただろうか…?)

産卵痕を見つけてからがまた長いんだよな~~~~(←本体に出会うまで)



しかし、それから次の産卵痕を見つけるに至るまではそう時間はかからない。


………


否 それどころでは収まらない。


















CA3I1671.JPG

!!!!

(↑↑居たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! …と言ったいや正確には叫んでいないが…










尾根の北側の急斜面を眼前にして見つけたその立ち枯れは、
目線より少し上の位置に産卵痕が疎らに付いていて木の表面は縦横に薄くひび割れていた。

あまり期待せずに斧を入れてみると(いや斧を入れると云う事は期待はしているんだよな?)
ひびに沿ってパキッと剥がれた表面の木片の下には茶黒くなった幼虫の食痕で埋め尽くされていて、今までに無い良い予感がした。
斧で剥がし、また手でも摘まんで剥がすこと数度、
剥がした木片と一緒に外に弾き飛ばされる事無く運良くその場に居残った1cm大の小さな虫に、
自分の体はその虫と同じようにして固まった。

裏返って一瞬腹部側しか見えない状況で、「コメツキか!?」と疑ったが

いやいやいやいやこれこそルリではないか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


青いではないか!!!!!!



取り敢えず↑↑の写真を撮った後、中途半端に取りこぼしそうな目線の位置にいるため
慎重にケースを虫の居る場所の下にあてがい、そっとケースの中に弾き入れる………

  カラン・・・    よし…入った…

少しミスったら根開き穴の奥に落ちてしまうかも知れなかったが無事ケースの中に入った。


CA3I1672.JPG

よく見ると青く見える黒色系の

いやぁぁ~~採るつもりでは来たけど、やっぱり採れると驚くわ~そして嬉しい!



CA3I1673.JPG
食痕はまだ周囲に広がっているようで、続けて慎重に割り広げていく。


すると、またまた(※Chelus fimbriatus出てきた新成虫!!!!!!!!!!!
うわぁあぁあぁあぁあ!!!!!!![ぴかぴか(新しい)]


マタマタ(※Chelus fimbriatusでてきた新成虫!!!!!!!
うわぁぉおぉおぉ!!!!!![ぴかぴか(新しい)]


立て続けに♀が出る!

♂も出てくれないか!!!!!!
と願い割り広げていくことしばらくして………












!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!














!!!!!!!!!!!!!!!!(汗)











手が届かない・・・





下の方の食痕から20~30cmぐらい上までは割れたのだが、
下の方を割るだけでも背丈ギリギリで手を伸ばしてやっていたので
それより上の方までどうにも手が届かない。一面食痕地帯はまだ上に伸びているのだが…

※ちなみに、木と足場と産卵痕の場所の高さについてだが、
産卵痕の付いている高さは積もった雪の足元から1.5~1.6mより上に付いていて当然食痕もそれより上に広がっており、足元の雪も地面から約2m積もっているので地上からはおよそ3.5m以上の位置だった計算になる。
さらに、木の周りには根開き穴が開いており木の際から一歩引いて作業していた。


上の方に手を伸ばして作業していく内に何度か穴に(俺が)落ちたので、
潔く膝丈の高さの幹の不朽部を加工し足を掛ける場を作り
木にしがみついて作業を再開した。


『たとえ山の中町の中』の図↓↓
CA3I1679.JPG


………………




…………………………




………………………………





少しして




………………………………………くッ…………………プルプル





CA3I1674.JPG
よぉォーシ…………プルプル…………♀出てきたぁ…………!!!!!!!![あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)][あせあせ(飛び散る汗)]プルプル

ケータイを見ると、地図アプリも使い過ぎていた所為か
電池の残り残量が減ってきていた。




そして更に!!!!!!!! プルプル



♀が出てきた!!!!!!!





……………………~~~んッ…ッ…………ぐッ……プルプル…………






そして遂に・・・!!!!!!!









    食痕が全て出尽くした…。




「あれ…ふゥッ…ふゥッ……♂は…????






出てきた♀は全て黒色系。
荷物をリュックにしまう頃には時刻は午後5時

空は雲で覆われていなかったが曇ったように感じる。
空の明るさがいつの間にか濁っている。


   時間だな。




それ以上山を登るのは諦め、
踵を返し下山する事にした。(登るときは西に向かっていたので今度は東に向かう事になる)
電池の残り容量も結構少なくなってきたケータイの地図アプリで現在地を確認し、
地形図と照らし合わせ標高を確認してみると、大体そこは800m付近だった。

CA3I1675.JPG
周囲を改めて見渡すと生えている木の96~97%はブナであった。

山を下りつつも、まだ♂を見つけていないので引き続きルリ材の探索も並行していく。

登るときは広い尾根の右側(つまり北寄りの側)を通ってきたので、
あまり道を外れるのは良くないが少しルートをずらして、
尾根の左側(南寄りの側)を歩いて別のルリ材がないか探しながら下りていくことにした。


……………………………………………


尾根の右側がほとんどブナだったのに、こちらの左側を歩いていると逆にミズナラばかりだ。

嬉しい事に、ブナ帯の時よりもこちらの方が更にルリの産卵痕が付いている立ち枯れが多い。
とはいえ、大体が木の表面が荒れていて(過去の採集痕も)
居るのが期待できないのが大半。
産卵痕の発見数は多いが、歩き進むペースはさほど変わっていなかった(と…思うよ)




そんな中、大体スルーしていたルリ材の中一つだけ妙にそれっぽい木を見て足が止まる。




CA3I1676.JPG
下の方に産卵痕、上の方にはカワラタケが生えている。
なんか良さげな………♪♪

当然叩いてみる。…………と、そこには!!!!!!!!!!











CA3I1677.JPG
居た居た!!!!!!!! 別色♀!!!!!!

この山は必ずしも青い個体ばかりではないんだな…

それもいいんだけどそれじゃあ今度は♂新成虫も……




・・・この木もその1♀で終了した。




少しずつ日差しを感じなくなってきたが、未だこの一帯を抜け出してはいなかった。


……………………………


続けて、ミズナラの立ち枯れを発見。
CA3I1678.JPG
剥がれて浮いた樹皮の裏を見ると、びっしりと綺麗に産卵痕が付いている。

真新しい木肌と産卵痕にちょっと今までとは違う雰囲気を感じつつ斧を入れると、
出てきたには出てきたのだが、幼虫だった。

そんな気がしたが、木に付いているどの産卵痕もまだ1年目のものだ…
新成虫が入っている2年目の材ではないと分かったので、
作業を中断しその立ち枯れを後にした。(だんだん感覚的に分かってきた)


……………………………………………


時刻は既に午後6時をとうに過ぎていた。
ケータイの時計を確認しながら、粘り過ぎたと反省しつつ
ミズナラ林を下っていった。
「今日のところはこれで終わりかぁ・・・
  ♂は採れなかったけど、無事に採集出来て良かったぁ~~~」














否。
これで終わりではない、
本当に大変なのはここからだった・・・







〉〉【採集編】終了 ⇒ 【〇〇編】へ…


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春の雪山採集 [日昆 採集記 【2014年】]

2010年、雪中行軍採集にて過酷なフィールドワークに挑み
初のルリクワガタ採集を果たした年であったが…




あれから4年。

今までとは違う別のエリアで、また過酷な道を「無駄に」進む日がやってきた。


ある男にメールした。

*********************
【From】俺

【本文】次の日曜お前予定あるか?
*********************



*********************
【From】No.2

【本文】多分予定ないと思うが、なした(どうした)
*********************



*********************
【From】俺

【本文】
おい山行かねぇか.jpg
*********************



彼にはおそらく死刑宣告された気分に近かったのではないか…(苦笑)


今年もまた天候がおかしく、そう云うほどの事かは分からないが
3月の終わりになると日差しも強く雪融けが進み春の気配が感じられてきたと思えば
4月に入ると気温は下がり、風は強まり雪も降りだす始末で
冬に逆戻りしたように身体に寒さがしみるようになってしまった。

山に行こうと計画していたのはそうなる前の事で、
寒くなろうが決して予定は変更せず4月初めの日曜日、その日はきた。



 6日(日)

前日まで空は厚い雲が覆っていて結構激しめの雨も降り、
それに加えて強風が吹き荒れるような天気だったのがおさまり
風がまだ若干強く気温も低いままではあったが空に雲は少なく綺麗な青がほとんどという
なんとか「良かった」と言える天気にまで回復してくれた。

一昨日予定していた日程は下記の通り、

午前9時にNo.2の自宅へ車で迎えに行き出発
 ↓↓
車のガソリンと自分達のガソリンを調達し、作戦会議及び予習
 ↓↓
山へ到着、採集午前の部
 ↓↓
山中で休憩、昼食
 ↓↓
午後の部
 ↓↓
陽が落ちる前に下山、帰宅


 と云う手筈であったのだが…………




俺 「さぁ~行くかぁ!!!!!

カーラジオ 「10時です。


 また遅れた…


ガソリンを給油し、道すがら寄ったスーパーで買い物を終えて
地図や図鑑を広げ会議を終えた時点で時計は既に午前11時半になろうと云う時刻だった。


スーパーの駐車場を出た後の車内では、相変わらずの会話が始まる…

俺 「こんな時間かよ…(これで午前の部は潰れたな…)予定通りにいかなったかぁ。」

No.2 「いや予定通りだと思うんだけど~」

俺 「いやいやもう山に着いて登り始めてる筈だったんだけど」

No.2 「俺はこうなる(出発が遅れる)と思ってたから予定通りなんだって」

……………………………………………………


目的の山の方角へ直進していたが、向こうの空が灰色に染まってきた事に気付く。

No.2 「『今通り過ぎるからちょっと待ってて♪♪』っていう雲じゃねぇよな(汗)」

俺 「完全に(俺らが来るのを)『待ち構えてる』種類の雲だよな…(汗)」

……………………………………………………


平野部を進み、目的の山も遠くに見えてきた頃…

No.2 「…!?…雨降ってねぇ!?」

俺 「あ、ホントだ。」 言われて気付いてワイパーを動かす。

No.2 「……ん…いや雪だ!!!

俺 「えぇえっ!!?

No.2 「全力で山に拒否られてるな(笑)」

俺 「俺が来る事に気づいたか…!」

No.2 「『ヤベぇッ!! あいつが来る!!(怯)』って」

しばらく、フロントガラスに霰がバラバラ吹きつけていたがそれでも空は青かった。



………………………………………………………………


山に到着したのは既に正午を回った後だった。

今回挑む山は、材割りで臨むにあたってこれまで関心を示していなかった「お山」で、
ラベルの字面としては是非とも手にしておきたい場所である。
(「お山」と云うフレーズで県民の方なら見当が付いてしまうと思いますが一応山名は伏せます)
実は先月初旬に一度1人で下見入山し、
かんじきを忘れると云う致命的ミスを抱え挑んだところ見事玉砕し標高550m付近でリタイアし体力が付きる寸前の状態で命辛々下山したあらすじがあります。
(膝まで雪に埋まる状況で、尚且つ平地からちょっと進んだくらいの標高から出発したので
 550mと聞くとあまり大した事が無いように見えますがそれでもきつかったです)

車を降り、つなぎの上に防寒着を着て道具を持ちいざお山へ!
勿論かんじきも今日は一緒だ。
ただ、防寒と言っても日昆らしい山をなめた着こなしで
自分は上下で着たものの、単なる風除けのような防寒着で中に綿など入っておらず
No.2に至っては防寒着は下が無く、つなぎの下は素足だ、ついでに履いているのは長靴でもない。

幸いにして天候も好くなり、見晴らしも良い。
地面に積もった雪にも前ほどは足は取られず足首まで埋まるくらいで少しだけだが締まっている。
ここから常に上りだ。


数百mほど進むともうふくらはぎまで埋まるくらいまで雪が柔らかくなってきたので
そろそろだと、かんじきを装着する事に。
CA3I1647.JPG
かんじきを着けてNo.2が一言、

No.2 「さ~て帰るかぁ」

ホームセンターで買った安いかんじきだが、今日のところは終始壊れる事はなかった。


…………………

かんじきを着けて登り始めて早々、腹が痛くなってきた俺。
ちょっと車内で菓子やジュースを食べ過ぎたようだ…

そんなこんなで暫く登っていると、
段々とミズナラに混じってブナも見えてくるようになってきた。
標高は大体450m~500mくらいからだろうか、
ボロボロになった細い赤枯れのミズナラを見つけた。
ボロボロなので本体がいるとは思えないが取り敢えずクワガタの痕跡だけでも見つからないだろうかと、先日購入した新品の斧を試しうちすることにした。

CA3I1648.JPG
GERBERのキャンプアックス2。
今回斧は初めて使用するのだが、どこの物が良いのかとネットで色々調べてみたところ
これを比較的見かけたので仕入れてみた。

やはりボロボロの古い材であったためほとんど割る意味を成さなかったが、
マダラっぽい食痕だけは見れた。


…………………………………

何度も現れる急な傾斜に顔を歪めながら先を進んでいくと、見覚えのあるブナの古木が。
前回リタイアして引き返した地点までやってきたのだ。

ここから先は未知の領域、見える範囲にある立ち枯れをチェックしながら
休み休み(主に俺)標高を上げていく…

我々が歩く直ぐ右側は谷になっていて、それを横目に尾根に沿って登る。
標高を上げるにつれ少しずつ傾斜も急になってくる。



時刻は午後の2時を回っていた。

そろそろ昼飯でも食べようとリュックを下ろす。
リュックの中のパンやおにぎりは例外なく全て潰れてしまっていた…が美味い!
リュックの脇にさしているスポーツドリンクで乾いた喉を潤して、また出発した。

CA3I1650.JPG


……………………


No.2 「新しいな…」

そう言った我々の行く目の前にあったのは動物の真新しい足跡だった。


俺 「あぁ、新しいな確かに。たったさっきここをウサギが通ったんだな。」

No.2 「いや、これウサギじゃねェべ?」

雪の中に深く埋まったその足跡は完全に蹄(ひづめ)の形をしていた。

俺 「カモシカか!

我々の向かう方向にその足跡は続いていた。

足跡は傾斜の緩急に構わずグネグネと先へ伸び続け、
次第にそれは右側の谷へ下りていった。

再び登る事だけに集中し始めた時、No.2が何かに気付いた。
彼の目線は右側の谷を挟んだ向こう側の斜面に向いていた。


何事かと見やると… それは
CA3I1651.JPG
先程の足跡の主が悠々と急な傾斜を平行移動していた、しかも2頭。
だいぶ遠いのでズームしたが鮮明な写真は撮れなかったがまぁいいか。

我々がじっとカモシカを凝視していたのに気付いたのか、
向こうも足が止まりこちらを向いたまま動かなくなった。

時刻は2時30分頃だ。

………………………………………


時間は無いので先を急ぐことにした。

標高が上がるにつれますます傾斜が急になってきて斜面の上を目指しただただ無言で歩く。

途中ボロボロに朽ちた木を発見、
コクワでも見つかればなぁ~と斧を入れると所々に見える空洞の内の一つに大きな塊が。
それが昆虫だと分かった瞬間コクワガタの♂成虫を期待したが、
残念ながら暗緑赤紫の光沢が見え
取り出したそれはキタカブリだった。



………………………………………………

積雪の上に立っている枯れ木は樹皮が無いものもあるものも含め何十本と見るのだが
一向にルリの産卵痕が付けられている木は皆無である。
依然としてブナは生えているのだが、
それまで見なかったダケカンバの存在も散見できるようになってきた。

尾根に沿って山を登りながら、両脇の谷を挟んだ左右の向こう斜面の林を見て
「・・・ああぁ・・・あっちの方にはあるのかなぁ・・・・・・」と遠い目になっている。
No.2は強い風と雪でズボンの裾が凍結している。前述したが彼のズボンの下は素足だ。

傾斜も少しずつきつくなってくるので標高の上がり方はそのペースも早まり、
それに拍車をかけるように吹いている風も強くなるばかり。
地吹雪が起きれば、ただの寒風が直接雪をぶつけられる感覚になり
向こうの木々が大きく揺れそれが次第にこちらに迫ってくる光景はどうしても構えてしまう。

時刻はそろそろ3時半になる。
標高もだいぶ上がってきたし上を見渡すと、あと300~400m先を過ぎると植生の限界に達し
その上からは何の木も生えていないのが肉眼で確認できた。
下山の時間も考えるとこれ以上上を目指すのは得策ではない…
(あとの調べで分かった事だが、木が何も生えていなかったのは標高による植生の限界ではなく大規模雪崩による荒廃や土石流も関係していて、この山の我々がいる方角は火山泥流が堆積し森林限界が近くそのため低木や笹のみで摩擦抵抗が少ないために全層雪崩も起こりやすい斜面で、過去に起こった雪崩でブナが削流されたりと、ルリクワガタ探索の場としてはこの山の中で実は他の斜面と比べあまり適していないらしいエリアに我々はいたようだ)


引き返す事にした。


ここまで来ると我々が辿ってきた尾根から見て左右の傾斜も緩くなり谷も浅くなっている。
「ここまで何も無かったのに同じ道を引き返すのはナンセンスだよな…」…と
No.2に谷を渡り右隣の尾根に移動し帰る事を伝えた。

No.2 「おんなじだってェ~~~(=何もいない)

CA3I1652.JPG
谷底で地面が抜けないか慎重に足元を確認しながら傾斜を下り登りし、
無事隣の尾根に移った。

ちなみに、引き返す際に我々が最終的にどのくらいの標高まで来たのか確かめるため
高度計は持っていないのでケータイの地図アプリで手持ちの地形図と照らし合わせ
おおよその数値を割り出そうとした…のだが……

その必要はなかった。
地図アプリを見ると我々の現在地は、
標高1000m以上を表すのエリア表記のすぐ手前だったからだ。

まさか軽装備でここまでくるつもりはなかったが正直確かにここまで来ると辛い。
足元の表層部の雪質もほとんど1月2月の新雪と紛う物だ、
明らかに登り始めた時の質感と違う。


ここからまたルリの産卵痕が付いた立ち枯れ・枯れ枝を探しながら山を下りていく。

引き返すと云う事なので、
進行方向を向いてその右側と云うのは、行きで歩いてきた尾根とその間の谷が見えているわけだ、
とするとその反対側…つまり今下っている尾根の左側はどうなっているかと云うと…
なんと右側とは比べ物にならないくらいの深い谷が広がっていた。
CA3I1654.JPG
この斜面は上から下までブナが大小豊富に並んでおりさっきまで見てきた尾根の林より太い木がざらに生えている。

No.2が渋るのも構わずよせばいいのに尾根から外れ、斜面を下りだした俺(馬鹿だったなぁ)

斜面を下り始めて間もなく、

ズボッッ

「うぉぁああぁあ!!!!!!」

こんな感じでいきなり深みに足を取られる事が二・三度起こり、
これは危険だと漸く思い知った。
CA3I1655.JPG

俺 「ダメだ(汗)尾根に戻ろう(焦)」

No.2 「戻るも何も、俺ぁ一度もオネェになった事はねぇんだけど」

俺 「オネェじゃねええ!!!! 尾根だ!オネ!」

この頃にはもう二人とも疲れと寒さで滑舌も悪かった。
(ちなみに斜面は雪景色で全く分からなかったが、地図で確認すると地面は露岩帯だった)




斜面を登るのは下りる時より慎重を要した。
なぜなら少し体重移動を間違えただけで急な斜面をズルズルとずり落ちてしまうからだ、
おそらく30°なんてものではきかないと思う、40~45°あるかもしれない。


尾根に戻った我々だったが、突然のアクシデントが起きた。
No.2の片足が攣ったのだ。
筋肉の硬直をなんとか歩けるまでに解いた後、尾根伝いに下りる事を再開。


………………………………………………

そんな中ではあったが、
今度はなんと予想外の物を発見した。

乾いたミズナラの立ち枯れの樹皮を剥がしてみるとその下に、
CA3I1656.JPG
産卵痕があった!

ほんとにあるのかと感心してしまう始末。
ともあれ削ってみようと今度はマイナスドライバーを使い慎重に食痕を辿っていく。
他の部位や周囲の立ち枯れを見てみたものの痕があるのはこの箇所だけ、慎重にもなる。
交代しながらペキペキ剥がしていくが、手ごたえがあまりない…

度々強烈な地吹雪に見舞われるので風を背で受け作業する手が止まる。

産卵痕の上下に、何箇所か穴が開いている。
まさか成虫が羽脱したか!? と一瞬思ったが実際のところ、穴の質や角度が違うので
容易に天敵の昆虫の開けた穴だと云う事が推測できた。
結果として、食痕は木の中で直ぐ途切れていた。

やはり立ち枯れ上部しか探せない今の時期では効率が悪かったか……




ドライバーをしまい下山を再開した。

ここからはNo.2の安否も考え、枯れ木の探索は止めにし(大体判ったし)
ひたすら山を降りるため歩き続けた。



が、No.2の足は限界近かった…
麓がもう少しで見えるかという頃、先程攣った方とは別の足が攣ってしまったのである。

No.2が両足を攣るのは6年前の十和田での自転車採集以来だ。

    ⇒ 2009/7/18の記事 『TOWADA LAKE採集 前夜祭 ~去年~』


どうやら先程の急斜面が彼の下半身に大きく負担を掛けたらしく、
凍ったつなぎの裾は足首周辺に物理的な圧迫をかけ、股関節は軋み足首の筋肉が強張った。彼はそれでも立ち止まる時間が惜しいとばかりに短い時間で歩けるまでに足をほぐして立ち上がり歩き始めた。



……………………………………………………………………………………………………


Uターンした地点から結構距離を歩いたようだ。
だいぶ標高が下がったと分かったのはケータイで地図アプリを開き現在地を確認したからではなく、地吹雪や強風が無くなったからだった。
進行方向には我々が車を停めて出発した地点が見えてきていたがまだまだ先は遠かった。
何よりこのNo.2の状態を隣で見ていては、
たとえ残りあと100mで車に着くとしても果てしなく遠く感じてしまう。



……………………………………………………………


車に着いたのは5時半だった。
周りは暗くなりかけている、その気は無かったがやはり日没まで掛かってしまったか…

装備を外し、車に乗り込み山をあとにした。



車内のヒーターをガンガンかけ、寒さも少し和らいだところで「水分補給しよう」、と
後部座席に置いたリュックからペットボトルのスポーツドリンクを飲んだNo.2が一言。

No.2 「!!!??…(中身が)シャーベットになってる……!!!!!!!!!!」



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今回の採集では、今度はどのエリアを探すかと云う事を考えると共に
やっぱり雪が融けたら来るべきだと云う事を痛感した我々(というか俺)でしたが
個人的には今回は、生息状況や個人の体力の把握や経験値の獲得などとは違う別のもの改めて得て感じた事の方が大きい採集だったと思います。
そこは記事を読んで頂いた諸氏には察しがつくと思いますがそれはまぁ生温かい気持ちでスルー(?)してもらえれば気が楽です(笑?)


それにしても……

CA3I1657.JPG
そうなると持ちかえってきたこのキタカブリの存在感が後々になって濃くなるんだよなぁ…


やっぱり思う。
いったい何をしに行ったんだ?????(笑)




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